2011年実施を期して、競馬ファンを開拓するための抜本的な提案が 8月11日に発表された。この提案に盛り込まれている構想には、新たな平地競走の選手権(4月中旬〜9月下旬に施行)、チームで競う平地競走のハンデ キャップ戦(夏場6週間にわたって施行)、障害競走の選手権(チェルトナム・フェスティバル開催とグランドナショナル開催の予選レースから最終戦まで)な どが含まれている。
この提案は競馬変革プロジェクトチーム(Racing For Change project team)が作成したものであり、今後3ヵ月にわたり競馬界で広く議論されることになる。
本紙(レーシングポスト)の取材によって、この提案には以下のような構想が盛り込まれていることが分かった。
►► 平地競走の選手権を、4月中旬のクレイブン開催(Craven meeting ニューマーケット競馬場)から、9月下旬の“チャンピオンズデイ”(アスコット競馬場で施行される見込み)まで開催する。
►► 障害競走の選手権は、11月中旬のチェルトナム・オープン開催(チェルトナム競馬場)で始まり、翌年4月上旬のグランドナショナルデイ(エイントリー競馬場)でクライマックスを迎える。
►► 障害競走の選手権はレーティングによる成績順位を補完することにもなる。
►► 平地競走のプレミア開催(premier fixtures)は、最低賞金額を高水準に保ちながら、分かり易いものにする。なお、プレミアであると定評のある開催が核となる。
►► より多くのG1競走を土曜日に施行する。
►► チームで競う平地競走のハンデキャップ戦シリーズは、順位によりポイントが加算される方式で夏場の6土曜日に開催する。チームの登録はシリーズ開始前に行 う。チームの構成要素は、馬主、調教師、騎手、馬、およびスポンサーの全部または一部の組み合わせとなるが、具体的には決まっていない。
►► チェルトナム・フェスティバル開催の予選レース(出走資格を付与するためのレース)を指定する。
►► チェルトナム競馬場とエイントリー競馬場の間の結びつきをより強固にする[障害競走シーズンをグランドナショナル(英国で最も人気のある競走)で終わらせることを含む]。
クリス・マクファデン(Chris McFadden)氏は競馬変革委員会(Racing For Change board)およびその促進団体レーシング・エンタープライズ社(Racing Enterprises Ltd.: REL)の会長を務めている。同氏は8月10日、「競馬は引続き平地競走と障害競走で年間12ヵ月開催されるでしょうが、プレミア競走(premier product)が王様のような存在となるでしょう」と述べた。
同氏は次のように説明した。「これらの構想は、ハリソン・フレイザー(Harrison Fraser)氏がRELのために競馬のブランド再生に取組んだことが原動力となって生まれました。競馬ブランド再生では、競馬ファンを開拓するためには 分かり易さと物語性が必要だと強調しています」。
「1年に52週施行される通常の競馬もなおざりにはできませんが、ただモーター・レーシングが重賞シーズン外においてもイベントを開催していることと同 じように、競馬においてもシーズンの開始、中盤、終了のメリハリをつけて大イベントをさらに盛り上げる必要があります」。
「平地競走シーズンがどのようなものか、新たな競馬ファンに尋ねられた場合に、明瞭に答えられる番組編成にしたいのです。その上で平地競走と障害競走の両方のプロモーションを行うのです」。
「今後3ヵ月間に競馬産業全体で行われる検討においては、競馬の魅力を増すことを目指したプレミアリゼーション(プレミア開催でメリハリを付けること)構想にもとづいて、どの開催をいつ行うかを決定することになります」。
RELが始めた競馬ブランド再生運動は、 “競馬の変革(Racing For Change)”と呼ばれ、いま盛んに議論されている。この事業については8月11日に、8部門の取組みから4つの主要戦略が具体化されたものであると発表された。
RELの企画理事であるロッド・ストリート(Rod Street)氏は主要戦略を、(1) プレミア競走、(2) 競馬について物語を作る方法、(3) 競馬産業と賭事産業の関係、(4) ファンとの付き合い方と要約した。
平地および障害の競走日程のプレミアリゼーションについては、現在の競馬番組編成の中核的部分を徹底的に改革する特別の提案として議論される、際立った問題であることは確かである。
ストリート氏は、プレミアリゼーションを“変革の中心”と表現した。
マクフェデン氏は次のように付言した。「プレミアリゼーションは競馬商品に関する戦略的要素なので最重要問題です。残りの問題は戦術に関わることであり、プレミアリゼーションの問題を片付けてから検討すべき問題です」。
「したがって、まずプレミアリゼーションを検討し適切なものとし、そのうえでこれまでの取組みから生じた他の構想のどれを推し進めるか決定することになります」。
英国競馬統括機構(British Horseracing Authority)の最高経営責任者で競馬変革委員会のメンバーであるニック・カワード(Nic Coward)氏は次のように語った。「9ヵ月にわたる取組みによって、競馬について物語性をもたせるのは難しく、それゆえうまくいかなかったという共通 認識ができました」。
「競馬のプレミアリゼーションに関しては、物語性によって、より効果的にファンに訴える方法について、その現状ならびに何を変更すべきかを検討しているところです。その答えは近いうちに出ます。しかし、変更を施す必要があることについてはこれから議論されます」。
カワード氏は、「障害競走シーズンはスタートと展開が明確です。チェルトナム・フェスティバルからグランドナショナルにいたるまでの競走番組の編成についてはおそらく大した変更はないでしょう」と述べた。
しかし同氏は平地シーズンについて次のように付言した。「平地シーズンの番組編成を分かり易くすることは容易ではありません。いまのところ2つの意見があります」。
「1つの意見は、選手権によりチャンピオンを讃える機会は持つべきだが、それぞれのレースはアメリカ、フランス、アジアにも目配りつつ、しかるべき理由があって結びついているので、大きな変更をするべきではないというものです」。
「もう1つの意見は、おそらく競馬番組の構造を変えようという意見で、4月中旬のクレイブン開催から始まり9月下旬の“チャンピオンズデイ”で盛り上げて終わるシーズンを導入すべきであるというものです」。
「これからも様々な意見が出てくると予想しています。競馬ファンの意欲をかきたて注意を向けさせ続けるのは、競馬変革委員会の努力に掛かっています。私は、クリス・マクファデン氏、イアン・バーロー(Ian Barlow)氏とともにそのメンバーの1人です」。
「競馬界では以前にもこのような議論があったという者もいますが、従来とは異なる意見が出てくると信じています。プロジェクトは順調に進捗しています」。
「連帯して取組むことが必要です。関係者が純粋な気持ちから変革を望み有意義に共同作業を行うことを望んでいることに感銘を受けました」。
By Howard Wright
[Racing Post 2009年8月11日「Is this the bright new dawn for racing?」]