毎年10月にウッドバイン競馬場で開催されるカナディアン国際S(G1 芝1マイル4ハロン−約2,400 m)[総賞金200万カナダドル(約2億1400万円)]は、国際競走として由緒ある伝統を誇っている。ヨーロッパの調教師は2000年以降、開催ごとに少なくとも4頭の馬を出走させており、過去10年間で同競走に出走した北アメリカ馬と外国馬の比率は、63対37である。マイク・ド・コック(Mike de Kock)調教師が、昨年南アフリカ調教馬として初めて同競走に送り出したオラクルウェスト(Oracle West)は5着に入った。
2006年コリアーヒル(Collier Hill)はカナディアン国際Sに優勝し、ダリア(Dahlia)、オールアロング(All Along)およびシングスピール(Singspiel)といった馬に続いて、ヨーロッパ調教馬として17頭目の優勝馬となった。同競走がヨーロッパ調教師の間で人気がある理由は、第1に、交付される高額賞金(2007年の優勝賞金は、120万カナダドル−約1億2480万円)に加えて、これら調教師が過去10年間で同競走に参戦させた37頭のうち、19頭が優勝しているか、または入着しているという事実にあると思われる。
第2の理由は、ウッドバイン競馬場が支給する輸送補助金である。同競馬場は、ヨーロッパからトロントまでのチャーター機を手配し、片道の旅費を負担している。加えて、外国参戦馬が競走で収得した賞金額が4万カナダドル(約428万円)に満たなかった場合は、輸送補助金が支払われる。またすべての馬主、調教師および騎手に対してホテル代が支給される。
ウッドバイン競馬場はまた、カナディアン国際Sと同時に行われる一定の競走に出走する外国馬に対しても奨励金を支給している。E.P.テイラー S(CAN-G1 芝1マイル2ハロン−約2,000 m)およびニアークティックS(CAN-G2 芝6ハロン−約1,200 m)に出走する馬の関係者にホテル代が支給される。また3万カナダドル(約321万円)と2万カナダドル(約214万円)の賞金(奨励金)が各々のレースに保証されている。さらに、9月に開催されるウッドバインマイルに出走する馬の関係者に対してはホテル代が支給される。
E.P.テイラーS[賞金総額100万カナダドル(約1億700万円)]は、ヨーロッパの調教師の間で人気がある。ヨーロッパの調教師は、過去10年間で同競走の出走馬の約29%を出走させ、当該期間に優勝馬を5回輩出している。ウッドバインマイルの賞金総額は、E.P.テイラーSと同額であるが、国際競走としての歴史は浅い。1998年にウッドバインマイル(CAN-G1 芝)が創設されて以降、北アメリカ以外の調教馬で同競走に優勝した馬はおらず、過去10年間で12頭のヨーロッパ調教馬が同競走に挑戦したが、優勝を果たしていない。
ニアークティックS(CAN-G2)[賞金総額50万カナダドル(約5350万円)]で優勝した外国参戦馬はまだいないが、同競走は今でもヨーロッパから1頭または2頭以上の馬を呼び寄せている。
カナダ関係者の見解
ウッドバイン・エンターテインメント・グループ(Woodbine Entertainment Group)の競走役スティーヴ・リム(Steve Lym)氏は、「ウッドバイン競馬場のどの競走も、国・地域を問わず、世界の最高馬の参戦で大いに盛り上がります。我々の希望は、外国調教馬が出走できる重賞・特別競走に世界中から可能な限りの最高馬を呼び寄せることです。しかし、出走馬が国内馬であるか、外国馬であるかにかかわらず、ウッドバイン競馬場で最高級の競馬を施行することが最大の課題です」と述べている。 |
(1カナダドル=約107円)
[Pacemaker 2008年6月「Have horse, will travel」]
次号(15号)には「欧州から見た世界の国際競走(ドバイ)(香港)」を掲載