競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)は現在、英国競馬を対象とした賭事を提供している海外拠点の賭事業者に対して競馬の中央基金への支払いを強制することにより、年間約1,000 万ポンド(約14億円)に相当する財源不足を埋める計画を推し進めている。
賦課公社のCEOダグラス・アースキンクラム(Douglas Erskine-Crum)氏は7月28日、この計画の進展を明らかにし、「私たちは、英国競馬の賭事を受付けている海外賭事業者に確実に賦課金を支払わ せる最初の法律を導入することを目指し、政府と一緒に取り組んでいます」と語った。
レーシングポスト紙のウェブサイトで公表されたこのニュースは、ウィリアムヒル社(William Hill)が年末までに電話投票賭事事業を英国の税金と賦課金が課されないジブラルタルへ移転させると7月26日に発表した後にもたらされた。ウィリアム ヒル社はすでに、ラドブロークス社(Ladbrokes)とスカイベット社(Skybet)の最近の例に倣い、そのインターネット事業をジブラルタルで営 んでいる。
ビクターチャンドラー社(Victor Chandler)、パディパワー社(Paddy Power)、ボイルスポーツ社(Boylesports)や32レッド社(32Red)のような他の有名企業も、海外から英国競馬を対象とした賭事を受 付けているが、賦課金はまったく納めていない。
スポーティングベット社(Sportingbet)は、英国競馬を対象とした賭事に関して自主的に賦課金を納めている。またベットフェア社 (Betfair)は、賦課公社に対して年間100万ポンド(約1億4,000万円)以上の自主的な賦課金拠出を停止したが、同様の額を他の方法で競馬に 提供している。
アースキンクラム氏は、「これは長年続いている問題であり、政府も賦課公社も、海外賭事業者は賦課金を支払わなければならないと主張してきました」と述べた。
同氏は次のように続けた。「ウィリアムヒル社とラドブロークス社が事業部門を海外に移転させたことで、2009年には約400万ポンド(約5億 6,000万円)が失われました。ウィリアムヒル社が電話投票賭事事業を移転させるという決定は、最低でも今年さらに200万ポンド(約2億8,000万 円)が失われることを意味しています」。
「賦課金を支払わない他のすべての海外賭事業者を加えれば、その合計はおそらく年間1,000万ポンド(約14億円)を超えており、この額はインターネット賭事の成長ですぐに少なくとも1,500万ポンド(約21億円)に膨れ上がる可能性があります」。
アースキンクラム氏は次のように付け足した。「世界は変化しつつあり、私たちはそれについていかなければなりません。適用されているのが賦課金制度であろうと商業制度であろうと、私たちは依然としてこれらの問題に直面し続けるでしょう」。
「したがって私たちは、政府、BHA(英国競馬統轄機構)、競馬界およびブックメーカー委員会(Bookmakers’ Committee)とともに最善策を見つけるよう取り組まなければなりません」。
海外賭事業者に賦課金を支払わせるための最大の障害の1つは、そのための立法が欧州裁判所(European courts)によって国庫補助とみなされるかどうかという問題であったが、アースキンクラム氏は、この問題は賦課公社が文化・メディア・スポーツ省に提 起したことにより対応が行われていると述べた。
同氏は次のように説明した。「国庫補助の問題は重要な問題であり、私たちは政府に書簡を送付しました。その中で、私たちの海外賭事業者に対する賦課金支払いの強要がなぜ国庫補助にはあたらないと確信しているか詳しく述べました」。
文化・メディア・スポーツ省は2010年3月、遠隔賭事に関する諮問文書を発表していた。同省のスポークスマンは7月28日、「諮問文書に対する意見聴取のプロセスは6月18日に打ち切られ、私たちは現在集められた意見を検討しているところです」と述べた。
アースキンクラム氏は、賦課公社の政府に対する今回のアプローチにおいては、英国の賭事客が海外競馬を対象に行っている賭事に対して賦課金が課されるべきかどうかという、BHAが主張している問題は扱っていないと強調した。
By Howard Wright
(1ポンド=約140円)
[Racing Post 2010年7月29日「Levy Board targets overseas operators」]