専門裁決委員に関するビター氏の考え
裁決において、専門裁決委員と中央裁決委員会とは異なるものである。たとえばオーストラリアでは、通常州ごとに中央裁決委員会が設置されるため、その意思決定は不一致があり得る。また、専門裁決委員は、人々が考えるようなあらゆる事柄を解決するわけではない。
ビター氏は、「私とスティア氏は、外部からきた人間として、イギリスにおける文化的差異を実際に意識しており、オーストラリアで行われていることをイギリスで強制しようとは決して思いません。また、全員が専門裁決委員というオーストラリアのモデルに移行する計画は持っていませんが、それはイギリスで実施されているモデルが多くの理由で機能しているためです。無給裁決委員と有給裁決委員の組み合わせは、イギリスの文化に適しており、それは、豊富な経験を有する多くの人々を雇うことができるイギリスにとって経済的に理にかなった方策なのです」と述べている。
進展の可能性がある課題
競馬場裁決委員およびその他の開催執務委員の役割の変更
制裁を科すための新たな中央裁決委員会の設置
決勝審判員の補助的役割としての先進技術導入
特に審議に関して、高い技術を有する放送局との連携
現行のイギリスにおける裁決委員の体制
人的資源が分散される銀行休業日の休日を除き、イギリスの各競馬開催には3人の競馬場裁決委員のほかに2人の有給裁決委員がいる。有給裁決委員は、BHAが給料を支払う開催執務委員であり、中央競馬統轄機関のBHAと直接つながり、一方その他の3人の裁決委員は経費以外に給料は支払われない。審議に関しては、通常の委員会は3人の裁決委員と1人の有給裁決委員が決定する。もう一人の有給裁決委員は、証人を召集し、運営的役割と事務的役割を果たす。
裁決委員の仕事は、重大な責任を伴う。イギリス国内におよそ150人の裁決委員がおり、年間平均25日間ないし30日間仕事をする。裁決委員は2つのルートを通じて資格を取得する。すなわち、裁決委員は競馬場によって指名されるか、または中央の競馬統轄機関に申し込み、その後、厳しいトレーニングを受ける。
その他のすべての開催執務委員(発走委員およびその補助員、検量委員、決勝審判委員、ハンディキャップ作成委員、獣医委員)は、BHAによって直接雇用されている。
オーストラリアにおける裁決委員の体制
細部の機能については州ごとに異なるが、裁決委員を含むすべての開催執務委員は、競馬統轄機関の有給専門職員である。たとえばメルボルンでは、州の中央裁決委員会はレーシングヴィクトリア社の本部事務所によって運営されており、裁決委員は州内の競馬開催場を回っている。大きな州には地理的理由から複数の地域裁決委員会があり、最も優秀な裁決委員はエリートグループとして大都市の中央裁決委員会に昇進していく。
シニア・シドニー誌のジャーナリストで、広く評価を得ているサラブレッドニュース・コム(thoroughbrednews.com.au)の編集者のロブ・バーネット(Rob Burnet)氏にとって、現行システム以外のシステムは思い浮かべることはできない。同氏は、「競馬が完全に専門的な公正委員会によって管理されないシステムは考えられません。裁決委員は、勝馬投票の監視と薬物検査に投入されるかなりの財源によって給料を支払われ、支援されています。馬券購入者の利益が最も重要であると考えられており、競馬界の存在はその基礎の上に成り立っています」と述べている。
競馬場における大部分の違反は、裁決委員によって開催日に処理され、その結果が騎手に対して影響を与える場合は、直ちに騎手の面接が行われる。次のレースが始まる前に制裁が発効することがあるが、未処理の問題がある場合または追加の根拠が必要な場合は、事象は最終レースの終了後まで或いは後日まで解決されないことがある。
香港における裁決委員の体制
英国とは非常に異なる資金調達メカニズムによって資金が豊富な香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)は、導入可能な最新技術を利用している。競馬場は2つだけであるが、各競馬場の裁決委員会は、“名誉”裁決委員と専門裁決委員からなっており、専門裁決委員が過半数を占めている。
By Nicholas Godfrey
(1ポンド=約130円)
[Racing Post 2012年4月17日「Bittar’s Regulatory」]