記録破りのトレーナー、ジェンナ・アントヌッチ調教師はまたもや歴史的瞬間を謳歌した。ベルモントS(G1)優勝馬アルカンジェロが、スター馬が激突するトラヴァーズS(G1 サラトガ)で頂点に立ち、BCクラシック(G1)の本命馬に浮上したのだ。
アントヌッチ調教師はベルモントSで女性調教師として初めて米国三冠競走を制したが、トラヴァーズSでは自身にとって痛快な勝利を挙げた。米国で初めてライセンスを保持した女性トレーナー、メアリー・ハーシュ調教師がサンクスギビングで達成した同レースでの有名な勝利から85年が経っていた。
3歳馬アルカンジェロ(馬主:ブルーローズファーム)は、ディスアームを振り切り1馬身差の勝利を収めた。ケンタッキーダービー馬メイジもプリークネスS優勝馬ナショナルトレジャーもあっさりと負かされた。パディパワー社は連勝を4に伸ばしたアルカンジェロがBCクラシック(G1 11月4日)で栄光の勝利を収める可能性に5倍のオッズをつけた。
2010年に初勝利を挙げたアントヌッチ調教師はブラッドホース誌に対してこう語った。「この馬がさらに勝ち進んでいけば、私たちは歴史を塗り替え続けることになるでしょう」。
「正直なところ、ベルモントSよりも少し正当性を示せたと感じています。ベルモントS のあとに、人々から"まぐれでしょう?"と聞かれたものです。それに"彼女はラッキーだね"とも言われていました。今回は違うと思います。このレースに臨んで、私たちも馬も本気なんだということを見せつけました」。
アルカンジェロにとってはあのニューヨークの象徴的なレースを制して以来の出走だった。しかし前走から76日間を経てG1での激闘に向かうことについて、レース前に懸念を表明していた評論家たちに、アントヌッチ調教師は反撃した。それが彼女自身を駆り立てたと言い放ったのだ。
アントヌッチ調教師はこう語った。「今でも集中攻撃を受けますね。それが理由で、レース前に皆さんと接触しないようにしていました。この馬を"休養させた"とはまったく考えていませんでした。このスポーツの伝統主義者はつねにあのような形で相違点を見るのだと思います。でもこの馬はそのようにキャリアを歩んできたのです。なぜなら馬主のジョン・エバート氏はこの馬をゆっくりと着実に育てて、成長させるのに必要な時間を与えることを望んだからです」。
「良い馬を手に入れたことは分かっています。それにもし誰かがこの馬を管理していたら、1番人気を背負って調子を狂わされていたことでしょう。冷笑的な物の見方をする人々の意見に惑わされたり、やられっぱなしにされたりしてはなりません」。
「この馬は実力を見せつけました。彼にはいつも才能がありとても素直な性格をしていて、本当に感謝していますね。それに、さらにやる気にさせてくれた冷笑家たちにも感謝しています」。
ケンタッキーダービー馬メイジは7頭立ての7着に終わり、ダービー優勝以来3敗目を喫した。また、ドーピング疑惑の渦中にあるボブ・バファート厩舎のスター馬ナショナルトレジャーは5着に終わった。トッド・プレッチャー厩舎のフォルテは1番人気を背負っての出走だったが、アルカンジェロの8馬身うしろの4着までだった。
By James Stevens
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[Racing Post 2023年8月27日「'We're going to keep writing history' - trailblazing trainer Jena Antonucci strikes again in Travers Stakes」]