海外競馬情報 2007年03月23日 - No.6 - 2
裁決ルールの不一致は国際共同プール拡大の抑止要因となる(アメリカ)【開催・運営】

 ドバイで開催されたアジア競馬会議のビジネスセッションで、アメリカの各競馬管轄区の競馬開催執務員が根本的なルール違反についていかに異なる解釈をするのかを目の当たりにした。

 好事例:ニューヨーク競馬協会(New York Racing Association)の競馬場で執務するジョッキークラブ裁決委員のテッド・ヒル博士(Dr. Ted Hill)などの世界各国の裁決委員たち(the International Panel of Stewards)は北カリフォルニアのゴールデンゲートフィールズ(Golden Gate Fields)競馬場での以下の走行妨害について検討を行った。

 レースで、1位入線馬Aは2位入線馬Bの走行を妨害し、Bは3位入線馬Cの走行を妨害した。

 ゴールデンゲートの裁決委員は当初の入線順位A-B-Cを、AがBを妨害したのが引き金となっているにもかかわらず、BがCを妨害したと判断しCの後位とした。すなわち着順をA-C-Bと変更した。

 十数名の各国裁決委員のうち、この裁決に賛成した者は1名だけで、他は変更着順はC-B-Aとすべきであると反対した。ヒル博士はこのレースの走行妨害について、パネルで議論したアメリカの裁決委員がゴールデンゲートの裁決委員だったならC-B-Aと裁定しただろうと語った。

 このビジネスセッションの目的はアメリカ人の思考力をけなすことではなく、競馬管轄区によって裁決委員の決定に一貫性がなく、これがサイマルキャスト時代にはファンや馬主に混乱が生じかねないという点を強調することにあった。裁決ルールが一貫性に欠けることは、不統一な薬物規制と全く同様に、国際共同賭金プールの拡大を妨げる要因となるおそれがある。換言すれば、Y国の競馬の裁決委員がX国と異なった規程解釈をし、あるいはX国では禁止されている薬物の使用をY国で認められる場合、はたしてX国の競馬ファンはY国のレースの馬券を買うだろうか。

 世界各国の裁決委員たちは問題があることを認めている。メンバーの1人は、「これまでルールの統一化の問題への取り組みが不十分だったのは明らかです」と語った。前述のヒル博士は2005年設立の競馬開催執務員認定プログラム(Racing Officials Accreditation Program: ROAP)と呼ばれる裁決・決勝審判諮問委員会(Stewards/Judges Advisory Committee)の委員長である。ROAP会長兼ヴァージニア州競馬委員会(Virginia Racing Commission )のスタン・バウカー(Stan Bowker)事務局長は「サイマルキャストで馬券が発売されているので、裁決や決勝審判が一貫性を持つことが、かつてないほど重要になっています。審判の一貫性は他のプロスポーツでも要となっています。我々は、裁決委員や決勝審判委員の事案処理がどの競馬場でも同様であるならば、より良いファンサービス になるだろうと信じます」と述べた。

 現在、ルールの一貫性を保つという点でファンサービスに欠けている。ゴールデンゲート競馬場やガルフストリーム(Gulfstream)競馬場の裁決の相違と同様に、フランスやイギリスでも走行妨害について異なった解釈をすることもあり得る。

By Ray Paulick

[the Blood-Horse 2007年2月17日「 What’s Going On Here Consistently Inconsistent」]