あるテーマにちなんだ馬名が採用され続けるのは、つねに喜ばしいことである。9月23日(土)にチェスター競馬場で4連勝を達成したバエズ(Baez)の今シーズンの活躍ぶりは、ミュージシャンや曲名にちなんで名づけられた競走馬の熱心なファンの心を打つことだろう。
ジョーン・バエズは1960年代に活躍したフォークシンガーである。この時代のアイコン(象徴的な存在)だったと言う人もいるだろう。だから牝馬バエズの父がシックスティーズアイコンであってもあまり驚くまい。シックスティーズアイコンの産駒にはほかにも以下の馬名の馬が含まれる。血統にまつわる楽しいテーマは馬名に彩りを添える。
かつて平地のハンデ戦でまずまず活躍したシャラララリー(Sha La La La Lee 父ヘルメット)の馬名の由来には確信が持てない。しかしおそらく馬主はスモールフェイセスのファンだったのだろう(『シャ・ラ・ラ・ラ・リー』は1966年のバンド初のヒットシングル)。勝利を収めている障害競走馬レイジーサンデー(Lazy Sunday リチャード・ミットフォード⁻スレイド厩舎)もこのバンドのヒット曲『レイジー・サンデー・アフタヌーン』にちなんだ馬名であり、2017年にハードル競走を制したティンソルジャー(Tin Soldier ウィリー・マリンズ厩舎)もそうだった。
スモールフェイセスの曲はかなり馬名に使われているが、『オグデンズ・ナッツ・ゴーン・フレーク(Ogden's Nut Gone Flake)』や『ハッピーデイズ・トイタウン(HappyDaysToyTown)』はまだ使われていない。
それから10年が経っても、今年のチェルトナムフェスティバルで勝利を収めたユーウェアイットウェル(You Wear It Well)の馬名は、1972年にヒットしたロッド・スチュワートの曲名と同じである。また2000年代半ばにジョンジョ・オニール厩舎のラインストーンカウボーイ(Rhinestone Cowboy 1975年のカントリー歌手グレン・キャンベルのヒット曲)がピークを迎えてハードルのビッグレースを制していた頃を今でも懐かしく思い出す。だいたいその頃、コックニーレベル(Cockney Rebel スティーヴ・ハーレイがフロントを務めたバンドの名前)とレベルレベル(Rebel Rebel デヴィッド・ボウイのヒット曲)という2頭の「反逆者(Rebel)」が平地レースで走っていた。とりわけコックニーレベル(ジェフ・ハファー厩舎)は2007年に英国とアイルランドの2000ギニー(G1)を制するほどの活躍を見せた。
コックニーレベルの馬主であるフィル・カニンガム氏はほかにも曲名にちなんだ以下の馬を所有している。
しかしおそらく音楽をテーマに名づけられた最も有名な馬は、米国のダートの名牝ゼニヤッタ(Zenyatta)だろう。彼女は2009年BCクラシック(G1)を制し、通算20戦19勝の成績をあげた。1歳のときにレコード会社の重役ジェリー・モス氏に購買されたこの牝馬は、モス氏が設立したA&Mレコードと契約していたポリスのアルバム『ゼニヤッタ・モンダッタ(Zenyatta Mondatta)』にちなんで名付けられた。ゼニヤッタの功績を考えれば、1981年にポリスのヒット曲『マジック(Everything Little Thing She Does Is Magic)』にちなんだ馬名のほうがふさわしかっただろう。
牝馬バエズに話を戻せば、彼女の次走はロシア皇太子ハンデキャップ(10月14日 ニューマーケット)の予定である。見事にヒットを飛ばすことを期待しよう[訳注:バエズは9月30日のウォーターゲートカップH(チェスター)で3着に敗れて連勝が途絶え、ロシア皇太子ハンデキャップには出走しなかった]。
By Daniel Hill
[Racing Post 2023年9月24日「Baez the latest hit for those of us who are dedicated followers of music names」]