海外競馬情報 2015年10月20日 - No.10 - 6
国際血統書委員会、最高レベルの公正性を満たさない国を追放(国際)【生産】

 国際血統書委員会(International Stud Book Committee: ISBC)が合意したイニシアティブの下、サラブレッド生産が最高レベルの公正性を満たさない国は、国際的な競馬界および生産界から追放される。

 現在承認されている69の血統書機関は、新たな指令順守への同意が義務付けられた。これを順守しない場合、その機関には厳格な制裁措置が採られる。

 このイニシアティブは、第40回ISBC年次総会(9月28日・ニューマーケット)で合意された。ISBCのジョニー・ウェザビー(Johnny Weatherby)会長は、IFHA(国際競馬統括機関連盟)の年次総会(10月5日・パリ)のプレゼンで、このイニシアティブについて次のように説明した。

 「競走馬がどの国の生産馬であっても、そのアイデンティティーが確実に保証されていることを競馬統括機関が認識できるよう、我々は忍耐強く取組み続けなければなりません」。

 「将来、サラブレッドの売買や競走が一層国際的になり、より多くの国々が生産に関与することは、疑いようもありません。ISBCは最高レベルでそれを支援、助長し、規制を行っていきます」。

 「このため、新たな指令順守は、承認血統書機関に要求することを全て明確にし、これに違反した機関に対しては確実に制裁を行うようにします」。

 同会長は、先祖のジェームズ・ウェザビー(James Weatherby)氏が競馬界から虚偽や不正確な血統を排除することを第一の目標に、200年以上前に最初の血統書を発行したことを、IFHA年次総会参加者に想起させた。そして、「それを実施する権限を持つことが重要です」と述べた。

 ウェザビー会長は、次のように続けた。「国際的に合意された指令順守や手順に違反した血統書機関は、その承認が取り消されます。その血統書の登録馬は、指令順守が全面的に実施されているとISBCが判断するまで、輸出できず、海外のレースに出走できなくなります」。

 「国際的なサラブレッド生産と競馬の基礎は、確固とした、最高レベルの公正性でなければなりません」。

同会長は、「私たちは、最高レベルの新技術を駆使して、厳正な検査を実施し、指令順守を実施していきます。確かに大変な課題ですが、対処しなければなりません」と付言した。

 このイニシアティブが合意に至った時、ISBCはタイをそのメンバー国から除外した。

 ウェザビー会長は非公式に、タイが除外されたタイミングは偶然であったと説明した。「タイの除外については3年間検討されており、アジア血統書委員会(Asia Stud Book Committee)とISBC事務局は、タイの違反問題を解決しようと相当な努力を行ってきました。しかし、このタイミングでタイを除外することで、新たな指令順守がどのように機能するか実際に示すことになりました」。

 他の問題について、ウェザビー会長は、生産界が直面する最大の課題の1つは、“サラブレッドそのもの”かもしれないと述べた。しかし、ISBCは人工授精を支持しないだろうと強調した。

 「人工授精・クローニング・胚移植を認めません。さらに、IFHAと生産界との話し合いの後、私たちは“ゲノム操作はどのようなものであれ、サラブレッドとしてのステータスを失わせることになる”という明確なメッセージを送りました。サラブレッドの生産は、自然であるべきです」。

 科学の発展について、ウェザビー会長は次のように語った。「近年の動物育種における科学の発展により、たくさんの種に対する遺伝学的理解がますます深まっています。種の脆弱性をなくし、長所を増幅させることにより、サラブレッド生産にはさらなる改良の機会が与えられるでしょう」。

 「しかし、馬に関する科学は新しいものであり、生産界はそれがサラブレッドの利益のために採用されるように慎重なアプローチを採っています」。

 「ISBCと生産界は、科学の発展に注意を払っています。また、最近アイルランドで開催された国際生産者会議でこの課題が審議されたことに勇気づけられました。この会議では、“責任ある客観的アプローチの採用”、“より多くの情報収集”、“品種とサラブレッドの健康面を強化する可能性のある技術の評価”が圧倒的多数で可決されました」。

By Howard Wright in Paris

[Racing Post 2015年10月6日「ISBC unveils tough sanctions for failure to meet standards」]