8月16日(金)、いつものように洒落た装いでアルカナ社8月1歳セールに現れた矢作芳人調教師は、その装いだけでなく、80万ユーロ(約1億2,800万円)でフランケル牝駒を落札したことで、この日開催初日を迎えたセールで存在感を示した。
ハンマーが振り下ろされた後、満員の会場はこの決意のこもった入札に対し温かい拍手を送り、感謝の意を表した。矢作氏の落札により、アルシラーファームのキーラン・レーラー氏は競り負けて悔しがるバイヤーという損な役回りを演じさせられることになった。
カプシーヌ牧場から上場されたこの牝馬は、既に7頭の勝馬を輩出しているヴァルトジャグド(Waldjagd)を母に持つ。中でも活躍した産駒としては、G2を勝利したヴァルトビーネやリステッド勝馬のウアヴァルト(Urwalt)などがいる。更に、セリのカタログが上梓されたのちに現2歳のミスアンダーストゥッドがデビュー戦のクレーブクール賞を勝ったことで、そのページは重要なアップデートが行われる。
ヴァルトジャグドは、レーヴェンスブルク牧場が発展させ、ドイツで名を馳せる"W"ファミリーに出自を持ち、兄弟には独ダービー馬ヴァルトパーク、リステッド勝馬のヴァルトフォーゲル、ファルマスS(G1)2着馬のヴァルトマークがいる。ヴァルトマークは英セントレジャー(G1)勝馬マスクトマーヴェルやペネロープ賞(G3)勝馬ヴァルトレルヒェの母であり、凱旋門賞(G1)を制したヴァルトガイストの母としても知られる。
矢作調教師は、2年前の8月1歳セールでもこの牝駒の半兄アウェイキング(父キングマン)を56万ユーロ(約8,960万円)で落札しており、"W"ファミリーについても熟知している。同調教師のもと、アウェイキングは日本で2勝を挙げている。
「エレガントな牝馬で、欠点は見当たりません」と矢作調教師は語った。「まだここでトップオブトップの牡馬を見つけることは出来ていませんが、1歳の全体的なレベルは非常に高く、特に牝馬の質は素晴らしいものがあります」。
落札された牝馬は、アウェイキングと同じ藤田晋氏の勝負服を背負うこととなる。
また矢作調教師は、過去にこのセールで210万ユーロ(約3億3,600万円)で落札され、凱旋門賞への出走を控えるソットサスの全弟、シンエンペラーの近況についても語った。
「栗東トレーニングセンターで順調に調整しています。8月26日にフランスに向け出発し、翌日にはシャンティイに到着する予定です」。
By James Thomas & Scott Burton
(1ユーロ=約160円)
[Racing Post 2024年8月16日「'She's faultless' - Yahagi's determined bidding on well-related Frankel filly brings the hammer down at €800,000」]