生産界は2月21日(火)、2つの国際的な喫緊の課題のために多額の資金を集めるべく団結した。馬購買エージェントであるオリヴァー・セントローレンス氏と馬の整骨医であるスティーヴン・バーン氏が始めた種付権(ノミネーション)のオンラインチャリティーセールに協力したのだ。
セントローレンス氏は、「このセールで気前よく落札していただいたことを大変嬉しく思っています。関わった誰もが膨大な仕事をこなしてくれました。種付権はこの時期にしては、よく売れたと思います」と語った。
このセールは当初、バーン氏をはじめとする競馬・馬術関係者がロシアのウクライナ侵攻で被災した避難民に人道的支援を行うために立ち上げたチャリティー活動「ギビング・トゥ・ウクライナ(Giving To Ukraine)」の資金集めの手段として考案された。その後、この活動は災害緊急委員会のトルコ・シリア地震募金活動にも拡大された。
欧州有数の牧場がセントローレンス氏とバーン氏の取組みを支持し、彼らが供用する種牡馬の種付権を提供した。そしてその寛大さはこのセールに多くの人が参加したことにより報われた。
通常の馬のセリほど個々の購買価格は重要ではないが、ショーケーシングの種付権がターコイズブラッドストック社により3万5,000ポンド(約578万円)で落札され最高価格となった。4万5,000ポンド(約743万円)の価値があり、今回のセリカタログで一番の高価アイテムだったこの種付権はホワイツベリーマナースタッドにより提供された。同スタッドで供用されているショーケーシングはG1馬4頭の父であり、最近では昨年のジャンリュックラガルデール賞(G1)優勝馬ベルベック(Belbek)を送り出している。
またショーケーシングの若きスタッドメイト、セルゲイプロコフィエフの種付権も上場されており、エイドリアン・オブライエン氏が5,000ポンド(約83万円)で落札した。
クールモアスタッドはトルコ・シリア地震の被災者への資金集めのため、2月14日(火)にアルカナ社2月セールでキャメロットの種付権を上場している。そしてこのセールには2頭の将来有望な種牡馬の種付権を提供した。
彼らはホワイトバーチファームと共同で凱旋門賞(G1)と仏ダービー(G1 ジョッケクルブ賞)の優勝馬ソットサスの種付権を提供した。そして見事なめぐり合わせの結果がもたらされた。ソットサス(父シユーニ)とその半姉でG1・7勝馬のシスターチャーリーを生産したモンソー牧場がその種付権を2万2,000ポンド(約363万円)で落札したのだ。
購買者リストの中で一番多く名前が見られたのは、エディ・オリアリー氏のリンロッジスタッドである。同スタッドはタイムテストの種付権を8,500ポンド(約140万円)で落札した。
また、クールモアが提供した英2000ギニー(G1)&フューチュリティT(G1)優勝馬マグナグレシアの種付権を1万3,000ポンド(約215万円)で落札した。セントマークスバシリカの半弟であるこの馬は、今年のファーストシーズンリーディングサイアーの有力候補の1頭であり、今年の公示種付料は1万5,000ユーロ(約218万円)とされている。
リンロッジスタッドはこのセールですでに、コディベアの種付権を1万3,000ポンド(約215万円)で落札していた。ラスバリースタッドにいるG2勝馬でデューハーストS(G1)2着馬のコディベアの今年の公示種付料は1万5,000ユーロ(約218万円)だが、種付料がより安かった供用1年~3年目にステークス勝馬6頭を送り出している。
コディベアの父コディアック(22歳)はこのセールで高額落札をもたらした。タリーホースタッドの中心的な存在でありG1馬6頭を送り出しているコディアックの種付権は、ラ・オーストラリアーナ・パートナーシップにより3万ポンド(約495万円)で落札された。この種付権は、コディアックの種付権所有者により提供されたものである。
馬購買エージェントであり生産者でもあるルーク・リリングストン氏は、ランウェイズスタッドで供用され初年度産駒が今年デビューする仏ダービー優勝馬スタディオブマン(父ディープインパクト)の種付権を1万1,500ポンド(約190万円)で落札した。この種付権はスタディオブマンのシンジケートにより提供されたものだ。
