今では信じがたいことだが、13年前にイラッド・オルティスJr.の名前を聞いたらほとんどの競馬業界人は、「誰だって?」と聞き返しただろう。
この32歳のプエルトリコ人はアメリカ競馬に旋風を巻き起こし、次々に金字塔を打ち立てている。直近では、10月13日にキーンランド競馬場でキャリア通算4,000勝を達成した。
「ここまで私が無事でいられたことを神に感謝したいと思います」と、オルティス騎手は言う。「私が(2011年にニューヨークに)来て以来、多くの方が私に両手を広げ、毎日大きなサポートをしてくれています」。
オルティス騎手は、日曜のキーンランドで行われた最初のレースであっさりと節目の勝利を挙げた。マーク・スタンリー氏が所有し、ウィリアム・ウォールデン調教師が管理するグッドテンパー(牝2歳)に騎乗した同騎手は、1 1/16マイル(1,700m)の未勝利戦で終始先頭をキープした。終わってみれば、後続に1 3/4馬身差をつける快勝だった。
ウイナーズサークルに帰ってきたオルティス騎手は、家族や友人、ファン、騎手仲間たちの歓声に迎えられた。そしてグッドテンパーから下馬すると、キーンランドの騎手たちと一緒に写真を1枚撮った。
「とても嬉しいです。みんなに感謝を伝えましたよ」と、オルティス騎手は語った。「競馬場ではライバルですが、外ではみんな友達です。お互いをリスペクトし合っています」。
オルティス騎手のキャリア初勝利は2011年1月2日、プエルトリコのカマレロ競馬場で6歳牝馬ワイルドロジックに騎乗したレースだった。同レースは、7ハロン(1,400m)のスプリントで、7,500米ドル(約112万5,000円)で出走馬が売りに出されるクレーミング競走だった。その4か月後の5月18日には、ベルモントパーク競馬場で3歳牝馬グランデロハに騎乗。1万米ドル(約150万円)のクレーミング競走を制し、これが米国での初勝利となった。
「チャンスをくださった全ての調教師とオーナーの皆さんに感謝します。彼らがいなければ、今も誰も私のことを知らなかったでしょう。ニューヨークで出会った方々に感謝を伝えたいです」と、オルティス騎手はコメントした。
そのキャリア1年目、オルティス騎手は151勝を挙げた。2015年にはシーズン300勝を達成し、以来毎年300勝以上を記録している。2024年はここまで256勝を挙げており、残りシーズンが2か月半あることを考えれば今年もその記録を超えるだろう。
キャリアハイを更新した2023年には366勝を挙げ、シーズン獲得賞金は3,900万ドル(約58億5,000万円)にのぼった。キャリア通算成績を見てみると、19,754回の騎乗で1着4,000回、2着3,387回、3着2,957回、獲得賞金は3億3,287万2,416ドル(約499億3,000万円)にのぼる。彼の通算獲得賞金額は、北米の騎手として歴代4位にランクインしている。
これまでエクリプス賞最優秀騎手賞を5度受賞しているオルティス騎手は、2017年以降の毎シーズン最多勝利騎手に輝いており、2018年、19年、20年、22年、23年には最多獲得賞金のタイトルも手にした。今シーズンはいずれにおいても首位を走っている。
ブリーダーズカップ開催では通算20勝を挙げており、その中にはBCクラシック(G1)の2勝(2019年ヴィーノロッソ、2023年ホワイトアバリオ)も含まれる。ベルモントS(G1)も2016年にクリエイター、2022年にモードニゴールで2勝を挙げている。
「イラッドは、これまで見てきた中でも最高の乗り手の1人です」と、弟でもあり騎手仲間でもあるホセ・オルティス騎手(彼自身も6月に通算3,000勝を達成したばかりである)は言う」
「毎日のように彼と一緒に乗れているのは本当に素晴らしいことです。イラッドは特別です--特別な才能を持っているんです。彼がこの13年で成し遂げてきたことは、驚異的としか言えません」。
若いキャリアで既に多くの実績を残しているオルティス騎手には、無限の可能性がある。北米騎手の歴代通算勝利数ランキングでは、ラッセル・ベイズ騎手の12,842勝という大記録がトップに君臨している。もしその記録を更新する者がいるとすれば、それはオルティス騎手だろう。
「記録を破りたいとは思っていますが、簡単なことではありません」と彼は言う。「健康な身体を維持しながら、トップであり続けなくてはいけませんから。彼(ベイズ騎手)のことをとても尊敬しています」。
By Sean Collins
(1ドル=約150円)
[bloodhorse.com 2024年10月13日「Ortiz Jr. Achieves 4,000 Wins」]