欧州の重賞競走の変更に関するニュースはいつも興味深いものである。もしこのような事柄がお好きであれば。
尊敬する同僚記者のトニー・モリス氏も、2023年に欧州のブラックタイプ競走が昨年の852レースから減少して827レースとなったという注目すべき事態にとても興味をもっていることだろう。
2023年において重賞競走は昨年の425レースから412レースに減少し、リステッド競走もほぼ同様に昨年の427レースから415レースへと減少する。
これは正しい方向だが、大幅減少は適所で起こっているのだろうか?
窮地に立たされているイタリアの競馬界と生産界がさらなる格下げにどう対処するのか気になるところだろう。16レースという数字はともかく...いやそう16レースである、2024年に格下げリスクのある競走一覧に16レースも掲載されているのだ。
2月15日(水)に欧州の重賞競走11レースが格下げされたと発表された。そのうち5レースがイタリアの競走だった。また、イタリアは4つのリステッド競走を失った。
少し先の話をすると、2023年のパフォーマンス次第で2024年に格下げされる可能性がある重賞競走・リステッド競走は合計48レースある。その3分の1がイタリアのレースである。
イタリアの16レースが審査対象になっている一方で、ドイツもこの格下げ予備軍の中に13レースが入っていることを懸念している。
10年前にイタリアではG1・7レースが施行されていたが、2019年以降はG1競走施行の宣伝効果や幅広い関心は得られなくなっている。テシオ、リボー、デットーリを生み出した土地にとってはぶざまな状況だ。
何よりもまして、イタリア競馬界は当面のあいだはヨーロッパ・パターン競走委員会(EPC)が上位4頭のレーティングという基準以外でレースの格付けを決定することを必要としているのだ。きっとどの競馬国もこれを妬むことはないだろう。
種牡馬を供用することについては、提供するものの質を上げようとする野心や向上心が欠けているわけではない。エルカベイア(父スキャットダディ)はフランケルの半弟モルフェウス(Morpheus)とともにイタリアで供用され、ダービー馬ルーラーオブザワールドは2023年にメリッサ・チプリアーニ氏のベラルデンガ牧場(Allevamenti della Berardenga)で供用2年目を送ることになる。
しかし影響力という点では、G1競走や重賞競走をできるだけ多く施行することを望むアイルランドやフランスの生産界と比べるとイタリアは当然見劣りする。英国にしても、2023年にブラックタイプ競走11レースを自主的に格下げするのは重賞競走体系が膨張してしまったという認識があったからであるものの、引っ込み思案というわけではない。
前向きな変更は発表されたのだろうか?
それは次のような点である。ドイツでステイヤーのブラックタイプ競走体系を強化するために2023年に新設のリステッド競走2レースを施行する。またスウェーデンではチャレンジS(ブローパーク競馬場)がリステッドに格上げされることで新たなブラックタイプ競走が施行されることになる。さらにEPCは欧州・地中海地域競馬連盟(EMHF)の競馬新興国支援の一環として、ポーランドの代表的なレース、グレートワルシャワ(Wielka Warszawska)をリステッドに格上げすることに同意した。
ポーランドやスペインのような競馬新興国を支援するのは立派なことだ。しかし苦境に陥った大国の明白な苦しみを無視するのは嘆かわしいことである。
EPCはイタリアの最高峰レースを絶えず格下げしてきたために、イタリアの競馬界やそこでの雇用に与える影響は計り知れない。これに歯止めをかけないかぎり、イタリアは欧州競馬の地図から消えていくことになるだろう。
By Andrew Scutts
(関連記事)海外競馬情報 2020年No.6「追い詰められたイタリア競馬、再生への希望はあるか?(イタリア)」
[Racing Post 2023年2月15日「Italy could be wiped off European racing map unless Pattern Committee takes a pull」]