海外競馬情報 2009年07月17日 - No.14 - 2
“夢いっぱい”のフォスラス競馬場オープン(イギリス)【開催・運営】

 6月18日、80余年ぶりにウェールズ地方に誕生したフォスラス競馬 場(平地・障害併用)では、1万人の観客が集まり、周辺地域を飲み込むような熱狂的な喚声が沸き上がる中で、午後6時20分に最初のレースがスタートし た。この競馬場を建設した地元の土木建設会社の経営者ダイ・ウォルターズ(Dai Walters)氏は、「建設に着手したのは5年前で、いま夢が実現しました」と述べた。今後2週間の入場券はすでに完売している。

 この歴史的なオープニングレースにおいて、ウォルターズ氏所有の馬フォスラスダイアモンド(Ffos Las Diamond)はエヴァン・ウィリアムズ(Evan Williams)調教師が管理するプランケット(Plunkett)の4着に終わり、最高のおとぎ話は生まれなかった。それでも2100万ポンド(約 35億7000万円)の建設計画の立役者ウォルターズ氏は自分の感情を抑え切れず、感極まった。

 同氏は、「観客がロイヤルアスコット開催(訳注:6月16日〜20日)も観戦できるよう開場を早めました。だから今日はまるで1日が48時間あるようでした。それにしても、とてもエキサイティングで感動的な1日でした」と涙ぐんだ。

 観客の多くはこの冒険的な競馬場建設事業に直接関係していないが、開場当日の競馬場における観客の様子を見て、専門家はウィリアムズ氏の企業家精神に合格点を付けた。

 使い初めだから当然だろうが、第1レースを優勝したドナル・ファーヘイ(Donal Fahey)騎手は馬場をほめちぎって、「カーペットのようでした。速い馬場です。でも夏至の頃ですからこんなものでしょう。馬場の設計者はとてもいい仕事をしています」と述べた。

 賞賛の声は競馬界のあらゆる分野から起こった。

 チャンピオン騎手であるトニー・マッコイ(Tony McCoy)騎手と毎年彼とタイトル争いをしているリチャード・ジョンソン(Richard Johnson)騎手はいずれもフォスラス競馬場を“愛すべき競馬場”と表現した。

 マッコイ騎手は、「絶妙に設計されていますし、速いスピードの出るコースです」と述べ、ジョンソン騎手は、「第1レースで乗りましたが、コーナーも回りやすく、馬場は良好なコンディションでした」と付け足した。

 その日の第1競走をオールダーアンドワイザー(Older And Wiser)に騎乗しハナに立ったレイトン・アスペル(Leighton Aspell)騎手は、出だしは良かったが最後の障害で失速した。同騎手は、「トップクラスのコースで、好ましいコンディションでした。ここで乗れるのを 嬉しく思います。競馬場の成功を願っています」と述べた。

 オリヴァー・マッキーナン(Oliver McKiernan アイルランドのキルディアを拠点とする)調教師の調教助手であるエイドリアン・カイトリー(Adrian Keightley)氏は、「施設も、集まる馬もトップクラスです。輸送はとても簡単ですし、将来アイルランドからも沢山の遠征馬がくるでしょう」と述べ た。

 厩舎地区もまた賞賛の的になった。英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)の公正課長ポール・ビーバイ(Paul Beeby)氏は、「ここに来たのは初めてですが、公正確保のための管理に感銘を受けました。周到に設計されており、国内でも有数の厩舎地区です」と述べ た。

 グレートリーズ競馬場(訳注:2008年4月オープン、1年足らずで閉場)の破綻に伴う処置を行ったBHAの最高経営責任者ニック・カワード(Nic Coward)氏は、「競馬ブランド再生のための基本方針の1つは“優れた基礎の構築”です。フォスラス競馬場はその好例です」と語った。

 21のブックメーカーが出店したが、そのうちブリストルを拠点とするアンディ・スミス(Andy Smith)氏は次のように語った。「この競馬場の興奮したざわめきと親しみ易い雰囲気は素晴らしく、商売繁盛は疑いなしです」。

 競馬場の建設前の2003年9月に初めてこの地を訪れて以来建設を見守ってきたBHA上級馬場検査官リチャード・リンリー(Richard Linley)氏は、「素晴らしい決断と熱意がこの冒険的事業を動かしてきたのです。露天掘り炭鉱跡地フォスラスに初めて来た時には、“100万年経って も競馬場はできない”と思いました。とんでもない見込み違いでした」と回顧した。

 

By Howard Wright
(1ポンド=約170円)


[Racing Post 2009年6月19日「‘Dream fulfilled’amid waves of delight」]