今週末の競馬界は難しい状況に置かれたここ数週間とは大きく異なるものとなった。セントレジャー開催とアイリッシュチャンピオンズフェスティバルにおける驚くべきレースに、英国首相のドンカスター競馬場来訪が併さって、このスポーツに最高の光を当てたのだ。
ヤンブリューゲル、エコノミクス両馬の活躍がニュースの見出しになり、そしてサー・キア・スターマー首相がドンカスター競馬場で家族と過ごした一日について貴重な報道が行われた以外にも、前向きになる要素が他にもたくさんあった。ナショナル・レースホース・ウィークにおいて、大勢の競馬関係者たちが、一生懸命に地域社会と触れ合うイベントに参加したのだ。(訳注:ナショナル・レースホース・ウィークには、JRAがサポートスポンサーとして協力している)
どちらかといえば競馬の舞台裏でのできごとかもしれないが、業界のさまざまなセクションが協力して、競走馬を称え、競走馬の丁寧な取扱いについて啓蒙するために協力したことは、競馬場で行われるレースと同じくらい重要なものであったといえる。
競馬界が一致団結する例はあまり多くないが、先週のイベントはそうした取組みのひとつであった。ナショナル・レースホース・ウィークは、リチャード・フィリップス調教師が2019年に本紙のコラムで初めて提案したアイデアで、その創設以来大きな成功を収めている。
約100の厩舎が一般に門戸を開いたことに加え、過去最多の地域への訪問が行われた。主催者であるグレート・ブリティッシュ・レーシングの「あなた方に競馬をお届けします」というアプローチには感服せざるを得ないが、それは私が参加したサルフォードのメディアシティでの開会式でも明らかだった。
引退競走馬チェイスザウインドが、高層ビル群やオフィス街を背景に闊歩する姿は、とても壮観だった。しかし、それ以上に印象的だったのは、この目的に取り組む人々の献身的な姿だった。
ウェスト・ヨークシャーのジョー・フォスター調教師は、3,500人の人々と触れ合うことを目標に、休む間もない1週間をスタートさせた。フェイ・マクマノマン騎手は、木馬の上で騎乗技術を披露するため、朝5時にマルトンを出発した。
ITVのドキュメンタリー番組『Champions:Full Gallop』においてハリー・コブデン騎手やニコ・ド・ボアンヴィル騎手が主役を演じているが、騎手は大きな注目を集める可能性を秘めている。
他の多くの騎手たちがこのイベントに参加し、特に地域社会に積極的に関わることで競馬というスポーツに恩返しをしているのが見られるのは素晴らしいことだ。
競走馬が前面に出て中心となるのは当然だが、騎手にも新たなファンを惹きつける力があり、彼らが割いてくれる貴重な時間はかけがえのないものなのだ。
高いハードルが設定されたが、2025年、競馬界は再びこの週をより大きく良いものにすることができるだろう。
By Andrew Dietz
(関連記事)海外競馬ニュース 2023年No.35「2023年ナショナル・レースホース・ウィークの概要(イギリス)」
[Racing Post 2024年9月16日「National Racehorse Week was a triumph for the sport and provides plenty of grounds for optimism」]