今年の欧州競馬シーズンにおいて日本の影響力が目立っている。英ダービー(G1)・愛チャンピオンS(G1)・英セントレジャーS(G1)・愛ダービー(G1)の勝馬はすべて日本の種牡馬を父とする。そして10月29日午後にロワイヤルオーク賞(G1)で楽勝を決めたダブルメジャーがその仲間入りを果たした。
ヴェルテメール家の自家生産馬ダブルメジャー(せん4歳)はダイワメジャー産駒である。イクイノックスが天皇賞(秋)(G1)でハッとするような速さで勝利をつかんで世界一を証明したその日に、このレースの優勝経験馬が欧州で頭角を現したのはまさに打ってつけの出来事である。
それぞれオーギュストロダンとコンティニュアスを送り出したディープインパクトとハーツクライと同じく、ダイワメジャーは血統を形成した種牡馬サンデーサイレンスの産駒である。現在22歳のダイワメジャーは社台ファームで生産され、母はG3・4勝馬スカーレットブーケ(父ノーザンテースト)である。
吉田ファミリーは、のちにフォレ賞(G1)優勝馬となるノーザンテースト(父ノーザンダンサー)を1歳のときに生産者のE・P・テイラー氏から購買した。そしてこの馬をフランスで出走させてから、日本で種牡馬入りさせた。ノーザンテーストは種牡馬として成功を収めるが、のちに吉田ファミリーの別の輸入馬サンデーサイレンスの大活躍により存在感が薄れることになる。
ダイワメジャーは3歳のときに皐月賞(G1)を制したが、東京優駿(日本ダービー G1)ではキングカメハメハの6着に終わった。4歳のときにはダービー卿チャレンジトロフィー(G3)を制し、京都のマイルチャンピオンシップ(G1)で2着に入った。
5歳のときには天皇賞(秋)とマイルチャンピオンシップを制し、JRA最優秀短距離馬のタイトルを初めて獲得した。
6歳のときには安田記念(G1)を制し、マイルチャンピオンシップの2勝目を果たした。この年ダイワメジャーはドバイデューティーフリー(G1)でアドマイヤムーン、リンガリに次ぐ3着に入り、有馬記念(G1)でも3着となった。そしてJRA最優秀短距離馬のタイトルを守った。
なお、¾妹のダイワスカーレット(父アグネスタキオン)はG1・4勝馬である。
現役を引退して2008年から社台スタリオンステーションで供用されているダイワメジャーは、2015年に2歳リーディングサイアーに輝いた。牝駒のメジャーエンブレムが阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を制し、最優秀2歳牝馬に選出されたのだ。
ダイワメジャーの最も優秀な産駒には、2018年の最優秀2歳牡馬に選ばれたG1・3勝馬アドマイヤマーズや、父にならって昨年マイルチャンピオンシップを制してJRA最優秀短距離馬のタイトルを獲得したセリフォスなどがいる。ダイワメジャーは現在までにG1馬8頭を送り出している。
彼にとってダブルメジャーは欧州で初めてのG1優勝産駒であり、このせん馬はヴェルテメール家の強力な血統を受け継いでいる。ギッシュ賞(G3)優勝馬フロップショット(父ニューアプローチ)と、リステッド3着馬ヴェリタス(父キャメロット)の半弟にあたる。
母はリアンクール賞(L)3着馬ダンスクエスト(父ダンシリ)であり、サンクルー大賞(G1)優勝馬プルマニア(父アナバー)とロワイヤリュー賞(G2)優勝馬バラドゥーズの半妹である。プルマニアはG2勝馬プルマティックとリステッド勝馬マニアコを送り出しており、バラドゥーズはヴェルメイユ賞(G1)優勝馬レフトハンドを送り出している。
ダンスクエストの母フェザークエスト(父レインボークエスト)はリュパン賞(G1)優勝馬で種牡馬のグルームダンサーの近親にあたる。
ダンスクエストはほかにもアンドレ・ファーブル調教師に管理されている2歳のロペデヴェガ牝駒タイラ(Tyra)や、1歳のドバウィ牝駒ルーバ(Rooba)を送り出しており、今年はタイラの全弟を出産した。
By Aisling Crowe
[Racing Post 2023年10月29日「Sunday Silence at Longchamp as Double Major wins Prix Royal-Oak」]