BHA(英国競馬統轄機構)のCEOポール・ビター(Paul Bittar)氏は10月24日、大手ブックメーカー4社との4年間の新たな資金提供契約により競馬界には好結果がもたらされたと主張し、賭事産業の方がこの契約でより多くを得たと考えるのは当たらないと語った。
レーシングポスト紙で報じられたとおり、競馬界と大手ブックメーカーのベットフレッド社(Betfred)、コーラル社(Coral)、ラドブロークス社(Ladbrokes)およびウィリアムヒル社(William Hill)とは、新たな中期資金提供契約の締結に至ったことが発表された。
この契約は、締切1週間前に合意され来年4月1日から開始される第53次(2014-2015年度)賦課金計画に付加されることとなるが、引き続き競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)の下で実施される。4社は2014年4月から、新たに創設される奨励基金に年間450万ポンド(約7億2,000万円)の任意の資金提供を行うことになる。
この基金は、例えば出走頭数減少に対処するなど、より競争力のある英国競馬商品や賦課金収入の成長を生み出すため、最善の使途を提言する資金分配団体(メンバーは賦課公社、競馬界および大手ブックメーカー4社の代表)によって管理される。
さらにこの契約の一環として4社は、新たな任意の資金提供だけでなく、年間最低4,750万ポンド(約76億円)の法定賦課金の負担を4社が一体となって行うことで合意した。
しかしこの契約は、賦課金が課されない形となっている海外の賭事業から徴収のチャンスを逃している資金には及ばない。ビター氏は、「この契約は決して海外賭事業の正当性を認めている訳ではありません」と述べた。
ビター氏はこの契約に満足しているかと聞かれ、次のように語った。「より多くの資金が欲しいのは当然ですが、この契約でいくつかの成果があったと思います。これは競馬界と賭事産業が建設的な話し合いを行うことができ、実際競馬にとってかなり意味のある結果が出ており、私たちが懸命に取り組まなければならないという状況の中では、実際素晴らしい契約だと言えます」。
この契約で競馬界はブックメーカーに出し抜かれたという批判にどう答えるか聞かれ、ビター氏は「その批判を受け入れるつもりはありません」と述べた。
そして次のように続けた。「現在の法律の下では、ブックメーカーに対し任意の資金提供追加に関するいかなる契約の締結も強要できる理由はありません。ですから、競馬界が450万ポンド(約7億2,000万円)を確保した上に、賦課金計画における最低限の保障として4,750万ポンド(約76億円)を確実にできるということは、非常に意義深いことなのです」。
「競馬界がこの契約で割を食っていると言うのは当たらないと思います。この契約は、実際にはしっかりした土台と今後数年間にわたる確実性を与えてくれます。現在の法律下で欠陥があると思われる賦課金制度を巡って、政府とのやりとりを不可能にするものではありません」。
「最終的な解決策ではありませんが、この状況においてはかなりの成果です」。
ビター氏は、競馬界は他の賭事業者もこの4社に同調するよう働きかけるつもりだとし、次のように語った。「私たちはこの契約の一環として、他の大手ブックメーカーとりわけ海外賭事業および国内のベッティングショップ経営をしているブックメーカーと議論するつもりです」。
「小さな前進ですが、達成可能な事柄については現実的に対応すべきです。競馬界と賭事産業の間でまあまあの関係を築くことは、望ましいことであるはずです」。
現行の第52次(2013-2014年度)賦課金計画は、昨年ブックメーカー委員会(Bookmakers’ Committee)が見積もった7,290万ポンド(約116億6,400万円)を上回る7,560万ポンド(120億9,600万円)を創出すると期待されている。
また来年の第53次賦課金計画は、ベットフェア社(Betfair)の見積りによる780万ポンド(約12億4,800万円)の資金提供を含めて、7,570万ポンド(約121億1,200万円)を創出するとされている。さらに今回の新たな任意の資金提供で、2014-15年の賦課公社の全体収入は8,020万ポンド(約128億3,200万円)に達すると見込まれる。そして、最近の賞金額合意と競馬場からの保証と相俟って、2014年に記録的な賞金額を達成するのに寄与するだろう。
