ウォルヴァーハンプトン競馬場は英国で初めてタペタ馬場を採用する。馬場を芝からオールウェザーに転換する予定のニューキャッスル競馬場にとってもこの素材は一番の有力候補である。
ドバイワールドカップ開催前に厳しい批判にさらされたタペタ馬場は、10年前にウォルヴァーハンプトン競馬場に敷設されたポリトラックなどの他の選択肢を退け、同場のオーナーであるアリーナレーシング社(Arena Racing Company: ARC)によって選定された。
タペタはすでに、全世界においてはドバイワールドカップナイトを開催するメイダン競馬場を含む4場で採用されており、ゴドルフィンのドバイとニューマーケットの調教場およびミドルハムのマーク・ジョンストン(Mark Johnsoton)調教師の調教場でも採用されている(訳注:メイダン競馬場は5月14日、2014-15競馬シーズン開幕までにタペタを撤去しダート馬場を敷設することを発表した)。
4月29日のウォルヴァーハンプトン開催が、これまでのポリトラックで行われる最終日となり、新しいタペタ馬場は8月11日に始まる競馬開催までに徹底的にテストされるよう6月末までの敷設が目指されている。
元調教師のマイケル・ディキンソン(Michael Dickinson)氏が創設しオーナーを務めるタペタ・フッティングス社(Tapeta Footings)と契約を交わすにあたり、ARCの競走担当理事のジム・アレン(Jim Allen)氏は次のように語った。「世界中で認められたタペタのような素材を英国競馬に初めてもたらすのにふさわしい時期です。一方で、現在リングフィールド競馬場が採用しているポリトラックやサウスウェル競馬場が採用しているファイバーサンドについても両方とも馬にとって安全で調教師に高く評価されているので、継続して使用していきます」。
ウォルヴァーハンプトン競馬場のデイヴ・ロバーツ(Dave Roberts)場長は次のように付け足した。「入札過程において4つの素材を検討しました。それは、タペタ、ポリトラック、クッショントラックおよびセーフトラックです。ARCはタペタが持つ多くの利点が我々の競馬場にとって理想的だと考えたわけですから、将来ニューキャッスル競馬場にも同様の決定が下るかもしれません」。
「3月のドバイワールドカップ開催の前にハムダン殿下(Sheikh Hamdan)からいくつかの発言がありましたが、タペタが本当の意味で試されたのはその開催中で、あらゆる国から勝馬が出ました」。
ウォルヴァーハンプトン競馬場の馬場取締委員のファーガス・キャメロン(Fergus Cameron)氏は次のように語った。「2004年に開場した時のポリトラック馬場への反応は、“世界一の馬場だ”というものでした。多くのレースが施行され、年月とともに馬場がその有用寿命を終えてしまうのは避けようがありません。今や私たちは、馬場を転換するチャンスが与えられ、2004年のように素晴らしい気分を再び味わえることになります」。
ディキンソン氏は次のように語った。「ARCがウォルヴァーハンプトン競馬場のためにタペタを選んだことに満足しています。人工馬場の性能は常に進化しており、調査と開発に投資することで、そして特別にブレンドされた繊維とワックスを選ぶ上で科学的なデータを活用することで、我々の商品の質は向上しています」。
「競馬という素晴らしいスポーツに、私たちは情熱を傾けています。個人的には英国競馬界との関係を新たにすることを楽しみにしています」。
ポリトラック開発者のマーティン・コリンズ(Martin Collins)氏は、がっかりしたもののこの決定にあまり驚いていないと語った。
そして次のように付け足した。「ポリトラックは27ヵ国で導入されるという記録を達成し、英国では2場がポリトラックを採用していますが、旧グレートリーズ競馬場での競馬再開があっと言う間に決まった現状において、英国のオールウェザー競走を1つの馬場製造業者が独占することはできないでしょう。他の馬とは違う馬場状態を得意とする馬もいることは立証されているので、あらゆるオールウェザー馬場が採用されることは、円満な解決策となります。おそらくこの理由から、ARCはサウスウェル競馬場でファイバーサンドを使用し続けているのでしょう」。
「2012年10月にタペタより相応しいとしポリトラックが採用されたARC所有のリングフィールド競馬場を私たちは支援し続け、必要に応じてこれまで通りARCを全体的に支援します」。
2010年からウォルヴァーハンプトン競馬場で100勝以上を挙げているマーク・ジョンストン調教師はこのニュースを歓迎し、次のように語った。「我々の調教場にもタペタ馬場を選びましたので、ウォルヴァーハンプトンも同じ素材を選んだことに満足しています。ただ、タペタであろうとポリトラックであろうとワックスの質は双方とも高いので、ポリトラックが敷設されたとしても問題はなかったでしょう」。
ウォルヴァーハンプトン競馬場で過去5年間で45勝を挙げ、ドバイワールドカップナイトのUAEダービーをトーストオブニューヨーク(Toast Of New York)で制したジェイミー・オズボーン(Jamie Osborne)調教師は次のように語った。「少しばかり驚いていますが、素晴らしい選択です」。
「何事も1つに偏ると良くありません。ポリトラック馬場に対して文句はありません。マーティン・コリンズ氏が開発した馬場は素晴らしいと思います。ですが、いろいろな種類の馬場が導入されてもいいでしょう」。
騎手の間ではルーク・モリス(Luke Morris)騎手は「前向きな一歩だと考えます。馬場は変更が必要で、タペタはドバイで良い馬場であると認められています」と述べ、シルヴェストル・デ・ソウサ(Silvestre de Sousa)騎手は「跳ね返りが酷く、タペタになることでその点が改善されることを望んでいます。ドバイと同様に、タペタはここでもうまくいくでしょう」と語った。
By David Carr
タペタは英国の気候にどのように反応するか
英国競馬にとってタペタは新しい素材だが、世界最高賞金を提供するドバイワールドカップを施行するメイダン競馬場が2010年から採用していることから多くの競馬関係者にとってすでにお馴染みである。
しかし誰もが愛している素材ではない。今年のドバイワールドカップが開催される前に、この馬場が撤去されるという根強い噂があった。主な問題の1つはドバイの極端な気温への反応である。暑さのために馬場は非常に遅くなる一方で、大雨の後ではスピードが上がる。
もしかするとこのちぐはぐな馬場状態を考慮すれば、騎手がペースを読むのが難しいと考えるのは当然なのかもしれない。
それを念頭に入れれば、ウォルヴァーハンプトンとニューキャッスルが焼けつくような気温について憂慮する必要はなく、英国の多様性に富んだ天候にこの馬場がどのように反応するのかを見るのは興味深いだろう。
しかし、これは馬場傾向への不平の種とはなり得ないだろう。リングフィールド、サウスウェルおよびウォルヴァーハンプトンでは内枠が遅いように感じられるが、これは気温に関係なくメイダンには当てはまらないようである。
有利な脚質があるわけでもなく、タペタ馬場ではその時のペースでレース展開が決まるようである。
賭事客はそれゆえ、どの馬もタペタ馬場に適応すると考えてはならず、メイダン競馬場ではタペタを得意とする馬が勝利を収めている割合は高い。実に、一番最近のドバイワールドカップ勝馬アフリカンストーリー(African Story)は芝では特に目覚ましい活躍はなく、ただタペタを得意としていた。
By Ron Wood
[Racing Post 2014年4月29日「Wolverhampton opts for Tapeta」]