海外競馬情報 2011年01月28日 - No.2 - 3
新しい賦課金計画が政府から承認されれば、賞金額は増加か(イギリス)【開催・運営】

 競馬界の財源の減少を反転させ、2011年の競馬界の賦課金からの収入を8,000万ポンド(約112億円)に引き上げる提案が政府に提出された。

 ジェレミー・ハント(Jeremy Hunt)文化・メディア・スポーツ大臣に提出された提案において、競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)でポール・リー(Paul Lee)氏が代表を務める3人の独立メンバーは、予算立てされている3,400万ポンド(約47億6,000万円)から4,800万ポンド(約67億2,000万円)にまで2011年賞金額を引き上げることができると予測される7,500万〜8,000万ポンド(約105〜112億円)という競馬界の予算収入規模を議論の出発点として提示した。

 この見積もりは、競馬界が主張する年間1億3,000万ないし1億5,000万ポンド(約182億〜210億円)という賦課金からの収入額、および2011-12年には6,000万ポンド(約84億円)以下しか拠出しないというブックメーカー委員会(Bookmakers' Committee)からの提示額と比較される。2010-11年の賦課金からの収入の見込額は6,500万ポンド(約91億円)である。

 競馬界と賭事産業との間の大きな隔たりは、正式な締め切りである10月31日以前に解決することが出来ず、2011年4月から始まる賦課金計画に関する決定はハント大臣の手に委ねられた。

 ハント大臣はまず、政府が指名したリー氏、ペニー・ボーイズ(Penny Boys)氏およびポール・ダーリン(Paul Darling)氏の3名に対して意見提出を要請し、彼らの全員一致の意見が、12月2日に文化・メディア・スポーツ省(DCMS)のウェブサイトに掲載された。

 最終的に1年間の協定を締結に導くために、3人の独立メンバーは、売上げが一定の金額を下回った場合には軽減された賦課金を支払えばよい賦課最低限度額制度の廃止、および2003-04年に英国競馬公社(British Horse Racing Board: BHB)がブックメーカーとの商業的データ協定の締結を計画していたときに廃止された、アイルランドを含む海外競馬への賦課金の再導入を主張する21ページの文書に署名した。

 3人の独立メンバーは、特に小規模なブックメーカーに対する補償的要素として、賦課金の率を9%まで引き下げることを提案した。彼らが売上げと割合を細かく固定する理由は、説明されなかったが、詳細化された財政モデルによりもたらされたと考えられている。

 提案書は次のように説明した。「なぜ10%が適切な数字であるのかについての本質的な理由はありませんし、また10%という数字が永久に固定されるべきという考え方が導入時にあったのかもわかりません」。

「賦課最低限度額制度を廃止するとともに海外競馬にも賦課金を課すことにより、ブックメーカーには大きな追加負担が課せられることになるのは良く認識していますが、私たちは賦課金の率を引き下げることで状況を改善するためにこれらのことの実行を追及しました」。

「このことで、ブックメーカーが他の賭事商品よりも競馬の販売促進を行うようになり、競馬界と賭事業界の双方にとって利益となることを望んでいます」。

「ブックメーカー委員会が8万8,740ポンド(約1,242万円)から12万3,000ポンド(約1,722万円)に引き上げることを望んでいる賦課金最低限度額の問題、およびブックメーカーが変更を望んでいない海外競馬への賦課金の問題に取り組むことによって、3人の独立メンバーは、競馬界から指名された賦課公社メンバーが提起した議論の主要課題4つのうち2つに対応したことになります」。

 さまざまな選択肢を検討し、3人の独立メンバーは次のように結論付けた。「賦課最低限度額制度はもはや適切でも公正でも合理的でもありません。原則の問題としてこれは廃止されるべきでしょう」。 

 彼らは海外競馬について次のように述べた。「ブックメーカーにとっては、英国競馬よりも海外競馬に賭事を行うよう販売促進し顧客を説得することがより魅力的であるという状況になってしまったのでしょう。2つの映像配信業者が競合するサービスを提供しているのであればなおさらです」。

「たとえば、英国の賭事客に馴染みのある馬と騎手を売りにしているアイルランド競馬は、賦課金が発生しませんでした。これは明らかに英国競馬にとっては不利です」。

 しかし3人の独立メンバーは、ベッティングショップのすべての商品に賦課金を課すべきという競馬界の提案は却下した。

 ベッティング・エクスチェンジと海外賭事業者に関する競馬界の他の要求は、個々に取り上げられ、その中で3人の独立メンバーは、いずれの問題も賦課金決定プロセスとは別に考えられる課題であると述べた。

 BHA(英国競馬統轄機構)のキャンペーンを行っているレーシング・ユナイテッド(Racing United)の代表が発表した声明は、賦課最低限度額制度と海外競馬への賦課金に関する決定を歓迎したが、「もし同時に海外賭事業者およびベッティング・エクスチェンジからの公正な資金提供を確保するための協定が締結されるのであれば、ほんのわずかであっても賦課金の率の引下げが実現可能になるでしょう」と述べた。

 BHAのポール・ロイ(Paul Roy)会長は、「本日のニュースは競馬界がキャンペーンを行ってきた事柄の最初の部分です。競馬界は、賭事業界全体から競馬に公正な資金を集めるという目的を確実なものにするため、大臣を支援しながら大臣とともに前向きに取り組んでいくでしょう」と語った。

「現在の優先事項は、海外賭事業者とベッティング・エクスチェンジの影響を反転させていくことであり、これらの問題が与えてきた損害は2,000万〜4,000万ポンド(約28〜56億円)の賦課金収入に相当します」。

 12月2日のこの発表の後でも、ブックメーカーの株価にはほとんど変動が見られなかった。

賦課公社の3人の独立メンバーによる提案書の要点

  • 第50回賦課金計画(2011~12年度)の目標収入を7,500万〜8,000万ポンド(約105億〜112億円)とする。
  • ブックメーカーに対する賦課金最低限度制度は、廃止されるべきである。
  • 賦課金は、英国内のベッティングショップで提供している海外競馬にも国内と同じ賦課金の率で適用されるべきである。
  • 賦課金の率は、競馬賭事の粗利益の10%から9%に引き下げられるべきである。
  • ベッティング・エクスチェンジからの賦課金支払いについての変更は、協議過程が完了する前には行わない。
  • 海外賭事業者の立場についての勧告は、"さらなる協議"を行う前には行わない。

 賦課公社が10月31日に賦課金計画について合意できなかったことをうけて、文化・メディア・スポーツ大臣であるジェレミー・ハント氏の要請で、政府に指名されたポール・リー会長、ペニー・ボーイズ副会長、ポール・ダーリン氏によりこの提案書は作成され、政府の決定に委ねられた。

 ハント大臣は、ブックメーカー委員会および英国競馬を代表する賦課公社の3人のメンバーに対し、同大臣が決定をするに当たり考慮すべきと考えられるあらゆる要素について12月31日までにコメントするよう求めた。

ハント大臣は新年に決定を下すことを約束した。

 提案書はインターネットにおいて閲覧可能である。(culture.gov.uk/publications/7613.aspx

By Howard Wright

(1ポンド=約140円)


[Racing Post 2010年12月3日「£80M Racing's maximum income next year if government agrees」]