44年間の歴史をもつジョッキークラブ競馬場社(Jockey Club Racecourses: JCR)は初めて経費の大幅な見直しを行い、その結果、年間少なくとも600万ポンド(約14億4000万円)の節減を目標とする案が提出された。
この提案には、従業員の10%の削減および馬券発売、財務および本社業務の集約化が含まれる。
この経費の見直しは、コンサルタント会社アリックス・パートナーズ(Alix Partners)とJCRの経営幹部の協力のもとに、元ケンプトン競馬場の場長ポール・フィッシャー(Paul Fisher)氏が主導したが、今年になって見直しが正式に始まる前にもすでに複数の有力な幹部職員が退職した。
早期退職者には、最高経営責任者のアンドリュー・コッペル(Andrew Coppel)氏をはじめ、人事担当取締役ジョナサン・ダックワース(Jonathan Duckworth)氏および営業担当取締役ルーイズ・ウォルシュ(Louise Walsh)氏が含まれている。ウォルシュ氏が担当していたイベント・レジャー事業の子会社ペガサス社(Pegasus)は赤字続きで解散した。欠員と なったJCRの下級ポジションは、補充されないままになっている。
JCRの経営幹部は、4月9日にグループ全体の職員との30日間にわたる協議を開始したが、この協議において人員削減の対象部門に関する説明および配置換えについての話し合いが行われることになっている。55人が解雇される予定であり、結果としてJCRは年間経費を約9.2%削減して5900万ポンド(約141億6000万円)に引き下げることになる。
人員削減はJCRの管理部門を中心として行われることになり、その結果、5つの財務センターはおそらくチェルトナム1ヵ所に統合され、個々の馬券発売業務は外部委託される。
最高経営責任者代理のアンドリュー・グールド(Andrew Gould)氏は、JCRのうちで知名度の高い部門のひとつである馬場取締委員−必ずしも人員が多すぎるわけではない−は、最高で2人が削減対象になる見込みだが、職員との協議を考慮し詳細を述べることを差し控えた。
4競馬場とJCRは現在、2人の馬場取締委員ニック・パットン(Nick Patton)氏とフィオーナ・ニーダム(Fiona Needham)氏を共同雇用しているが、この方法はさらに拡大され、馬場取締委員は4地域の競馬場群(大規模競馬場を中心として地理的見地から編成される)とJCRの間で共同雇用されることになる。
JCRの新たな最高経営責任者に任命されたフィッシャー氏は、「私たちは、馬場取締委員の役割についてほかのグループと異なる見方をしています。ほかのグループでは、馬場取締委員は主に競馬開催に従事していますが、我々の馬場取締委員は他の高度な業務にも関与する専門性の高いポストです」と述べた。
一般的な問題に関して、グールド氏は「ほぼ45年間にわたり、JCRグループはかなり無統制な状態で成長してきました。JCRを競馬界における商業的でかつ結束力のある組織とすることを目標として、事業全体を合理化・近代化するべきだと考えています」と述べた。
ジョッキークラブ競馬場社の経費の見直しに関する主な提案
■全体
現状: |
ジョッキークラブ競馬場社(JCR、旧競馬持株信 託会社)は、チェルトナム競馬場を買収して1964年に設立された。その後、エイントリー、カーライル、エプソム、エクセター、ヘイドック、ハンチンド ン、ケンプトン、マーケットレーセン、ニューマーケット、ノッティンガム、サンダウン、ウォーウィック、ウインキャントンの14競馬場等を買収した。 2008年にJCR競馬場において349開催が予定されており、これはイギリスにおける全開催の23.2%に相当する。
2007年におけるグループ全体の売上高は、8600万ポンド(約206億4000万円)で、2006年比で550万ポンド(約13億2000万円)(6.8%)増である。営業利益は1000万ポンド(約24億円)。常勤従業員数は550人である。 |
提案: | 全競馬場を引き続き保有する。55人の常勤職員を解雇し、年間経費を6500万ポンド(約156億円)から5900万ポンド(約141億6000万円)に削減する。5年以内に営業利益を2500万ポンド(約60億円)まで拡大する。 |
■財務
現状: | 5ヵ所に財務センターが存在する。 |
提案: | すべての日常的な取引と財務を担当するチェルトナムのセンターに統合する。 |
■メンテナンス
現状: | 各競馬場がそれぞれ独自にメンテナンス業務を担当している。競馬場の買収の際に、必ずしもコスト削減の意識が伴っていなかった。 |
提案: | 支出および経営資源の共有について中央管理を強化し、たとえば、清掃業務は外部委託する。 |
■馬券発売
現状: | 各競馬場が開催日に独自に馬券発売業務を行っている。 |
提案: | これらの業務は統合し、経験のある機関(今後指定)に外部委託する。 |
■馬場担当職員
現状: | すべての競馬場は、独自の馬場担当職員を擁している。 |
提案: | 馬場担当職員のさらなる共同雇用と人員削減によって合理化しながら、馬場管理水準を維持する。 |
■馬場取締委員
現状: | 10競馬場はそれぞれ、独自の馬場取締委員を置いている。他方、マーケットレーセン、ノッティンガム、ハンチンドンおよびウォーウィックは、馬場取締委員を共同雇用している。 |
提案: |
馬場取締委員を、地理的に大規模競馬場の周辺に編成される4地域の競馬場群とJCRで共同雇用する。 将来最高2人の馬場取締委員代理を削減する。 |
■中央事務所
現状: | ロンドン中心部に次の2つの事務所がある。ヴィクトリアのバッキンガム・ゲートにJCR、シャフツベリー・アベニューにジョッキークラブの管理部門。 |
提案: | 2つの事務所を統合する。統合後の事務所の設置場所は未定である。 |
By Howard Wright
(1ポンド=約240円)
[Racing Post 2008年4月10日「JCR to reduce workforce in cost-cutting attempt」]