全米サラブレッド競馬協会(NTRA)・デイリーレーシングフォーム紙(Daily Racing Form: DRF)・全米競馬記者協会(NTWAB)は、第52回エクリプス賞授賞式(ザブレイカーズ・パームビーチで開催)の終わりに、昨年ニューヨーク・カリフォルニア・ケンタッキーで圧倒的なパフォーマンスを見せつけ競馬ファンを魅了したフライトラインが2022年の年度代表馬に選出されたと発表した。
北米サラブレッド競馬界の優秀な人馬を表彰するエクリプス賞は、メンバー競馬場の役員、エクイベース社の競走担当者、DRF、NTWABの投票により決定される。
フライトラインは、フロニスレーシング、シエナファーム、サマーウインドエクワイン、ウエストポイント・サラブレッズ、ウッドフォードレーシングにより所有され、ジョン・サドラー調教師により管理された。父はタピット、母はフェザード(父インディアンチャーリー)。4歳時にメトロポリタンH(G1 ベルモントパーク)で勝利を収めたあと、パシフィッククラシック(G1 デルマー)で驚異的な19¼馬身差の優勝を果たした。そして11月のBCクラシック(G1 キーンランド)をレース記録である8¼馬身差の大差で制覇し、そのキャリアに終止符を打った。通算成績6戦6勝のフライトラインは年度代表馬の投票で246票中239票を獲得し、最優秀ダート牡馬にも選ばれた。
年度代表馬の選考に残った3頭のうちの1頭であるマラサートがフライトラインに続いて受賞した。BCディスタフ(G1 キーンランド)での勝利が決め手となり最優秀ダート牝馬に選ばれたのだ。マラサートはシャドウェルステーブルにより所有され、トッド・プレッチャー調教師により管理された。エクリプス賞を受賞するのは2回目で、昨年は最優秀3歳牝馬に選ばれている。
フロリダ・ケンタッキー・ニューヨークで調教活動を行うプレッチャー調教師は最優秀調教師に選ばれた。これは前人未踏の8回目の受賞である(これまで2004年~2007年、2010年・2013年・2014年に受賞)。2022年の獲得賞金は3,040万ドル(約39億5,200万円)以上にのぼり、獲得賞金別ランキングで2位となった。また223勝を挙げ、3頭のエクリプス賞受賞馬を手掛けた。マラサートのほか、BCジュベナイル(G1)を制して最優秀2歳牡馬に選ばれたフォルテ、G1・3勝とベルモントS(G1)2着の実績をもつ最優秀3歳牝馬ネストもプレッチャー厩舎の所属馬だ。
ウィンチェルサラブレッズのエピセンターが最優秀3歳牡馬に選出された。スティーヴ・アスムッセン厩舎のエピセンターは、ケンタッキーダービー(G1)とプリークネスS(G1)でいずれも2着に終わったが、それに続くジムダンディS(G2 サラトガ)とトラヴァーズS(G1)では勝利を収めた。
D. J. ステーブルのワンダーホイールが最優秀2歳牝馬に選ばれた。マーク・キャシー調教師が管理するワンダーホイールはキーンランドでアルシバイアディーズS(G1)とBCジュベナイルフィリーズ(G1)を立続けに制し、このトロフィーを手に入れた。
ニューヨークを拠点とするイラッド・オルティスJr.騎手が最優秀騎手に選ばれ、これは過去5年間で4回目の受賞となる。2018年から2020年まではこの栄誉を独占していた。オルティス騎手は昨年、獲得賞金総額が3,707万5,772ドル(約48億1,985万円)に上り記録を更新した。ステークス競走で80勝を挙げ、それは北米記録となっている。さらにブリーダーズカップ開催で3勝し、ベルモントSをモードニゴールで制覇した。
