オッズ表示板は、逆転劇が起こることを示唆していた。

　6月8日にサラトガ競馬場で行われたベルモントS（G1）で、ドーノック（父グッドマジック、母プーカ）はマインドフレームを半馬身差で敗り、三冠競走の最後の一冠を手に入れた。

　しかし、7月20日にモンマスパークで行われたハスケルS（G1）で両馬が再び対決すると、1番人気に支持されたのはマインドフレーム（父コンスティチューション）で、大きなオッズの差があった。マインドフレームの単勝オッズは1.4倍であった。

　ドーノックは2番人気ですらなかった。2番人気は、3月30日のアーカンソーダービー（G1）で単勝2.2倍の1番人気に支持されたものの4着に終わって以来の出走となったティンバーレイクで、最終オッズは4.3倍であった。

　一方、出走する7頭の中で唯一のクラシック勝馬のドーノックは3番人気で4.4倍であった。

　「オッズは気にしていない」とドーノックを管理するダニー・ガーガン調教師は語った。ドーノックは昨年のケンタッキーダービー馬メイジの全弟である。

　ドーノック自身もまた、気にしていなかった。

　同馬はまたしても超絶的なパフォーマンスを見せた。最初の半マイルは先頭でレースを引っ張り、6頭のライバルのうち2頭に一時は先頭を譲るも、驚異的な心肺機能により直線で再び抜け出すと、1¼馬身差でマインドフレームを抑えて賞金100万5千ドル（約1億5,600万円）のレースを制し、3歳牡馬の頂点に輝いた。

　「覚えておいてください。ドーノックよりも前を行く馬はいないのです」共同馬主のランディ・ヒル氏は言った。

　最近では、ドーノックの前に出ることはできても、そこにとどまるのは難しい。ベルモントSに引き続き、ハスケルSでもマインドフレームは直線でドーノックの前に出た。

　ベルモントSでは直線残り200mのところでマインドフレームが頭一つ前に出たが、ドーノックの反撃に屈した。

　土曜日のハスケルSでは、マインドフレームは最終コーナーで力強く、外から捲る動きで先頭に立ち、残り200mではクビほどのリードがあったものの、前走よりも着差をつけられて敗れた。

　「彼は何かを見出す。彼は特別なのです」と、ガーガン調教師はドーノックについて語った。「彼が不利な状況を覆すレースをしてくれたことを誇りに思います。今日はペースが遅めでした。速いペースのほうが彼に適していると皆が言っています。しかし今日のコースは得意とするコースではなかったのですが、それでも彼はなんとか自身を駆り立てて走り続ける方法を見出だしたのです。彼は特別で、才能のある馬なのです」。

　クラシック3冠レースのタイトルを3頭の勝ち馬で分けあい、3歳牡馬のチャンピオン争いが混沌とする中で、ハスケルSを制したドーノックは堂々と世代の頂点へと躍り出た。

　ハスケルSはBCクラシック（G1）のブリーダーズカップ・チャレンジシリーズ競走に位置付けられており、ドーノックは11月2日にデルマ―競馬場で行われる賞金総額7百万ドル（約10.9億円）のレースの出走権を手にした。ドーノックの現役最後のレースとなる可能性がある。

　レース後の会見でヒル氏は、共同馬主を代表してドーノックが引退後にスペンドスリフトファームで種牡馬入りすることを発表した。

　ドーノックの次走は8月24日にサラトガ競馬場で行われるトラヴァーズS（G1）を予定しており、ここを勝てば最優秀3歳牡馬のタイトルを確実なものとするだろう。

　「今日のレースはトラヴァーズSの5週間前なので、完璧なタイミングです。私たちはトラヴァーズSを勝ちたい。この馬はいつも私たち全員にとって特別な存在です。彼は現時点で3歳牡馬のトップで、トラヴァーズSに勝てば、私たちにとって3つ目のG1勝利となります。とても素晴らしい馬で、彼に関わることができた私たちは恵まれています」。ガーガン調教師はドーノックについてこのように語った。

　最内枠からスタートすると、ドーノックは最初の400mを23秒32、800mを48秒08のタイムで先頭で通過し、ティンバーレイクとジャストステップオンイットが半馬身差で続いた。1200ｍを1分12秒05で通過した後、ティンバーレイクが頭差で先頭に出るも、ルイス・サエス騎手とドーノックはすぐに応戦し、再び先頭に出た。

　続いて、マインドフレームが力強く外から追い上げ、内3頭をまとめて交わしにかかり、前に出た。

　マインドフレームはイラッド・オルティスJr.騎手の下、内へ外へとよれながらも直線半ばまでリードを保ったが、ドーノックが内ラチ沿いから再び差し返し、最後は差を広げて、1800mを1分50秒31のタイムで制した。

　「今日は簡単なレースではなかったですが、この馬は強い心肺機能を持っています」とサエス騎手は語った。

　入場者数は38,976名で、2015年にアメリカンファラオが勝利したハスケルSの日の60,983名以来最多となった。発売金額の総計2,170万ドル（約33.6億円）は、昨年の2,130万ドル（約33億円）をわずかに上回り、モンマスパーク競馬場のブリーダーズカップ開催以外での最高額を記録した。

By Bob Ehalt

1ドル＝155円

［bloodhorse.com 2024年7月20日「Dornoch Rises to Division Leader With Haskell Score」］