海外競馬情報 2009年07月03日 - No.13 - 4
賦課計画、交渉期限の6ヵ月前に合意成立(イギリス)【開催・運営】

 4月28日の競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)の会合において、3人の政府指名メンバーの支援により、賭事産業と競馬産業の代表者間で2010-2011年賦課計画(2010年4月から実施)に関する合意が成立した。

 英国競馬の主要な財源である賦課金の交渉の最終期限は、10月末としているので、期限の6ヵ月前の妥結は前例のない早さである。賦課金の歴史で画期的な出来事といえる。

 ブックメーカー委員会(Bookmakers' Committee)の提案は、(1) 現行計画の条件(英国競馬を対象とした賭事業者の粗利益の10%)を据え置くこと、(2) 賦課金が減額されている場外賭事業者の基準を小売物価指数で調整することであった。2010-2011年賦課計画について、この提案が承認された。

 賦課金に直接関係する事項のほかに、多くの問題が話し合われた。その話合いの過程で融和的な雰囲気が生まれ、賦課金交渉の締切りである10月31日真夜中に土壇場で慌てて妥結するような事態は避けようという合意ができた。

 海外賭事業者は現行の法制度の下では英国競馬に資金的貢献をしておらず、議論を呼んでいる。賦課公社は、政府がこの問題にしっかり取り組むよう要求した。

 賭事業者(大手ブックメーカーを含む)が納税義務を回避するために、ますます海外に移転しあるいは移転を検討していることも問題となっている。この問題は、今後数ヵ月間に競馬界と賭事界からの支援を得て、さらに厳しく精査される見込みだ。

 賦課公社はまた、次のような賦課手続き改善案を採択する予定だ。(1) 競馬界は毎年春に賦課計画案を提出し議論を開始する。なお、従来はブックメーカー委員会がまず提案していた。(2) その後、従来と同様に法律上の拒否権を持つブックメーカーが返答する。(3) 3人の中立メンバーは合意形成に資するよう外部からの支援を得て独自の査定意見を提出できる。

 この変更はまた、賦課公社が政府に対する賦課手続き合理化の約束を果たすため、現行の法律のもとで行える最大限の変更である。この変更は、賦課制度の合理化に関するドナヒュー報告(Donoughue report)で支持され、競馬界の代表者たちから提案されていた。

 ブックメーカー委員会のクリス・ベル(Chris Bell)委員長は、メンバーが全員一致で合意できたことに喜びを示し、「今後約2年は安定するでしょう。しかし、英国競馬からの事業をどんどん成長させ るには、3年〜5年にわたる取決めが競馬界にとって有益でしょう。今や、口で言うよりも具体的に何かを実践するときです」と語った。

 4月28日の合意は賦課公社のロブ・ヒューズ(Rob Hughes)会長と最高経営責任者ダグラス・アースキンクラム(Douglas Erskine-Crum)氏にとって大きな金字塔である。ヒューズ会長は9月末の引退を前に最後の年次交渉に出席した。またアースキンクラム氏はこれま で土壇場の合意を経験してきたが、今回は6ヵ月前に妥結したのだ。

 ヒューズ会長は、「次期会長には、過去のしがらみがない状態で、また賦課金交渉は現実的アプローチによって行う方が実り多いとブックメーカーや競馬界が実感できるような希望に満ちた状態で引き継げます。」と述べた。

 英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)のポール・ロイ(Paul Roy)会長は、BHAの見解を次のように語った。「これは現実的な決定であり、競馬に利益をもたらすでしょう。BHAは、極めて重要な多くの問題につい て議論を促してきました。これらの問題は緊急事項として取り組んで行かなければなりません」。

 

By Howard Wright
(1ポンド=約170円)


[Racing Post 2009年4月29日「Levy deal with six months to spare」]