昨年のダービー馬デザートクラウンは安楽死措置を取られざるをえなかった。8月にニューマーケットの調教走路で球節に負った重傷が回復しなかったのだ。
デザートクラウン(馬主:サイード・スハイル氏)は、英インターナショナルS(G1 ヨーク)に向けた調教中に骨折した。サー・マイケル・スタウト厩舎のこの牡馬は回復に向かいつつあると考えられていたが、怪我の具合はかなり深刻で助からないことが判明した。ニューマーケット馬診療所(NEH)で外科医たちは彼を救うべく闘ったが、10月23日(月)午後に安楽死措置が取られた。
スタウト調教師はこう語った。「デザートクラウンの馬房まわりを担当していた厩務員、サラ・デニフは素晴らしい仕事をしてくれました。ラヴィが馬を仕上げ、昨年はグレン・マギーがよく乗ってくれました。ケビン・ブラッドショーとテッド・ダーカンが追い切りで乗り、彼らはみな、デザートクラウンの勝利に大きく貢献してくれたのです」。
スハイル氏のレーシングマネージャー、ブルース・レイモンド氏はこう述べる。「デザートクラウンは素晴らしい馬で、この怪我さえなければ最強馬の一頭になる運命でした。思い出せるかぎりでは、ダービーを最も楽に勝った一頭であり、彼を失ったのは非常に残念なことです」。
「右前脚を骨折し、ボルト16本を埋め込まなければなりませんでした。すべてがうまくいっているように見えましたが、左前脚に重心をかけたときに大きな負担がかかりすぎ支えきれなくなったのです。NEHで優秀な外科医たちが治療にあたってくれたものの、人道的な安楽死措置が取られざるをえなくなりました」。
この重傷を負う前に、デザートクラウン(父ナサニエル)は軽傷から回復しつつあったがキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1 7月29日 アスコット)への出走を断念していた。今年唯一の出走となった5月のブリガディアジェラードS(G3サンダウン)ではフクムの2着に終わっていた。
デザートクラウンの通算成績は4戦3勝。ダンテS(G2)でも優勝しているが、最も記憶に残るのはフーヤマルやウエストオーバーを抑えてのダービー制覇である。
2021年11月にノッティンガム競馬場でのデビュー戦を、リチャード・キングスコート騎手を背に5½馬身差で制して脚光を浴びた。春には2戦目としてノヴィス競走に出走させる予定だったが、小さな怪我で回避することとなった。そこでスタウト調教師は5月に彼をダンテSに参戦させた。
ロイヤルパトロネージに3¼馬身差をつけて圧勝したのち、ダービーの有力候補に推されて単勝3.5倍で臨み勝利を収めた。翌月、初めての古馬相手のレースとなるキングジョージ6世&クイーンエリザベスSに出走する予定だったが、軽傷のために回避することになった。そして、2022年にふたたび出走することはなかった。
その後、ブリガディアジェラードSで復帰を果たしたものの、数々の小さい怪我でロイヤルアスコット開催には参戦できなかった。そして8月の英インターナショナルSのわずか数日前に、のちに致命傷となる怪我を負った。
リチャード・キングスコート騎手がデザートクラウンを哀悼
リチャード・キングスコート騎手はデザートクラウンの死に哀悼の意を表した。デザートクラウンは昨年の英ダービーを制して、キングスコート騎手にキャリア最高の瞬間をもたらしていた。
キングスコート騎手はこう語った。「デザートクラウンへの思いを何度か尋ねられました。しかしまずは、彼を可愛がってきて現在悲しみに打ちひしがれている厩舎スタッフにお悔やみ申し上げます」。
「次に、競馬ファンにとても申し訳なく思っています。というのも、彼がどれだけ優秀な馬だったかをもう見ることができないからです。そして彼がどれほど驚異的な馬だったかを説明する言葉は思いつきませんね」。
「昨年の夏の2つのビッグレースで、こちらの思いどおりに走ってくれた彼にはずっと感謝するでしょう。紳士的で驚異的な競走馬でした。彼の素晴らしさを存分に感じることができてとても恵まれていましたが、どこかおそれ多く感じる部分もあります」。
By David Milnes
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[Racing Post 2023年10月23日「Derby hero Desert Crown put down after failing to recover from serious injury」、10月24日「'I don't have the vocabulary to explain how amazing he was' - Richard Kingscote pays tribute to Desert Crown」]