海外競馬情報 2007年11月30日 - No.23 - 5
セリの公正基準に関する勧告案(アメリカ)【生産】

 セリ取引公正特別委員会(Sales Integrity Task Force: SITF)は、セリ規約の変更を通じて、ケンタッキー州のセリ業界に自らを律するよう勧告することになった。

 SITFは、勧告を行うことを10月15日にレキシントンのケンタッキー州セリ会場で開催された公開フォーラムで発表した。勧告案には、セリの45日前からアナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)の投与禁止、サラブレッド売買仲介者に適用される行動規範ならびに上場馬の所有者および治療履歴の任意情報開示が含まれている。

 SITFは、3つの小委員会を設置して非公開で会合を開き、ケンタッキー州の議員に定期的に最新情報を提供している。SITFの勧告は、10月31日までに民間意見が募集され、11月上旬までにまとまる予定である。

 サラブレッド馬主・生産者協会(Thoroughbred Owners and Breeders Association)のダン・メッツガー(Dan Metzger)会長は、「SITFが5月に召集されて以降、セリ業界がセリの透明性と公正基準を向上させ、拡大させるために一丸となって努力をしているのを目にしてきました。この努力によって、買い手と売り手の双方が団結して関連する問題に取り組み、セリ業界の繁栄のために必要な措置を勧告することが可能となりました」と述べている。

 36人のメンバーからなるSITFは、2004年に設置され、ケンタッキー州議会に提出され法案に対応するために今年2月に改組された。この法案は、上場馬の完全な治療履歴と所有者名に関する情報の開示を要求しており、ストーンストリート牧場(Stonestreet Farm)の所有者であるジェス・ジャクソン(Jess Jackson)氏が支持している。

 ジャクソン氏はSITFのメンバーだが、勧告案の最終決議に出席せず、また10月15日の記者会見にも姿をあらわさなかった。同氏は声明を発表して、SITFの勧告は十分に意義のあるものでなく、"大幅でかつ執行可能な改革"を網羅していないと批判した。

 同氏は、とりわけ治療履歴小委員会(medical condition subcommittee)が肢勢矯正手術の情報開示を要求しなかったことを強く批判している。SITFの勧告案では、肢勢矯正手術に関する情報の開示は、売り手の任意で行うとしている。

 10月15日の公開フォーラムにおけるSITF勧告に対する全体的な評価は、ジャクソン氏の反応よりも肯定的であった。

 テイラーメード・セールズ・エージェンシー(Taylor Made Sales Agency)の公開セリ担当副社長マーク・テイラー(Mark Taylor)氏は、SITFの勧告はバランスがうまく取れていると述べている。

 同氏は、「現在のセリ制度は、数十年間申し分なく機能してきました。完璧だと言うつもりはありませんが、根底から改める必要はないと考えています。ただ、時代のニーズに合わせて改善することと、買い手の利益に留意することが必要です。私たちが買い手のことを考慮し、満足させるべく努力していることを分って頂きたいのです」と述べている。

 SITFの勧告によると、買い手はセリ落とした際にアナボリック・ステロイドの検査を要求できるようになる。検査の費用は買い手が負担するが、アナボリック・ステロイドが検出された場合、買い手は取引の無効を要求することができる。ただし、検査結果は公表されない。

 ジャクソン氏はサラブレッド売買仲介者の免許の必要性を強く要求していたが、SITFはセリ会社のための行動規範を提案している。この行動規範では、サラブレッド売買仲介者には、500ドル(約6万円)を超える支払または利益を得た場合は、委託者にこれを開示することを要求している。

 行動規範に盛り込まれた項目の多くは、すでにケンタッキー州法に定められている。同法は、取引金額および双方代理(サラブレッド売買仲介業者が買い手と売り手の両方を代理すること)について完全な情報開示を要求している。ただし、新たな行動規範の草案では、セリ会社に対し、違反者をその後のセリから排除することを求めている。このケンタッキー州法は、ジャクソン氏によって支持され2006年に可決された。

 初回の違反に対する処罰は、最長2年間のセリ参加禁止であり、2回目の違反は最長5年のセリ参加禁止となり、また3回目の違反があった場合は、セリに参加することを永久に禁止される。

 上場馬の所有者に関する透明性の領域では、セリ会社が登録簿を設け、その中で売り手が所有者名を任意で開示できることになっている。

 登録簿の閲覧は、承認を受けた買い手のみに限られ、閲覧した買い手は登録簿に記載されている情報について守秘義務がある。報道機関と見物人は、登録簿に記載されている情報を閲覧できない。

 登録簿またはセリカタログに虚偽の所有者情報を提供した者は、最終取引価格の50%を買い手に支払う義務を負う。また、コンサイナーは手数料の最高2倍の金額を支払う義務を負う。

 ワレンデール・セールズ社(Warrrendale Sales)のコンサイナーであるキティー・テイラー(Kitty Taylor)氏は、所有者および上場馬の仕上げを行う人々によって提供された情報に関してコンサイナーに責任を求めるのは不公平であると懸念を表明している。

 同氏は、「関係するすべての馬主に上場馬の所有者としてセリカタログに記載するよう促したいと思います」と述べている。

 SITFは、馬の本当の肢勢を隠蔽する前膝への注射を禁止することを求めており、またケンタッキー州外のセリ会社が類似の禁止行為リストを採用することを希望している。

By Pete Denk
(1ドル=約120円)

〔thoroughbredtimes.com 2007年10月15日「Sales Integrity Task Force releases recommendations」〕