インターネット賭事業者の免許制とオンライン博戯調査を要求する連邦法案は、速やかに解決に向かうとは思えない事態をいっそう複雑にする可能性がある。
この法案は、賭博のクレジットカード決済を禁止する2006年インターネット賭博禁止法(Unlawful Internet Gambling Enforcement Act of 2006:UIGEA)を受けて提出された。マサチューセッツ州選出のバーニー・フランク(Barney Frank)民主党連邦下院議員は、4月に議会に同法案を提出した。この法案は、インターネット賭事業者の免許制を定め、この免許保持者とクレジットカードで決済することを認める一方で、各スポーツ連盟が運営する競技を対象に行うインターネット賭事に対しそれを禁止する権限を当該スポーツ連盟に与えるものである。
他方、アメリカ最大の賭博州であるネバダ州選出のシェリー・バークリー(Shelley Berkley)民主党連邦下院議員は、UIGEAの影響など、インターネット賭博について調査を要求する法案を5月初めに議会に提出した。インターネット賭博の調査は、米国科学アカデミー(National Academy of Sciences 著名な学者で構成される科学諮問機関)によって行われることとされている。
5月3日にレキシントンで開かれた馬関係法全国会議(National Conference on Equine Law)で、パリミューチュエル産業に関係するインターネット賭博の問題が討議された。全米サラブレッド競馬協会(National Thoroughbred Racing Association)の法律顧問である弁護士ロバート・ペンチナ(Robert Penchina)氏によると、UIGEAは民間企業に対する過大な規制権限を政府に与えているというのがフランク議員の主張だ。同氏によると、フランク議員が提出した法案は、UIGEAの廃止を要求しているわけではなく、むしろインターネット賭博が規制・課税されることを目指している。
UIGEAは、競馬賭事のためのインターネット使用について、適用除外している。適用除外は、州間競馬法(Interstate Horseracing Act: IHA)の規定を引用する形がとられている。連邦司法省(U.S. Department of Justice)の意見は異なっているが、ペンチナ氏は、「議会がUIGEAを制定したのは、アカウント賭事(口座を利用したインターネット投票)が競馬 産業にとって重要であることを認めたからです」と述べた。
同氏は、「他の政府機関と異なり、議会は競馬産業の重大性と重要性を理解しており、また競馬産業の中心的場所は“電話線”によって賭事が行われている所であることを理解しています。IHAは、紛争を解決するために利用されるだけでなく、パリミューチュエル競馬産業を積極的に促進しています」と語った。
米国は、世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)と争っている。WTOは、米国はすでに貿易協定を締結して自由化約束をしているのだから、インターネット賭博を開放すべきであると裁定した。アンティグアなどの外国がWTOを通じて損害賠償を要求してくるおそれがある。米国政府は、そもそもインターネット賭博の自由化約束をする意図はなかったと主張している。つまりインターネット賭博はサービス貿易協定外であるという主張である。
バークリー氏は、「UIGEAは時代に逆行するものであり、インターネット賭博を止めさせることはほとんど不可能であると確信しています」と述べている。UIGEAが可決される前、何人かの議員は、賭博に関するクレジットカード決済を禁止することでインターネット賭博を非合法化するのではなく、インターネット賭博を規制しながら課税するほうが良いと提唱した。
バークリー法案(フランク氏を含め下院に数多くの共同提案者がいる)は、インターネット賭博産業を合法化し、免許制により規制して課税した場合生み出される租税収入を推計することを提案している。同法はまた、インターネット賭博をめぐって米国とWTOの間で継続中の争いは、「世界中の関係当事者に対して悪影響を及ぼすおそれがある」と述べている。
By Tom LaMarra
〔The Blood‐Horse 2007年5月19日「NEW LEGISLATION MUDDLES INTERNET INTERNET GAMBLING PICTURE」〕