馬主協会(Racehorse Owners’ Association: ROA)のCEOリチャード・ウェイマン(Richard Wayman)氏は5月13日、一頭の馬を1レースに出走させための平均費用が3,000ポンド(約39万円)以上である数字を示し、現在の馬主を引き留めたり、新たな馬主を勧誘しようとする努力は、“水を上り坂に向かって流そうとする”ことに等しいと主張した。
ウェイマン氏は、一頭の現役馬の維持に関わる出費についての調査は、気が滅入るような結果だったと語った。
170頭の馬の管理に関わる財政状況の徹底分析への回答を提供した今回のROAのアンケートによって、2010年に一頭の馬を所有し競走させる平均費用は、平地競走で2万264ポンド(約263万4,320円)、障害競走で1万6,128ポンド(約209万6,640円)であったことが明らかになった。
所有馬が獲得する賞金によって、調査の対象となった馬主は、前回2007年に調査が実施されたときと同じ21%の対費用純収益率を得ている。
他国との比較ではアイルランドで22%、フランスで54%、日本で63%となっている。
またこの調査によると、平地競走馬は年間6.7回、障害競走馬は年間5.1回出走していることが分かった。したがって、馬の1出走当たりの費用は、平地競走で3,056ポンド(約39万7,280円)、障害競走で3,219ポンド(約41万8,470円)となることが分かった。
ウェイマン氏は次のように語った。「馬主の純収益が改善されるまで、疑いなく英国競馬界は引き続き馬主を失うとともに、現役馬の減少を目の当たりにするでしょう」。
「この数年間、馬主は賞金が減少する一方で費用が増加する現状に直面しています。ほぼ毎日のようにROAのメンバーが遺憾の念をもって馬主を辞める決心を耳にすることはやるせない気持ちになります」。
「馬主メンバーは次第に、他国とりわけフランスで競走馬を持つことに興味を持っていると私たちに言い始めているが、収益を比べればその理由を理解するのは難しくありません」。
ROAは2007年から2010年に、預託料が平地競走では9.06%、障害競走では7.35%増加したとしており、調査において、平地競走の調教師で最も高額の預託料は、1日75ポンド(約9,750円)で、平均預託料は平地競走で43ポンド(約5,590円)、障害競走で37ポンド(約4,810円)であった。
ウェイマン氏は次のように語った。「英国競馬は努力を重ねていますが、その取り繕っている表面を外してみれば、その土台は人々が思うほど強固なものではありません。私たちはどうにかして出走頭数が改善されるように手直しすることはできますが、根本的な問題は、英国での競走馬の所有に伴う財務状況が健全な産業として維持するには十分でないことです」。
「このことは早急に対処する必要があり、そのためにはすべての競馬場からホースマンに還元されるメディア権料の公正な分け前を得ること、賦課金を通じた競馬界への支払いを増加させること、馬主の費用を出来る限り軽減することなどが課題です。ただし、馬の福祉の水準について妥協があってはなりません」。
「競馬産業には、多くの時間を費やして今ある馬主を引き留めるため、また新たな馬主を惹きつけるために取り組んでいる多くの人がいますが、より上質のものを求める競走の激しい現在の市場において、この調査は、私たちがときどき“水を上り坂に流そうとしている”ように感じる理由を明らかにしています」。
英国における地区別現役馬の維持費
※これらの数字は2010年のもので、年間を通じた費用。
年間平均コスト | ||||
平 地 競 走 | £20,264(約263万4,320円) | |||
障 害 競 走 | £16,128(約209万6,640円) | |||
総 合* | £18,651(約242万4,630円) | |||
出走1回当たりのコスト | ||||
年間平均出走回数 | 出走1回の平均コスト | |||
平地競走 | 6.7回 | £3,056(約39万7,280円) | ||
障害競走 | 5.1回 | **£3,219(約41万8,470円) |
*:この調査は平地競走と障害競走の現役馬のコスト比較格を示すことに重点が置かれている。
**:調査された馬だけを基にしている。
By Lee Mottershead
[Racing Post 2012年5月14日「Revealed: the real cost of owning and running a racehorse in Britain」]