海外競馬ニュース 2024年10月31日 - No.40 - 1
ヴィアシスティーナ、コックスプレート圧勝で馬主の投資に報いる(オーストラリア)[その他]

 10月26日にムーニーバレー競馬場で開催されたコックスプレート(G1 芝2,040m)において、ヴィアシスティーナ(牝7歳 父ファストネットロック)が歴史に名を残す勝利を収めたことで、ユーロン社は長年にわたる競馬産業への巨額投資が実を結んだことを祝っている。

 1歳時にイギリスで6,751米ドル(約105万円)で売却され、その4年後にはG1勝ちの現役牝馬としてユーロン社に270万ギニー(358万米ドル, 約5億5,490万円)で購入されたヴィアシスティーナは、コックスプレートに出走した8頭のライバルたちを蹴散らし、衝撃的な形でクリス・ウォーラー調教師のもとで豪州4つ目となるG1勝利を挙げた。

 ヴィアシスティーナは道中後方を追走していたが、楽な手応えでポジションを上げながら最後の直線に差し掛かると、1番人気に推されていた日本のプログノーシスを子ども扱いするかのように抜き去った。そのままゴールまで猛然と駆け抜け、終わってみれば8馬身差の圧勝となった。

 これにより彼女はウィンクスが残したこのレースの着差の記録に並んだが、それだけにとどまらず、勝ち時計2:01.07のレコードタイムを叩き出し、それまでのレコード(ウィンクスが2017年のコックスプレートで記録した2:02.94)を大幅に更新してみせた。このタイム差は約10馬身に相当する。

 この圧勝劇は、公開調教中に緩んだバンデージと馬装具が絡まったことでヴィアシスティーナの足がもつれ、騎乗していたジェームズ・マクドナルド騎手を鞍から投げ出してしまった、あの心臓が止まるようなシーンがおきてからわずか4日後のことだった。

 マクドナルド騎手のセレブレーションは、そのような経緯と、総賞金500万豪ドル(約5億円)のレースを勝利したヴィアシスティーナの力強い走りに相応しいものだった。

 これでG1通算100勝目となったマクドナルド騎手は、50m地点で立ち上がって拳を振り上げ、そのままゴールラインを通過して雄叫びをあげたが、それによって2,000豪ドル(約20万円)の過怠金を科せられた。もし最後まで追い続けていれば、12馬身差での勝利となっていたかもしれない。同騎手も、「ウィンクスのような走りだった」と評した。

 そしてユーロン社にとっては、張月勝氏がこの10年間で世界中のサラブレッドや牧場に対し何千万ドルもの投資を行ってきたなかで最も重要な勝利となり、レース後の祝勝パーティーは夜遅くまで続くこととなった。

 ユーロン社のゼネラルマネージャーであるヴィン・コックス氏は、ANZブラッドストックニュースに対して次のようにコメントした。

 「本当に素晴らしかったです。歴史に残る勝利です。更にあの名牝ウィンクスが持っていたレコードを破ったことが、やってのけたことの偉大さを物語っています。本当に見事でした。信じられません」

 「ユーロンにとって大きな勝利になりました。張氏とそのご家族は競馬産業、とりわけオーストラリアの競馬業界に多額の投資を行い、実際にこの国で最も偉大なレースの1つを勝つことができました。驚くべきことです」。

 コックス氏は、「今回の勝利は、ユーロン社にとってこれまでのハイライトになりますか」と聞かれると、「そう言わざるをえないでしょう。世界中のカレンダーで見ても、最も素晴らしいレースの1つですからね」と答えた。

 アイルランド産ながらランドリー・コテージ・スタッドといういかにも英国的な響きを持つ牧場で英国人によって生産されたヴィアシスティーナは、ニューマーケットを拠点とするジョージ・ボーウィー調教師の管理の下、2023年7月のプリティポリーS(G1, カラ)でG1初勝利を挙げ、ユーロン社にとって高値のつくターゲットとなった。

 その後、今年3月のランヴェットS(G1, ローズヒルガーデンズ)に勝利してオーストラリアデビューを飾ると、その後1,400メートル戦のウィンクスS(G1, ランドウィック)でも勝利を収め、コックスプレートの前にはターンブルS(G1, フレミントン)も制していた。

 「私に言わせれば彼女こそ史上最高の牝馬ですが、それを言うには私はいささか彼女に距離が近すぎます。そこの判断は皆さんにお任せしたいと思います。私たちはただ、彼女が緑と白の勝負服でこのようなレースを圧勝するのを見てただ感激しているのです」と、コックス氏は言う。同馬の獲得賞金は670万豪ドル(約6億7,000万円)を超え、また今年種牡馬を引退した父ファストネットロックの産駒としては初のコックスプレート勝馬となった。

 コックス氏によれば、ヴィアシスティーナの次走はまだ決定していないという。コックスプレート勝馬のローテーションとしては、11月9日に行われる総賞金300万豪ドル(約3億円)のチャンピオンズS(G1, フレミントン)がしばしば選択されるが、同馬はメルボルンC(G1)にも登録しており、コックス氏は「あらゆる可能性を検討したい」とコメントした。

By Trevor Marshallsea

(1ドル=約155円)

(1豪ドル=約100円)

[ANZ Bloodstock News 2024年10月26日「Via Sistina Produces Cox Plate Performance for the Ages]