日曜日の最初のレースから1時間以上経っても、カリフォルニア州アルバニーにあるゴールデンゲートフィールズ競馬場の駐車場へと続く長い坂道には、近隣のフリーウェイを降りてきた車が延々と連なっていた。
普段は火曜日の朝のショッピングモールのように駐車できる場所だ。しかし、この歴史あるベイエリアの競馬場の最後の日は様子が違った。まるで大きなスポーツイベントに入場する前の交通渋滞のようだった。
公式発表によればこの日の入場人員は5,936人。先週の日曜日は1,424人だった。
日曜日、ゴールデンゲートフィールズで最後の開催となる8競走が実施された。午後5時40分発走の最終レースでは、アイルランド産の5歳牝馬アデリーがアサエル・エスピノーザ騎手のもと7頭立ての最後方から追い上げ、最後のレースを制した。
今シーズンの同場リーディングジョッキーでもある24歳のエスピノーザ騎手は、アデリーが入線する前に右手で鞭を振り上げ、その勝利を祝った。
この勝利はエスピノーザ騎手にとって、12月26日に始まった同競馬場でのシーズン80勝目、通算では426勝目となった。同騎手は日曜日の3勝を含め、キャリア通算では637勝を挙げている。
エスピノーザ騎手はレース後、次のように語った。
「有終の美を飾ることが出来ました。登録馬が発表されてから、この最終レースは絶対に勝ってやろうと思っていました。この競馬場には素晴らしい思い出がいくつもありますから」。
エスピノーザ騎手のキャリアは、ここ数年と同じく夏の間、北カリフォルニアのフェアサーキット(訳注:持ち回りで開催される農業見本市。競馬も開催される)で継続される。プレザントンで開催されるアラメダ郡の4週間のフェアミーティングが6月14日(金)に始まり、10月中旬までサクラメント、サンタローザ、ファーンデール、フレズノを巡る。
秋のプレザントンでは、以前ゴールデンゲートフィールズで開催されていたタイミングで秋季競馬が開催される。この開催は、北カリフォルニアを拠点とする馬関係者の組合であるゴールデンステートレーシングが、フェアミーティングのほとんどを運営するカリフォルニア州競馬見本市事務局の関係者と協力して実施することとなる。
来年の冬にはプレザントンでの競馬開催も計画されている。それでも、北カリフォルニアの競馬の未来は不透明で困難に直面している。
ゴールデンゲートフィールズの閉鎖は、親会社である1/STレーシング社が昨年7月に発表したものだが、閉鎖後の北カリフォルニアにおける競馬の継続は、ゴールデンステートレーシングがその手立てを模索している。
当初、同場は昨年12月に閉鎖されるはずだったが、カリフォルニア州競馬当局の強い要請で冬から春にかけても開催を行った。しかしその間、開催は順調とは言い難かった。一般競走のレースの賞金は、近年の賞金支払い超過分の300万ドル(約4億5,000万円)を取り戻すために25%も削減され、特別競走の数は2022-23年シーズンの16レースから2レースへと縮小された。
春の開催では馬を集めるのに苦労し、6日間の開催をキャンセルせざるをえなかった。
こうした舞台裏の困難がありながらも、サンフランシスコのスカイラインやゴールデンゲートブリッジなど、ベイエリアの息をのむような景色を望むこの美しい競馬場の最後の日に、多くの観客が足を運んだ。
1941年にオープンし、2008年にサンマテオのベイメドウズ競馬場が閉鎖されて以降はベイエリアの競馬の中心となってきたこの競馬場で、観客はもう一度レースのある午後を楽しみたかったのだ。
パドックとウイナーズサークルを見下ろす階段には、1日を通じてあらゆる年齢層の観客が列をなしていた。いつもは空席の多いスタンド席も、珍しく活気に満ちていた。
最後のレースまで残った多くのファンは、携帯電話を手に最後の思い出を記録していた。
By Steve Anderson
(1ドル=155円)
[drf.com 2024年6月10日「Fans crowd Golden Gate for one last memory」]