馬の体内を循環している血液量と競走能力の間に関係があるのだろうか。ディーン・ハウスホルダー(Dean D.Householder)博士は、馬の血液量を測定する検査方法を開発した。同博士によると、馬のバイヤーが若馬のグループから競走能力が最も低そうな馬を除くためにこの検査方法を利用することができるということだ。
同博士がケンタッキー大学動物科学部の準教授であった1960年代にスウェーデンで行われたある研究からこの検査方法を思いついた。この研究は、スタンダードブレッド(トロッター)を使って、馬の血液量と運動能力との間に正の相関があることを明らかにした。
ハウスホルダー博士は、レキシントンのBET Labs社のロバート・ダグラス(Robert Douglas)博士と協力し、サラブレッドについて血液量を調査した。両博士は、2002年にケンタッキー州で171頭のサラブレッド1歳馬の血液量を 測定し、その後3歳の出走年齢までこれらの馬を追跡した。総血液量が平均より少ない馬は、競走成績が明らかに劣っていた。換言すると、1歳のときに総血液量が平均かまたは平均より多い馬は、総血液量が平均を下回る馬に比較して、ステークス競走勝馬となる可能性が3倍も多く、獲得賞金が2倍を超えた。
同じような傾向は、引退馬を使って行われた別の調査でも見られた。どちらの調査においても血液量が下位20%に属する馬の能力は低かった。
ハウスホルダー博士の検査方法は、馬の静脈内にエバンス・ブルー(Evans blue:青緑色の染料の1つで血液内で血漿アルブミンと堅固に結合し徐々に排泄される。血漿・染料・ヘマトクリット法による総循環血液量の測定に利用される。)と呼ばれるマーカーを静脈注射投与する。注射から15分後に採血し、ラボで処理し、血液量を推計する。
調査・コンサルティング会社であるサラモーション社(Thoroughmotion)の社長を務める同博士は、「この検査方法は、非常に簡単でかつ安全です」と述べている。
同博士によると、BET Labs社はこの検査キットを50ドル(約6,000円)で獣医師に販売している。獣医師は顧客に対し100ドル(約1万2,000円)ないし125ドル(約1万5,000円)を請求していると同博士は考えている。
同博士は、この検査は馬のバイヤーのほか生産者にも役立つと述べている。この検査は、生産者がどの若馬を持ち続けるか、またどの馬を売却するかを決定するのに役立ち、あるいは生産者が1歳馬の最低売却価格をいくらに設定するかを決めるのに役立つ可能性がある。
ハウスホルダー博士によると、推計血液量は馬によって3リットル以上も異なることがある。血液量は、酸素を運ぶ馬の能力に影響するため重要である。馬の体内にある赤血球の量が多ければ多いほど、馬の体組織へ運ばれる酸素の量が多くなる。また、赤血球が多いことは、疲労をひき起こす老廃物の除去がより効率的になる。
(1ドル=約120円)
By Deirdre B. Biles
〔The Blood-Horse 2007年1月6日「Blood Volume」〕