2015年にケンタッキー州で供用される種牡馬の種付料がほぼすべて発表され、約175頭が5,000ドル(約60万円)以上の種付料で供用されることが明らかとなった。支配的なサイアーライン(父系)を持つ種牡馬はほぼ五分五分の形勢であり、ノーザンダンサー(Northern Dancer)系種牡馬53頭がミスタープロスペクター(Mr. Prospector)系種牡馬52頭を僅差で上回り、他のいくつかの少数派系統も支持されている。ノーザンダンサー系が全体の30%、ミスタープロスペクター系が全体の29%を占めるが、これはノーザンダンサー系が典型的な米国馬ミスタープロスペクター系よりも優位になっているという、小さいが予想外の変化である。
このバランスは、ケンタッキー州の種付料5,000ドル以上の供用種牡馬が259頭であった10年前の2005年と似ている。しかしその当時はミスタープロスペクター系種牡馬が85頭でノーザンダンサー系種牡馬75頭を上回っており、全体に対する割合はそれぞれ33%と30%であった。
ノーザンダンサー系の支流としてストームキャット(Storm Cat)系は依然として支配的な地位を維持しており、今やノーザンダンサー系種牡馬の13%を占める。一方で、エルプラド(El Prado)を経由してアメリカナイズされたサドラーズウェルズ(Sadler’s Wells)系も増加している。また、ダンジグ(Danzig)系も依然として勢力を保ち、全体の種牡馬頭数が減少したことと産駒ウォーフロント(War Front)の活躍によりその割合が1%増加した。なお、デピュティーミニスター(Deputy Minister)系は1%減少した。
ミスタープロスペクター系の支流の中では、ファピアノ(Fappiano)系が最大の支配力(10%)を持ち、その次にゴーンウエスト(Gone West)系、ディストーテッドヒューマー(Distorted Humor)系、スマートストライク(Smart Strike)系、ストリートクライ(Street Cry)系が続く。
2005年に3割ずつを占めていたこの2系統の次の階層に位置する系統も、議論を呼ぶものであった。シアトルスルー(Seattle Slew)系はその産駒エーピーインディ(A.P. Indy)を経由した14頭を含む21頭(8%)の種牡馬を出し、シアトルスルーのすぐ下位のヘイルトゥリーズン(Hail To Reason)系は14頭(5%)の種牡馬を出していた。2015年には、3位の座は完全にシアトルスルー系のものとなったが現在この系統の種牡馬31頭(18%)はすべてエーピーインディを経由している。一方ヘイルトゥリーズン系種牡馬は12頭(7%)となった。いずれも2005年から増加しているが、シアトルスルー系とヘイルトゥリーズン系の差は、エーピーインディ産駒とりわけプルピット(Pulpit)の健闘で現在大きく開いている。
2005年と2015年のケンタッキー州供用種牡馬のサイアーライン | ||
サイアーライン | 2005年 | 2015年 |
ノーザンダンサー系 | 30% | 30% |
ミスタープロスペクター系 | 33% | 29% |
シアトルスルー系 | 8% | 18% |
ヘイルトゥリーズン系 | 5% | 7% |
インリアリティ系 | 2% | 5% |
ナスルーラ系(シアトルスルーを経由しない) | 10% | 5% |
グレートアバヴ系 | * | 1% |
ヒズマジェスティ系(リボー系) | 2% | * |
マジェスティックプリンス系 | * | * |
*:1%未満
2015年に9頭(5%)でランキング5位となったインリアリティ(In Reality)系種牡馬は、サクセスフルアピール(Successful Appeal 父ヴァリッドアピール)を除けば、ほぼすべてがティズナウ(Tiznow)とその産駒を経由している。マンノウォー(Man O’ War)やマッチェム(Matchem)やゴドルフィンアラビアン(Godolphin Arabian)に遡る珍しいインリアリティ系の種牡馬は、2005年にはたった2%であった。ここで話題にしてきた他のすべての馬は、エクリプス/ダーレーアラビアン(Eclipse/Darley Arabian)を祖とする系統の出身である。ヘロド/バイアリーターク(Herod/Byerley Turk)を祖とする系統は、ケンタッキーでは数十年前に途絶えてしまった。
残りのサイアーラインもほとんど退化している。シアトルスルーを経由しないさまざまなナスルーラ(Nasrullah)系[カロ(Caro)系、ブラッシンググルーム(Blushing Groom)系、イエスイッツトゥルー(Yes It’s True)系など]は5%減少した。ブラッシンググルーム系は大幅に減少し、2005年にケンタッキー州に13頭(5%)いたその系統の種牡馬を代表するのは、今やアニマルキングダム(Animal Kingdom 父ルロワデザニモー)とレヴォリューショナリー(Revolutionary 父ウォーパス)だけとなった。
カロ系種牡馬は5頭から3頭に減少し、その3頭はミズンマスト(Mizzen Mast 父コジーン)と、いずれも父がインディアンチャーリー(Indian Charlie)であるアンクルモー(Uncle Mo)およびリエゾン(Liaison)である。
イエスイッツトゥルーは、残された唯一のシアトルスルーを経由しないボールドルーラー(Bold Ruler)系種牡馬である。2005年には、イエスイッツトゥルー、グリッターマン(Glitterman)とその産駒のシャンパリ(Champali)、ボウジーニアス(Beau Genius)、コブラキング(Cobra King)およびフィットトゥファイト(Fit To Fight)の6頭のボールドルーラー系種牡馬がいた。
マッチョウノ(Macho Uno)とその産駒ムーチョマッチョマン(Mucho Macho Man)は、2005年にはホーリーブル(Holy Bull)しか存在していなかったグレートアバヴ(Great Above)系種牡馬の増加に100%貢献している。このサイアーラインは約100年遡るとインクルード(Include)の先祖でもあるヒムヤー(Himyar)に辿りつく。インクルードの父ブロードブラッシュ(Broad Brush)は2005年のケンタッキー州において、ヒムヤー系を代表する唯一の種牡馬であった。
リボー(Ribot)系は2015年、いずれもアルバートザグレート(Albert The Great)産駒であるノービズライクショービズ(Nobiz Like Shobiz)とアルバータスマキシマス(Albertus Maximus 種付料非公開)だけに減少した。アルバートザグレートの父はゴーフォージン(Go For Gin)、2代父はコーモラント(Cormorant)、3代父はヒズマジェスティ(His Majesty)である。ヒズマジェスティ系は2005年にはプレザントコロニー(Pleasant Colony)産駒の3頭がいたが、その中で最後に残ったプレザントリーパーフェクト(Pleasantly Perfect)は2014年秋にトルコに向けて旅立った。
スーパーセイヴァー(Super Saver)とモナルコス(Monarchos 種付料4,000ドル)はケンタッキーで供用される最後のマライアズモン(Maria’s Mon)系の現役種牡馬である。レイズアネイティヴ(Raise A Native)系のこの系統は、マジェスティックプリンス(Majestic Prince)を経由している。
私たちはこの10年で、プリンスジョン(Prince John)系やダマスカス(Damuscus)系、さらにはバックパサー(Buckpasser)系のようないくつかの影響力の大きいサイアーラインを失った。ただ幸運にも、これらの種牡馬の血統を受け継ぐ牝系を通じてその遺伝子が引き継がれ、その影響力は遺伝子プールにおいて依然として強力である。
By Anne Peters
(1ドル=約120円)
[The Blood-Horse 2014年11月29日「Kentucky Sire Lines for 2015」]