海外競馬ニュース 2024年12月03日 - No.45 - 1
新進気鋭のスプリンター、カーインライジングが国際舞台に登場(香港)[その他]

 香港は近年、常に世界トップクラスの競走馬を発掘している。(マイル部門では)ゴールデンシックスティがビューティージェネレーションに続いて頭角を現し、同じ頃、強豪ぞろいのスプリント部門においては、ウェリントンがラッキースワイネスに道を譲った。カリフォルニアスパングルは常に有力馬として健在で、そして国際的な勝利を挙げているロマンチックウォリアーはその頂点に君臨している。
 香港で創り出されるトップラスの馬の数は、わずか1300頭という香港の馬の頭数にはまったく不釣り合いなものである。そしてはっきり言って信じられないことだが、今私たちは12月8日(日)の香港国際競走で新たなメガスターが誕生するのを待ちわびている。

 その名はカーインライジング(せん4歳)。これまで10戦8勝、目下7連勝中の同馬は、香港スプリント(G1)を意のままに操ろうとしており、名馬サイレントウィットネスやセイクリッドキングダムに続く香港スプリント界のセンセーションとなりそうだ。
 カーインライジングは最近(香港スプリントの前哨戦である香港ジョッキークラブスプリント(G2)で)、セイクリッドキングダムが持っていたシャティン競馬場での6ハロンのコースレコードを17年ぶりに塗り替えた。それも、ザック・パートン騎手が最後は手綱を緩めながら観客に向かってキスをするという完勝ぶりであった。

 カーインライジングを管理するのは、オーストラリアの殿堂入り調教師デヴィッド・ヘイズ氏である。ヘイズ氏は、香港の主要競走だけでなく、メルボルンカップ(G1)、ジャパンカップ(G1)、そして母国の多数のG1レースにおいても、勝馬を送り出してきた。ヘイズ氏は現在香港で2度目の調教師生活を送っており、これまでに累計600勝以上を挙げている。
 ヘイズ氏は、わずか10戦しかしていない段階でカーインライジングのようなレベルの能力を発揮する馬を手がけたことはないと話す。「この段階で彼が見せているポテンシャルは、私がこれまで調教したどの馬よりも高いものです」。
 この評価は非常に名誉なことである。なぜならヘイズ氏はこれまでに、ゴールデンスリッパーS(G1)勝馬ミスフィンランド、トップスプリンターのレッドカークウォリアーおよびニッコーニ、そしてフレミントン競馬場の1,000メートル(直線)のコースレコードをブラックキャビアに破られるまで保持していたロバート・サングスター氏所有のスペシャルを調教してきたからだ。

 ヘイズ氏は、カーインライジングが並外れた馬である理由は何なのか、知りたかったと話し、それは全てこの馬の加速の仕方に関係していると説明する。「彼はいわゆる "エクストラアクション"を持っています。ブラックキャビアやウィンクスと比べるつもりはありませんが、彼らのように脚を伸ばすことが出来ます。しかしカーインライジングは、加速が80パーセントからトップギアになるまでに、彼らとも違った動きをするのです」
 「カーインライジングの歩幅の伸ばし方は際立っています」とヘイズ氏は続ける。「それ以外にも、彼はとても素直な馬で、困難にぶつかっても必ず立ち向かいます。例えば、3歳時に古馬相手に135ポンド(約61キロ)を背負わされて外枠から発走した時も、私はとても心配していましたが、彼は簡単に克服してしまいました」
 「発走直後から強めに乗れる珍しい馬で、ザックもよくそのように乗っています。しかし、ザックの導くとおりレース中盤では見事にリラックスできるので、ゴール前で素晴らしい末脚を発揮するための力を残すことができます」。
 パートン騎手はカーインライジングを「完璧な走りを見せる馬」と評し、「彼がレースでいとも簡単に完ぺきな走りを見せるのは恐ろしいことです」と付け加えた。

 カーインライジングはニュージーランドで生産され、ヘイズ一家の厩舎および調教事業体でもあるリンゼイパークが購入した。リンゼイパークは、メルボルンから車で約2時間、ビクトリア州北東部の魅力的な田舎町、ユーロアにある。
 シャムエクスプレス(父の父ラストタイクーン)の産駒である同馬は、馴致後ユーロアで初期調教を受け、その後、調教パートナーシップを組んでいるヘイズ氏の3人の息子たちによって本格的な調教が行われた。

By JA McGrath

[thoroughbredracing.com 2024年12月1日「Ka Ying Rising: JA McGrath on the new Hong Kong sprint sensation stepping out onto world stage」]