すべての購買者が公表されているわけではないが、ほかにもセントサイモン・ブラッドストック社がタリーホースタッドで供用されているジュライカップ(G1)優勝馬スターマンの2つ目の種付権を1万500ポンド(約173万円)で落札し、ストラウド・コールマン氏がトゥウィーンヒルズスタッドで供用3年目を迎える英2000ギニー優勝馬カメコの種付権を1万ポンド(約165万円)で落札している。
ラリヴィエール牧場はアルシャカブレーシングが提供したジャンプラ賞(G1)優勝馬ゼルザル(父シーザスターズ)の種付権を1万ポンド(約165万円)で落札した。ゼルザルはブクト牧場で供用されている。一方カートリントンスタッドは、チェヴァリーパークスタッドにいる英インターナショナルS(G1)&エクリプスS(G1)優勝馬のユリシーズの種付権を1万ポンド(約165万円)で獲得した。
マイケル・グラシック氏も複数の種付権を購入している。アルラバンスタリオンズ社が提供したクロシオ(スターフィールドスタッドで供用)の種付権を2,000ポンド(約33万円)で落札した。またトム・ゴフ氏が提供したグレゴリアン(ラサスカースタッドで供用)の種付権を1,800ポンド(約30万円)で獲得した。
By Aisling Crowe
総売上額は37万ポンド
種付権のオンラインセールは37万ポンド(約6,105万円)以上もの資金を集めた。
タタソールズ社のオンライン基盤で牧場や種付権所有者により上場された種付権に対して24時間にわたり入札が受け付けられたこのセールの売上げは25万ポンド(約4,125万円)を超えた。入札期間中に落札された種付権79件に加え、数頭の種牡馬については複数の種付権が上場され、2月21日(火)夜と22日(水)朝に落札されたことでさらに12万ポンド(約1,980万円)の売上げが追加された。総売上額は37万ポンド(約6,105万円)以上にのぼる。
ターコイズブラッドストック社は、ホワイツベリーマナースタッドの一流種牡馬ショーケーシングの種付権を、トルコの顧客の代理人として3万5,000ポンド(約578万円)で落札した。同社のカイハン・オズカン(Kayhan Ozcan)氏は、トルコの災害緊急委員会の救援活動に多額の寄付をすることになるこの募金活動に参加したすべての人々に自らの感謝の意を表し、顧客に代わって謝辞を述べた。
このセールのトップバイヤーとなったリンロッジスタッドのエディ・オリアリー氏もまた、これほど多額の資金を集めたセールの関係者を称賛した。
多くの購買者が匿名を希望しているが、英国・アイルランド・フランス・ドイツ・イタリアからの180人以上もの入札者がこのセールに積極的に参加した。
タタソールズ社のエドモンド・マホニー会長は、このような多額の資金集めに一役買ったすべての人々の尽力に賛辞を贈った。
「種付権のオンラインチャリティーセールは大成功を収めました。スティーヴン・バーン氏とオリヴァー・セントローレンス氏のおかげです。彼らのイニシアティブと熱意により、100近くもの種付権が提供されました。牧場はとても寛大にこのセールを支援し、生産界も同様に寛大な態度でこれに応えてくれました」。
「ギビング・トゥ・ウクライナと災害緊急委員会のトルコ・シリア地震募金活動に多額の資金を集めることができたのは、時間と労力を注いで貢献してくださったすべての人々のおかげです」。
By Racing Post Bloodstock Staff
(1ポンド=約165円、1ユーロ=約145円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2023年No.6「トルコ・シリア地震の救援活動支援のためキャメロットの種付権を販売(国際)」
[Racing Post 2023年2月21日「Bloodstock industry digs deep to support charity auction」、2月22日「Bloodstock industry raises £370,000 to benefit humanitarian crises charities」]