海外競馬情報 2007年03月09日 - No.5 - 2
国際間移動の問題点(国際)【開催・運営】

 世界を股にかけて活躍しているアイルランドの最も著名なダーモット・ウェルド(Dermot Weld)調教師は、1月22日、より多くの競走馬の国際交流を促進するために、多くの競馬統括機関が検疫条件を改善し、統一すべきだと主張した。

 ウェルド調教師はメルボルンカップに2勝し、アメリカの三冠レースの1つにも優勝しているが、検疫条件は競走馬を海外に遠征させる際の重要な要素の1つだと考えている。

 同調教師は、ドバイには素晴らしい施設があり、どの国よりもすばらしいと述べた。その一方で、自身が成功を納めたオーストラリアに対しては強く批判した。彼は、オーストラリアの検疫条件は改善されてきているが「検疫期間は未だに1ヵ月もかかり、さらなる短縮は可能である」と付け加えた。

 ウェルド調教師は、もう1つの重要な問題点として許容薬物に関する各国の競馬規則の差異を挙げた。同調教師は、「私は厳格なルールに賛成ですが、調教師は国ごとのルール、アメリカでは州ごとのルールを承知していることが重要です」と語った。

 同調教師は大事なのは馬であるとして、最高レベルの競走に出走するだけの能力がなければならないし、馬場に適応でき、競走に適した気性を持ち、健康でなければならないと言った。そして「馬が健康でないのに遠征させて、レース当日の状態の改善を願っても無駄です」と語った。

 オーストラリアの検疫問題や多くの競馬国における薬物問題が、後で行われた“馬の移動に関する会議”で再び取り上げられた。この会議では、ニューマーケットのインターナショナル・レーシング・ビューロー(International Racing Bureau)社の競馬場業務担当理事のエイドリアン・ボーモント(Adrian Beaumont)氏から国際シリーズ競馬が直面している問題点が挙げられた。

 ウェルド調教師の主張を支持して、ボーモント氏は、2月3日ムーニイ・ヴァレー(Moonee Valley)競馬場で施行されるグローバル・スプリント・チャレンジ(Global Sprint Challenge)の開幕レースにヨーロッパ馬が参加しようとすれば12月28日までに検疫を開始しなければならなかっただろうと語った。

 同氏はさらに「競馬主催者が検疫期間を短縮するようオーストラリア政府を説得できなければ、検疫期間が他レースの日程と重なるため、オーストラリアのレースをシリーズの開幕戦以外の時期にもってくることは難しい」と付け加えた。

 薬物についてボーモント氏は、昨年テイクオーバーターゲット(Takeover Target)がレース前の薬物検査で不合格になったためグローバル・スプリント・チャレンジの最終レースに出走できなくなった事は、海外遠征の主要問題の1つであることを浮き彫りにしたと述べた。すなわち、国により許容薬物が異なっているという点である。同氏は「確かに、すべての競馬統括機関は、国際シリーズ競走に同じ基準の薬物規制をすることを検討する時期です」と付け加えた。

 前述の馬を移動させる際のような問題点と7年間続いたワールド・シリーズの終焉にもかかわらず、香港のジョッキークラブ、マーク・プレイヤー(Mark Player)国際担当理事はグローバル・スプリント・チャレンジやアジア・マイル・チャレンジズ(Asian Mile Challenges)のようなシリーズ競馬を実現させる機会はまだあると主張した。

 同氏は、ロイヤルアスコットでの2レースを含むスプリント・シリーズは「素晴らしいスタート」をきったと言い、「それはシリーズ競馬の共同出資者が設定した目標すなわち国際的な競走を促進し、馬主や調教師が具体的なレースをターゲットとすることを奨励し、世界的ブランドを作り上げるという目標にはっきりと応えています」と付け加えた。

 しかしながらプレイヤー氏は、現在我々は国際シリーズを成功させる岐路に立っており、検疫の障壁、ルールや禁止薬物の統一、馬主と調教師の経済主義に対する対応、スポンサー収入の最大化、発売金合算方式の推進といった重要課題が検討されるべきであると述べた。

By Howard Wright

[Racing Post 2007年1月23日「Weld says quarantine terms must be revised to promote global competition」]