1985年凱旋門賞において、長い審議の後、裁決委員はサガス(Sagace)を失格にすることを決定した。その理由は、エリック・ルグリ(Eric Legrix)騎手がクビ差で1着入線したものの、レインボークエスト(Rainbow Quest)の走行を妨害したからである。ロンシャン競馬場ではもう少しで暴動が起きるところだった。この裁決をめぐって論争が巻き起こったので、フランスギャロ(France Galop)の規定・裁決委員部門のオリヴィエ・ドマレルブ(Olivier de Malherb)課長は、走行妨害に関する規定の解釈を作成するに至った。それは、基本原則(裁決委員は、ある馬の動作によって他の馬がより上位となる着順を得るチャンスに影響を与えた場合、これを容認しない)を維持することである。現在では“着順に影響を与えなかった確実性”がなければならないとした。つまり、“この場合のみ、加害馬の降着が宣言されない”とされた。
本年の凱旋門賞では3着までに入る争いをしていたザンベジサン(Zambezi Sun)が直線の半ばで後方に下がり、ソルジャーオブフォーチュン(Soldier of Fortune)は最後の直線で前をふさがれ3着馬に半馬身差の5着となった。もし審議が上記の考え方によって行われていたなら、裁決委員はたとえディラントーマス(Dylan Thomas)の進路変更がなかったとしても、この2頭がより上位の着順に入れなかったと確信していると言える。裁決委員の専門的な意見に頼ることなく、疑いをかけることは可能だ…。しかし、だからといって裁決委員が過ちを犯したということにはならない。スポーツ精神は尊重され、最良馬が勝ったのである。裁決内容を概ね是認するものであるが、専門家の意見はまちまちであり、このことからみて、フランスの現行規定が再検討されるものと思われる。たとえそれがとりあえずヨーロッパ競馬界における判定方法の一致を図るためであろうと…。
By Christophe Ugnon-Fleury
[Paris Turf 2007年10月9日「Billet−De Sagace à Dylan」]