海外競馬ニュース 2024年05月16日 - No.18 - 3
厩舎スタッフ、沖に放馬した馬を泳いで救出(オーストラリア)[その他]

 オーストラリアの厩舎スタッフの勇敢さと瞬時の判断力が沖に向かって放馬していた馬の命を救った。

 ヴィクトリア州の海岸沿いの町ワーナブルに厩舎をかまえるサイモン・ウィルド調教師は、日常的にレディベイでの海岸調教を取り入れているが、勇敢なスタッフのおかげで管理馬の一頭が命拾いしたことを明かした。

 ウィルド調教師のもとで働くジョーディン・ビリングス氏は、1頭の騙馬が放馬し乗り役と離れてワーナブルの防波堤を越えて泳いでいってしまったのに気づいた。ブラックキャビアの攻馬手として名が知られるパディ・ベル氏とともに即座に救助に向かった。

 「すごい光景でした。ビーチに落ちていた海藻に馬が躓いて乗り役が落馬してしまいました。何を思ったのか、馬は海に向かって一直線に泳ぎ始めたのです。彼らは戻ってくるだろうとその様子を眺めていたのですが、馬はそのまま直進していきました」。

 戻ってくる気配のない馬を見て、ビリングス氏とベル氏は埠頭で漁船を貸してもらい救助を開始した。

 ビリングス氏は次のように語った。「馬は海岸から250mほど離れた防波堤に既に到達していました。我々が着いた頃にはさらに50-60mほど進んでいて、防波堤を越えた大波の中でした。舟を揺らすほど波が立っていて、モーター音が馬をイラつかせていたのが分かったので、大丈夫だとわからせるために馬の周りを何度か周回しました」

 「なんとか引き手がつけられる距離に舟を近づけて、何枚か洋服を脱いで海に飛び込みました。深くは考えず、とにかく一刻も早く海岸に戻してあげなければいけないということだけを考えて行動していました」。

 さらにビリングス氏は続けた。「鞍が付いた状態だったので波が落ち着くところまで馬に乗って誘導し、そこから海岸までは私も一緒に海に入って隣で泳ぎました。一緒に泳いでいる間ずっと、彼が落ち着いて呼吸していることだけを確認していました。大したもので、彼は全くストレスを感じていませんでした」

 「この話をお伝えできるのも、馬が生き延びたからで、考えられる範囲で最善の結果でした」。

 ビリングス氏は自身の出産と事務の仕事を経て、最近、競馬の仕事に復職したばかりだった。漁師たちの迅速な対応と馬が健康で丈夫だったおかげで、無事に馬を救出できたと彼女は語った。

 「漁師たちがいなければ、このような結果にはなっていなかったはずですので、本当にラッキーだったと思います。普段ボートを先導させて泳がせる時は2-3分がいいところですが、今回は15-20分ほど泳いでいました。ですから、あれだけの距離を一人で泳いで、しかもまた同じ距離を泳いで戻ってきたと考えると本当にすごいことだと思います」。

 ウィルド調教師はビリングス氏が限界を超えて勇敢に行動したことに感謝し、次のように語った。

 「彼女がそのような行動を取っていなければ馬は助かっていなかったかもしれないし、おそらくそのまま泳いでいき溺死していたでしょう。彼女は立ち止まって考えることなく行動してくれました」

 「ある朝海岸で馬を泳がせて調教していたのに、いきなり海に飛び込んで防波堤の向こう側までいき馬を救出したのですから、実に素晴らしい行動だったと思います」。

By racing.com Staff

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