オルティスJr.騎手がブリーダーズカップ開催で勝利に導いた2頭、エリートパワーとグッドナイトオリーブはそれぞれ最優秀短距離牡馬と最優秀短距離牝馬に選ばれた。ビル・モット調教師により管理されたジャドモント所有のエリートパワーはヴォスバーグS(G2)とBCスプリント(G1)を制し、昨年後半に力をつけてきた。ファーストロウパートナーズとチームハンリーが所有するチャド・ブラウン厩舎のグッドナイトオリーブは、バレリーナ(G1 サラトガ)とBCフィリー&メアスプリント(G1)を制したことが決め手となり最優秀短距離牝馬の栄誉を獲得した。
ブラウン調教師はピーター・ブラント氏が所有するリーガルグローリーも管理し、この馬は最優秀芝牝馬に選ばれた。6歳シーズンにリーガルグローリーはG1・3勝を挙げた。ファーストレディS(G1キーンランド)とジャストアゲームS(G1ベルモント)を制し、メートリアークS(G1 デルマー)で優勝して一年を締めくくったのだ。
ゴドルフィンのモダンゲームズはウッドバインマイル(G1 ウッドバイン)とBCマイル(G1 キーンランド)を制して最優秀芝牡馬に選ばれた。ゴドルフィンは2年連続で最優秀馬主と最優秀生産者の両方に選ばれ、北米で国際的な影響力を見せつけた。モダンゲームズに加えてコディーズウィッシュやレベルズロマンスなどのG1馬が活躍し、獲得賞金総額は1,634万,3067ドル(約21億2,460万円)に上り北米の全オーナーの首位に立った。ゴドルフィンの生産馬は昨年北米で賞金1,800万ドル(約23億4,000万円)以上を獲得し合計でG1・12勝を挙げた。
人物の部門で最後に名前を呼ばれたのはホセ・アントニオ・ゴメス騎手であり、最優秀見習騎手に選ばれた。ミシガン州出身のゴメス騎手はニューヨークを拠点としており、北米のすべての見習騎手を上回る763万5,366ドル(約9億9,260万円)もの賞金を獲得した。そして1,312戦152勝の成績をあげた。
T・J・マクドナルド氏が所有しジョン・ハンロン調教師が管理するヒューイックが最優秀障害馬に選ばれた。7歳のヒューイックは欧州で2勝したあとに米国に遠征し、昨年10月にファーヒルズ競馬場(ニュージャージー州)で施行されたグランドナショナルハードル(G1)で11馬身以上の大差の圧勝を果たした。
2022年エクリプス賞受賞馬/受賞者
年度代表馬:フライトライン(4歳)
最優秀2歳牡馬:フォルテ
最優秀2歳牝馬:ワンダーホイール
最優秀3歳牡馬:エピセンター
最優秀3歳牝馬:ネスト
最優秀ダート牡馬:フライトライン
最優秀ダート牝馬:マラサート(4歳)
最優秀短距離牡馬:エリートパワー(4歳)
最優秀短距離牝馬:グッドナイトオリーブ(4歳)
最優秀芝牡馬:モダンゲームズ(IRE)(3歳)
最優秀芝牝馬:リーガルグローリー(6歳)
最優秀障害馬:ヒューイック(IRE) (7歳)
最優秀馬主:ゴドルフィン
最優秀生産者:ゴドルフィン
最優秀騎手:イラッド・オルティスJr. 氏
最優秀見習騎手:ホセ・アントニオ・ゴメス氏
最優秀調教師:トッド・プレッチャー氏
エクリプス賞
エクリプス賞は、各部門でチャンピオンのタイトルを獲得するのにふさわしい卓越した成績を収めたサラブレッドおよび人物に贈られる。エクリプス賞は18世紀の偉大な競走馬であり基礎種牡馬であるエクリプスにちなんで命名された。エクリプスは5歳でレースに出走し始めて、無敗の18勝を挙げた。そのうち8勝はウォークオーバー(単走・不戦勝)だった。種牡馬としては勝馬344頭を送り出し、そのうち3頭はエプソムダービーを制した。
By NTRA Press Release
(1ドル=約130円)