カリブ海に浮かぶ島国アンティグア・バブーダ(Antigua and Barbuda)は7月23日、アメリカが世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)のインターネット競馬賭事にかかわる裁定を遵守していないことを理由に、同国に対して34億ドル(約4,080億円)の制裁金を科すようWTOに求めた。
アメリカの貿易当局者は、アメリカに対する制裁を求めるアンティグア・バブーダに異議を申し立て、1994年のWTO協定に基づく義務からオンライン賭博を除外する手続を行っていると述べた。
AP通信社(Associated Press)によると、アメリカはアンティグア・バブーダが要求している制裁金は、“明らかに過大である”と述べている。
WTOの上級委員会は、州間競馬法(Interstate Horseracing Act: IHA)は外国の勝馬投票運営業者を差別していると2005年に裁定した。同法を違法としている理由は、アメリカ国民がコンピューターや電話を利用して勝馬投票を行うことを認めているが、勝馬投票運営業者をアメリカに本拠を置く業者に限定しているためである。
アンティグア・バブーダのマーク・メンデル(Mark Mendel)弁護士は、同国はかつて全労働人口の約10%に相当する3,000人超を雇用するインターネット賭事運営会社100社の本拠地であったと述べている。
同弁護士によると、違法インターネット賭博禁止法(Unlawful Internet Gambling Enforcement Act: UIGEA)が昨秋発効して以降、インターネット賭事運営会社の数は約30社に縮小し、被雇用者の人数は約1,000人に減少した。
ジョージタウン大学ローセンター(Georgetown University Law Center)の国際取引法専門家ジョン・ジャクソン(John Jackson)教授は7月25日、アメリカはサービス貿易に関する一般協定(General Agreement on Trade in Services: GATS)におけるコミットメントからインターネット競馬賭事を含む賭博全般を撤回することになるだろうと述べている。
同教授は、ワシントンのケイト研究所(CATO Institute)で開かれた政策フォーラムにおいて、「アメリカは、2つの選択肢を持っていました−私は今でも持っていると考えますが−。第1の選択肢は、アメリカが競馬における差別を廃止することです。具体的には、アメリカがインターネット競馬賭事活動の土俵を平等にするために、インターネット勝馬投票に関する海外賭事業者の活動を許可するか、さもなければ国内における同様の活動を禁止することです。アメリカはいずれの方法によって今でも問題を解決することができます。これらの方法は、長い目で見れば問題を解決する最善の方法だと思われます。アメリカの主張は、私の理解では、UIGEAに関して司法省はすでにそのような解釈をとっているということです。これはかなり難しく、分かりにくい問題です」と述べた。司法省は、IHAが1961年電信法(1961 Wire Act)に違反していると長年にわたり主張してきた。
ジャクソン教授の提示する第2の選択肢は、アメリカがGATSで行った競馬に関するコミットメントを撤回し、補償の交渉を行うことであろうと理論づけている。
同教授は、「今後の取り組みは、提示されている莫大な補償要求額に比較して最小限のものになる可能性が強いと思います。なぜなら、補償は競馬の問題のみに関係するのはほぼ間違いないからです」と述べている。
By Jeff Lowe
(1ドル=約120円)
〔Thoroughbred Times 2007年8月4日「Antigua and Barbuda seeks sanctions against the U.S」〕