アーリントンパーク(Arlington Park)競馬場は12月7日に、伝統的なダートコースを放棄して人工馬場を敷設すると発表した。これにより同場はチャーチルダウンズ(Churchill Downs Inc.)社が所有する競馬場では同競馬場が最初に人工馬場を導入することになる。
人工馬場は既にターフウェイパーク(Turfway Park: 北米で初めての人工馬場)、キーンランド(Keenland)、ウッドバイン(Woodbine)、およびハリウッド(Hollywood)の各競馬場で使用されている。アーリントン競馬場にどのメーカーのものを採用するかまだ決めていないが、7〜10日間程で最終的な視察と協議を終えて最終決定がなされるだろうと述べた。
競馬場のロイ・アーノルド(Roy Arnold)社長は、クッション・トラック(Cushion Track)走路の視察のためにハリウッドパーク競馬場へ、また秋からポリトラックを使用しているキーンランド競馬場へ視察のために赴いたと語った。アーリントン競馬場はマイケル・ディキンソン(Michael Dickinson)調教師が考案したタペタ・フッティングス(Tapeta Footings)の敷設も検討している。
シカゴの中心地での記者会見における冒頭の挨拶で、「我々は置き去りにされるつもりはありません。我々は先駆者なのです」とアーリントン競馬場のリチャード・ダチョソワ(Richard Duchossois)会長は述べた。
アーリントン競馬場は既存の主要馬場(ダート)の改修作業をすでに開始した。馬場の基礎は人工馬場が敷設される前に取り替えられねばならず、この部分も工事が始まっている。アーリントン競馬場によれば、新しい馬場は2007年4月1日までに完成する。これは5月4日に開始する2007年度競馬開催の約1ヶ月前である。
同場は、プロジェクトの費用は最大1000万ドル(約11億5000万円)であるとし、どの人工馬場を選ぶかによってこれより少なくなるかも知れないと述べた。アーノルド社長は、プロジェクトの資金はアーリントン競馬場およびチャーチルダウンズ社が賄うとし、アーリントン競馬場が財政援助を州議会に要請するかも知れないという憶測を否定した。このプロジェクトのための資金調達はチャーチルダウンズ社の役員会で承認される必要があった。イリノイ州サラブレッド・ホースメンズ協会(The Illinois Thoroughbred Horsemen’s Association)は、既に路面の交換を承認している。
人工馬場は馬にとってより安全だと広く歓迎されている。その結果、出走頭数が増え、理論上当該競馬場の馬券売上も増えることになる。そして人工馬場への動きは、アーリントン競馬場にとってタイミングも良い。同場は大事故が多発したため、2006年競馬開催期間中に批判を浴びたからである。
アーノルド氏は、事故がきっかけとなってアーリントン競馬場で人工馬場について真剣な検討が行われたことを認める一方で、2006年のダートコースは安全であったと主張した。それでも同氏とケヴィン・グリーリー(Kevin Greeley)競走担当は12月8日に、夏に多発した大事故を依然として重視する地元のテレビ局と新聞・雑誌社のジャーナリストから質問攻めにあった。
実際2006年の事故率はこれまでの水準内に収まり、馬場も数回にわたり点検したが、特別に問題は見つからなかった。しかし、アーリントン競馬場はシカゴ市場で打撃を被り、入場者は減少した。
チャーチルダウンズ社が所有する他の競馬場もアーリントン競馬場に続くかどうかはまだ明らかではない。
アーノルド氏は以下のように語った。「アーリントンに最初に人工馬場を導入することは、我々が現在おかれている環境を見て決定しました。ここで人工馬場に熟達したら、CDIのネットワークを通じてその知識を外部に伝えることができると考えています。どのくらい時間が掛かるかは分かりません」。
ターフウェイパーク競馬場はウッドバイン競馬場と同じく、ポリトラック馬場の維持・管理について問題に遭遇した経験がある。ハリウッドパーク競馬場のクッション・トラックも最近馬場の維持・管理の問題に遭遇した。アーノルド氏は、アーリントン競馬場の移行は円滑に進まないかも知れないと言っている。
「ゼロの状態から始めるのわけではありませんが、研究しなければならないことがいくつかあります。重要なのは維持・管理についてです」と社長は語った。
By Marcus Hersh
(1ドル=115円)
[Daily Racing Form: 2006年12月9日 「Synthetic surface to be installed by spring」]