海外競馬情報 2010年03月26日 - No.6 - 3
ニューヨーク競馬協会、セキュリティー馬房撤廃の可能性(アメリカ)【開催・運営】

 NYRA(ニューヨーク競馬協会)はこの春に競馬を中断するような事態を招かないように、さらなる抜本的な経費削減措置の1つを検討している。

 NYRAはすでにアケダクト競馬場での調教活動を廃止するかもしれないと述べていた。競馬の公正確保を強化するために5年前に導入したセキュリティー馬 房[security barn いわゆる滞在馬房(detention barn)のこと]も今や、絶体絶命の窮地に追い込まれるかもしれない。

 セキュリティー馬房は、NYRAにより雇用されている獣医師だけがレース前にサリックス(Salix)を投与できるよう設置された。NYRAはまた、炭酸ガスの検査を行う際にもその馬房を使用している。

 NYRAは3月3日の役員会において、これらの事柄および他の多くの措置について話合い、承認するだろう。

 ニューヨークホースメン協会(New York Thoroughbred Horsemen’s Association)の会長でNYRAの役員であるリック・ヴァイオレット(Rick Violette)調教師は、「まったく膨大な数の提案があります。考え得る経費削減策はすべて協議の対象となっています」と述べた。

 NYRAはこの夏、現金が枯渇するかもしれないと述べていた。ニューヨーク市場外馬券発売公社(New York City Off Track Betting)はNYRAに対して1500万ドル(約15億円)の債務を負っており、アケダクト競馬場のゲーミング運営拡大からも現金を得られることは ないだろう。ニューヨーク州はNYRAを倒産させないようにしなければならないが、州自体70億ドル(約7,000億円)以上の債務があり、NYRAのた めに拠出可能な財源がない。

 潜在的な危機に直面して、NYRAは財源を確保できるすべての方法を模索している。アケダクト競馬場での調教活動を廃止することで年間360万ドル(約 3億6000万円)が節約できるが、その場合には入厩している500頭の一部は、近郊のベルモントパーク競馬場に移動しなければならなくなる。NYRAは スペースを確保するために、ベルモントパーク競馬場のセキュリティー馬房を撤廃し、その100馬房を調教で使用できるようにするだろう。

 ヴァイオレット調教師は、デラウェア、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージーおよびペンシルヴァニアの各州で調教される他の馬たちは、ニューヨークを去りかねないと語った。

 NYRAはセキュリティー馬房のために人件費、維持費および管理費に年間約120万ドル(約12億円)を拠出している。しかしヴァイオレット調教師は、セキュリティー馬房における薬物投与プログラムを廃止しても公正確保を犠牲にしないと確信していると述べた。

 同調教師は、「私はセキュリティー馬房制度がどのように功を奏していたのか確信が持てません。この手段を適用した州はほかにありません。これはおそらく やりすぎでした。ニューヨークは素晴らしい薬物検査を実施し、それは信じられないほど精密です。(セキュリティー馬房を撤廃するからといって)21世紀か らフロンティア時代に戻るというわけではありません。競馬では、サッカー、野球、ホッケーよりも厳格な競走後薬物検査が行われています。大半のスポーツは 薬物検査を受け入れてさえいません」。

 ヴァイオレット調教師はまた、セキュリティー馬房制度は年間最大で200万ドル(約2億円)の追加費用をホースマンに負担させていると語った。

 「すべての馬にはいつも付き添うスタッフが必要です。そのことでスタッフの作業が数時間増え、彼らは残業をしなければなりません。この人件費はかなりな金額になります」。

 このセキュリティー馬房プログラムは、2005年にNYRAがパリミューチュエル馬券発売の事務員の間で広範化したマネーロンダリングのスキャンダルを うけて、公正問題の方針改善を示すために取り組んだ対策の1つである。ヴァイオレット調教師は、警備スタッフが一般の人々の接近を阻止できるように、出走 予定の馬の馬房には明るい色のラベルを貼られるなどの別の公正措置が取られるだろうと述べた。

 同調教師は、「正直なところ、NYRAはわずかな金額でも節減するためにやれることはすべてやっていると確信しています。私たちは毎日、アイデアを出すように取り組んでいます」と付言した。

 

By Paul Post
(1ドル=約100円)


[thoroughbredtimes.com 2010年2月26日「NYRA could eliminate detention barn」]