北中米競馬委員会協会(ARCI)のエド・マーティン会長が2月2日付のサラブレッド・デイリーニュースに書簡を寄せました。彼はその中で、競馬の安全性と薬物コントロールに関するルールや規制が全国的に統一されていないことについて、真の解決策も示さず事実に基づくことなしに現状をふたたび擁護しています。
エドは何年にもわたって現状を擁護してきました。2018年にも2020年にも、エドは当時準備段階にあったHISA(競馬の公正確保と安全に関する法律)に対して議会で証言し、"効果的に果たされている州の責任を過激かつ不必要に連邦化するものだ"と述べました。
"効果的に果たされている"とはどういうことでしょうか?
彼は明らかに、2020年3月に27人の調教師と獣医師が連邦捜査局により逮捕され最終的に有罪となったという事実を無視することを選んだのです。ついでに言うと、エドが率いるARCIの管理下でこれらの逮捕者は何の懸念も抱かずに何年にもわたって悪事を実行していたのです。彼は競馬産業がもはや孤立して運営されているわけではないこと、競走馬には競馬場の外にも擁護者がいること、それらの擁護者が州議会および連邦議会の議員に影響力を持っていることを無視するようにしているのです。そしてエドは最終的に、HISAの懸命な努力を無視することにしています。HISAがそのルールを実施に移すために州や競馬場とおおむね協力的に取り組んでいるのにです。
どうしてこのような事態になったのか、エドはもう一度思い起こすべきです。
規制当局は数十年にわたって競馬界を浄化することをくり返し"約束"してきました。思い出せるかぎりでも、ルール統一を求める声は無数にありました。実際、競馬界のどのような会議でも"将来はより厳格に執行される全米統一ルールが制定される"と喧伝されてきました。このコンセプトは目新しいものではありませんが、HISAのおかげで初めてこの目標は私たちの手の届くものになったのです。
薬物規制標準化委員会(RMTC)は競馬産業にかなり貢献してくれましたが、私たちが考えていたような全国的な改革は実現しませんでした。全米統一薬物プログラム(National Uniform Medication Program: NUMP)にも期待しましたが、またしてもさまざまな州の規制当局が全米で同一のルールや規制を制定することはできませんでした。ジョッキークラブは2020年、NUMPが効果的かどうかを判断するために採点カードを作成しました。そして効果的とは判断されませんでした。プログラムの4段階すべてを採用したのは9州だけで、16州は1段階しか採用していなかったのです。中部大西洋岸諸州(ニューヨーク・ニュージャージー・ペンシルベニア・デラウェア・メリーランドの諸州)はNUMPを順守するために何年も協力してきましたが、ほかの大半の地域はそうではありませんでした。
エドは以前から"各州の競馬統括機関のあいだで連邦競馬協定が結ばれることこそが必要である"と提案してきました。すでに協定が存在しARCIのメンバーが事実上まったく支持していないことを、彼は都合よく見逃しています。各州は気に入らないルールを選択しないことができます。そのため、多くの競馬産業の重鎮は州間で一貫性がなく矛盾しているルールを是正したいと長いあいだ考えてきたのですが、この協定はその泥沼を保証するに等しいものだったのです。
エドは、「しばらく前から見守ってきた私たちにとってはつらいことです。このような事態を避けることができたはずです」と記しています。ある意味、その点について彼は正しい指摘をしています。HISA(競馬の公正確保と安全に関する法律)が制定されていなかったなら、HISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)が不利な法的判断を受けることはなかったでしょう。しかし変化を求める我々にとっては、「一堂に会して果てしなくコストのかかる訴訟を避けるための別のアプローチを考えよう」というエドの使い古された提案は、業界内に分裂が生じていることを理解も評価もできていないことを意味しているのです。この業界には、現状のまやかしの快適さに満足している人々と、競馬を本当に存続させようとするのであれば競走馬の安全とゲームの健全性を最優先目標としなければならないと認識している人々がいるのです。
おそらくエドはARCIが任務を果たせなかったことを人々に悟られるのを恐れて、最初からHISAに反対してきたのでしょう。ARCIのウェブサイトによると、「競馬ルール・薬物方針・薬物検査機関・トータリゼーターシステム・競馬場運営とセキュリティ・場外馬券発売所に関する国際基準」をARCIは定めているとのことです。すなわちHISAが薬物規制基準を統一し有意義なものにしようとしているのに対して、ARCIはそれをずっと成し遂げられないでいるのです。
現行の州単位のアンチドーピング・薬物管理・安全ルールの構造が全国的な統一性をつくりだし安全性と公正確保のための高い基準を設定する態勢を備えたものでないことは、競馬界の内外の誰にとってもきわめて明白です。
2020年3月に学んだように、仕事を成し遂げるため、また競馬を操作する露骨な不正行為者に鉄槌を下すためには、FBIと外部調査機関の力を借りる必要がありました。同時に、競馬というスポーツを守るはずの規制当局の無能さを露呈させました。ジョッキークラブは長年、連邦法に基づく全国的なアプローチの確立を支持してきました。なぜなら、歴史がくり返され、全国的な統一が達成されないままでは、国民に愛されるスポーツである競馬は生き残れないと考えるからです。
しかしくり返しになりますが、エド・マーティン氏は現状を擁護しています。彼が相応の責任を負うべき歴史を書き換えさせてはなりません。
ジョッキークラブ理事長兼COO(最高執行責任者)
ジェームズ・L・ギャグリアーノ
By James L. Gagliano