サラブレッドの世界にも無敗競走馬がおり、ファンは特別な思い入れを持っている。
今週、弊誌は、北米の類いまれな牝馬2頭を取り上げた。異なる経歴を持ち、競走のレベルは雲泥の差ではあるが、2頭には大きな共通点がある。それはこれまで無敗であるということである。
そのうちの1頭はゼニヤッタ(Zenyatta)で、同馬は4つのG1競走を優勝し、関係者が1月のエクリプス賞年度代表馬の受賞を期待している。他の1頭は今週号の表紙を飾っているペッパーズプライド(Peppers Pride)である。同馬は平凡なの血統で、出生地のニューメキシコ州以外のレースには出走したことがない。しかし、18回の出走で全て優勝記念写真に納まったのだ。
ペッパーズプライドは11月9日ニューメキシコカップ・フィリーズ&メアズSを制して18連勝を達成し、近代サラブレッド競馬の記録を伸ばした。これまでの記録は、三冠馬サイテーション(Citation)、2回年度代表馬に選ばれたシガー(Cigar)、サンタアニタダービー勝馬ミスターフリスキー(Mister Frisky)、ルイジアナ州生産・調教のハロウドドリームズ(Hallowed Dreams)らが持っていた17連勝であった。
ペッパーズプライドはまた、時代の申し子でもある。同馬のオーナーブリーダーであるジョー・アレン(Joe Allen)氏は、テキサス州在住で、ニューメキシコ州に2頭の種牡馬を繋養し、そこで同馬を生産した。ニューメキシコ州の賞金額は、スロットマシンの収入で改善されたが、テキサス州ではそのようなことはない。ペッパーズプライドはすべてニューメキシコ州で出走しており、ゲーミング収入が獲得賞金額99万1085ドル(約1億902万円)の一部になった。
5歳牝馬ペッパーズプライドは、父デザートゴッド(Desert God)、母レディペッパー[Lady Pepper 父チリペッパーパイ(Chili Pepper Pie)]で、ジョエル・マー(Joel Marr)調教師が管理している。同馬は12月14日にサンランドパーク競馬場のニューメキシコ州競馬委員会ハンデキャップ競走でもう1走する予定である。その後、馬主のアレン氏は大きな決断を迫られるだろう。
馬主だけが馬に現役を続けさせるか繁殖入りをさせるかを決定することができる。ペッパーズプライドは出走する毎に連勝記録が危険に晒される。しかし、アレン氏の偉いところは、引退させるのは同馬が健康を損なった場合だけとくり返し述べていることである。
ゼニヤッタの馬主であるジェリー&アン・モス(Jerry and Ann Moss)夫妻は、同馬は来年も現役を続けると明言した。父ストリートクライ(Street Cry)、母ヴェルティジヌー[Vertigineux 父クリスエス(Kris S.)]の4歳牝馬ゼニヤッタは、10月24日のブリダーズカップ・レディーズクラシック(G1)を制した9戦9勝の全勝馬である。夫妻がゼニヤッタを引退させるのではないかと勘ぐる者はおらず、現役の年度代表馬候補ゼニヤッタをジョン・シレッフス(John Shirreffs)調教師のもとで調教を続けることは確実だろう。
12月14日のサンランドパーク競馬場のペッパーズプライドに注目しよう。その頃にはゼニヤッタが再び出走するニュースが流れているだろう。
無敗馬であるということには特別な意味がある。
By Dan Liebman
[The Blood-Horse 2008年11月22日「What’s Going On Here―Perfect Ladies」]