4社を代表する声明には、契約締結と競馬繁栄への公約に対する満足感が示されていた。
そして、「私たちは今後4年間にわたって競馬界の仲間と密接に取り組み、英国の競馬が世界一であるというステータスを維持し、かつ強化したいと思っています」と述べられている。
政府はこのニュースを歓迎したが、この契約は競馬界の資金調達制度にとって長期の解決策でないとし、賦課金制度の改革または代替案の検討を続けると述べた。
ヘレン・グラント(Helen Grant)スポーツ大臣は次のように語った。「競馬界と賭事産業の双方に対し、早期決断に至ったことを歓迎し、これらの交渉を促進した賦課公社の役割に感謝したいと思います」。
「この契約は今後4年間、英国全体で数千もの雇用を支えている競馬産業に財政的な安定性と確実性を与えます」。
このニュースが歓迎される中で、競馬界に5年間で4,000万ポンド(約64億円)の資金提供を保証する商業契約をこの夏に締結したベットフェア社からは異議が唱えられた。
ベットフェア社の広報部主任のスザンナ・ジル(Susannah Gill)氏は次のように語った。「提案された任意の資金提供の追加額は、これら4社がインターネット賭事収入からの資金で支払える額のほんの一部分です」。
「賦課金制度の根本が見直され、他社がベットフェア社の先例に倣うまでは、競馬界は財政的困難に悩まされ続けるでしょう」。
しかし、ウィリアムヒル社のCEOラルフ・トッピング(Ralph Topping)氏は、この契約を批判する人に対して“黙ってよく聞いてほしい”と述べ、次のように語った。「競馬はブックメーカーの主力商品であり、競馬の下支え、および開催日程を効率化して賦課金収入を最大限にする自発的な動機という2つの観点から、競馬界は今、資金調達の確実性を手に入れました」。
「今や、皮肉屋や疑い深い人達によく説明して黙らせ、英国人の想像をかき立てるスポーツとして競馬を立て直すことに専念すべきときです」。
今回の契約についての主要関係者のコメント コーラル社CEOアンディ・ホーンビー(Andy Hornby)氏
今回の4年契約は、ブックメーカーにとっても競馬界にとっても朗報で、双方にとってより親密で前向きな関係を築くことになるのは明らかです。コーラル社は英国競馬の重要な支援者であり、お互いの顧客と両産業で働く数千人の人々の利益となるよう、今後4年間競馬界と密接に取り組めることを楽しみにしています。 ラドブロークス社の声明
弊社は賦課金についての包括的な契約に一役買ったことに満足しています。政府に頼らずに契約を締結できたことは、この契約に関わったすべての組織にとっての証しであり、それは競馬産業にとって素晴らしいことです。今後4年間にわたりかなりの賦課金支払いを負担するに当たって、将来の問題解決への礎を築いたと確信しています。奨励基金を造成することで、ますます競合する市場となる競馬からの収入の改善に重点を置くことができます。 競馬賭事賦課公社のポール・リー(Paul Lee)会長
第53次賦課金計画の合意および競馬界と大手ブックメーカー4社との複数年契約締結に大変満足しています。これらは、収入の確実性、安定性、持続性に向けての土台となるでしょう。すべての関係組織は、英国競馬の成功とそれに投資することの利益を認識しています。賦課公社は、開催日程を効率化するなど競馬界と賭事産業への利益を最大化するために、資金の分配を確実にする建設的な役割を果たし続けるでしょう。本日の発表で明らかになった合意が、将来一連の問題についての前向きな話し合いの基礎を提供することを強く願っています。 ブックメーカー委員会のウィル・ロセフ(Will Roseff)委員長 法的に定められた締切日(10月31日)の前に、ブックメーカー委員会の第53次賦課金計画への勧告が、賦課公社全メンバーの満場一致による承認を得たことに満足しています。賭事産業が競合しながら運営を続けている中で、大小問わずあらゆるブックメーカーを代表するブックメーカー委員会が、全メンバーに受入れ可能な計画に合意できたことに満足しています。 |
By Bill Barber
(1ポンド=約160円)
[Racing Post 2013年10月25日「Bittar hails four-year levy deal as ‘very fair outcome’」]