海外競馬情報 2010年11月19日 - No.22 - 1
レーシングユナイテッド、キャンペーンを立ち上げる(イギリス)【開催・運営】
英国競馬界の主要構成メンバーは、政府と競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)に対し賭事産業からの正当な見返りを求める新しいキャンペーンを立ち上げるため、“レーシングユナイテッド”(Racing United)という名の下に団結した。
BHA(英国競馬統轄機構)、競馬場協会(Racecourse Association: RCA)およびホースメングループ(Horsemen’s Group)は、競馬界が第50回賦課金計画への提案の中ですでに述べていた要点をまとめた形のレーシングユナイテッドの設立趣意書に名前を連ねた。しか もその設立趣意書には、驚くべき事実も含まれていた。
設立趣意書はレーシングユナイテッドのウェブサイト(racingunited.co.uk)に掲載されているが、それによれば、賭事産業は“賭事を行う権利”のために代価を支払わねばならないという長期的課題を提起する形の結論となっている。
この話題は、英国競馬に直接結びつく形で初めて活字になったと思われる。しかしそれは、BHAのCEOニック・カワード(Nick Coward)氏がスポーツ権利所有者連合(Sports Rights Owners Coalition: SROC)の会長として、より広い見地からこれまで唱道してきたものである。
自らを“権利問題に特に焦点を置く国内外のスポーツ機関の代表者からなる非公式団体”と称するSROCは、この問題に関して、これまでいつも賭事産業から拒絶されてきた。
レーシングユナイテッドは、“賭事産業は賦課金制度を近代化するために私たちの努力を全く支持してこなかった”という主張に対して賭事産業が反論する可能性を提起した。
設立趣意書には次のように記されている。「もし賭事産業がこの極めて重要な賦課金制度の近代化に反対し続けるのであれば、私たちは賦課金制度をやめて近 代的な賭事市場を創造することに踏み切るつもりである。その市場においては、賭事の提供を望む賭事業者はその権利を得るために法的強制力のある契約を結ば なければならないこととなる」。
しかし、レーシングユナイテッドの当面の優先課題は賦課金制度におけるさまざまな“抜け穴”を塞ぐことであり、このことは賦課公社の行動または政府の立法行為がなければ達成することはできない。
レーシングユナイテッドのリストには、海外拠点の賭事業者による賦課金の支払い逃れ、ベッティング・エクスチェンジとそれをビジネス目的で利用する賭事 客による“規則に従った商業利益分”の支払い、賦課金支払の最低限度額の撤廃、英国から海外競馬へなされた賭事に対する賦課金が記されている。
設立趣意書はさらに政府に対し、2011年における賦課金から競馬界への収入として1億3,000万ポンド(約182億円)ないし1億5,000万ポンド(約210億円)を確保するため迅速で適切な行動を取るよう要求している。
レーシングユナイテッドの設立に至った背景を関係者に説明するBHAのポール・ロイ(Paul Roy)会長とカワード氏からの書簡には、次のように記されている。「今後数週間から数ヵ月が非常に重要です。競馬界はこの2年間、賦課金制度に近代的な アプローチと変更をもたらすために取り組んできました」。
この書簡は、競馬界の主張は賭事客から資金をとり上げるということではないと強調し、「私たちの主張は、競馬界と競馬界の関係者が賭事事業から正当な見返りを得ることです」と付け加えている。
レーシングユナイテッドはまた、“競馬界の映像権収入は賦課金収入の減少分を上回っている”とするブックメーカーの主張を一蹴した。
カワード氏は9月16日、「このキャンペーンは、競馬界が政府に対して行う最新の要求行動です。これは綿密な分析の下に確立され、私たちが競馬界を代表して唱道してきた包括的な主張です」と語った。
同氏は次のように付け足した。「私たちの目標は、競馬界全体の将来にとって正しいと思われることを確保していくことであり、このキャンペーンは、それを強く支持することに関して競馬界とその支持者全体の中に何の懸念も残さないことを意図しています」。
レーシングユナイテッドの主な目標
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海外賭事業者が賦課金支払いを逃れることはもう許さない。
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ベッティング・エクスチェンジとそれをビジネスとして利用する顧客に、英国競馬に対する規則に従った商業利益分を支払わせる。
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現在60%以上のベッティング・ショップが賦課金の満額支払いを免除されている最低限度額ルールを撤廃する。
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英国内で海外競馬に対して賭事を行う賭事客への賦課金支払いを組み入れる。
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2011年における賦課金から競馬界への収入として1億3,000万ポンド(約182億円)ないし1億5,000万ポンド(約210億円)を確保する。このことについて競馬界は、広範な法律と経済の分析に裏付けられたゆるぎない主張を確立している。
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By Howard Wright
平地競走の騎手がレーシングユナイテッドを支持
英国の平地競走の騎手たちは、賭事業界から競馬界への“正当な見返り”を求めて活動する“レーシングユナイテッド”のキャンペーンに支持を表明した。
フランキー・デットーリ(Frankie Dettori)騎手とリチャード・ヒルズ(Richard Hills)騎手を含む46人の騎手たちは、週末にニューマーケットに集まり、賦課金収入が2008年の1億1,500万ポンド(約161億円)から2年 後の2010年には7,500万ポンド(約105億円)へと3分の1以上減少した、賦課金制度の抜け穴を塞ぐことを政府に要求するレーシングユナイテッド の設立趣意書に署名した。
9月16日にこの設立趣意書を立ち上げたBHAのCEOニック・カワード氏は、10月中旬にニューマーケット競馬場を訪れ、自身のチームが競馬界の気まぐれな派閥を1つにまとめるという“不可能な仕事”を成し遂げた証拠としてこのことを賞賛した。
カワード氏は、「私たちは第47回賦課金計画に遡る3年前からこれに取り組んできて、ここまで成し遂げました。そして競馬産業全体の支持を得ました」と語った。
デーン・オニール(Dane O’Neil)、ジミー・フォーチュン(Jimmy Fortune)、ダニー・ブロック(Danny Brock)、ニール・カラン(Neil Callan)、キーレン・ファロン(Kieren Fallon)、ライアン・ムーア(Ryan Moore)、アフメド・アジュテビ(Ahmed Ajtebi)、リアム・ケニリー(Liam Keniry)、イアン・ブレナン(Ian Brennan)およびアダム・ベスチッザ(Adam Beschizza)の各騎手がデットーリ騎手に続いた。
デットーリ騎手は、「騎手たちは、正当な分担金を支払わないことでブックメーカーがもたらしている損害に人々が気づくことを望んで、この設立趣意書に署 名しました。賦課金は競馬産業に不可欠のものであり、騎手も他の競馬関係者と同じく生活のために賦課金を頼りにしています。ブックメーカーが記録的な利益 を上げている一方で、競馬界で働いている人々が苦しんでいるのは公平ではありません。手遅れになる前に状況を変えなければなりません」と語った。
レーシングユナイテッドの設立趣意書は、10月18日の午後6時までに1,047名の署名を集めた。
By Tom Kerr
(1ドル=約100円)
[Racing Post年2010年9月17日「Racing United sets out stall in new campaign」]
[Racing Post 2010年10月19日「Flat Jockeys back call for ‘fair’ funding for racing」]