6月24日、英国のEU(欧州連合)離脱という重大決定を受けて、競馬界では衝撃の波が広がった。しかしBHA(英国競馬統轄機構)は、国会で約束された賦課金制度の代替計画は今後も存続し、政府と一緒に取り組み続けると明言した。
政府は今年3月、2017年4月までに賦課金制度に代わる新制度を導入する予定であると発表していた。BHAはEU離脱の決定を受け、この計画は軌道に乗っており達成可能であると述べた。
BHAの業務担当理事であるウィル・ランブ(Will Lambe)氏はこう語った。「BHAは英国のEU離脱決定後も、文化・メディア・スポーツ省や環境・食料・農村地域省などの政府関係者および他の競馬団体と一緒に取り組み、英国競馬界の利益を代弁していきます」。
同氏はEU離脱の競馬界全体に与える影響を予測するのは時期尚早としたものの、こう付言した。「賦課金制度の代替計画は政府の約束であり、今後も変わりありません。この計画は超党派の支援を受けていますし、保守党全体から支持されています」。
「英国中で、競馬の経済的・文化的・社会的重要性が認識されており、その認識は一層高まっています」。
賭事産業の反応
国民投票の結果については、賭事産業、とりわけオンライン賭事の拠点をジブラルタルに置くブックメーカーの間でも熟慮されている。
ラドブロークス社(Ladbrokes)のCEOジム・マレン(Jim Mullen)氏はこう語った。「国民投票の結果により、新たな問題が生じるのは間違いありません。私たちは拙速に行動する前に、我々の事業と賭事産業にもたらされる影響を十分理解して対応するために時間を掛けなければなりません」。
大手ブックメーカーのラドブロークス社とウィリアムヒル社(William Hill)の株価は、ロンドン株式市場の取引開始後1時間で10%急落した。
英国がEU離脱を決めた直後、ポンドは1985年以来、31年ぶりの安値水準に急落し、ロンドン株式市場も8%超の値下がりとなった。
キャメロン首相が辞任を表明した時、FTSE100指数(ロンドン株式市場の株価指数)は500ポイント超下落して5,808.72となったが、その後6,000.00に戻した。
ブックメーカーは衝撃を受け、なぜラドブロークス社が前夜にEU残留派の勝利に1-10(1.1倍)のオッズをつけるという失態を犯したのか理解できないでいた。そして世界をあっと言わせた驚きの結果により、競馬界で最も影響を受ける部門はブックメーカーなのではないかと感じていた。
競馬界の反応
ニューマーケットのサー・マーク・プレスコット(Sir Mark Prescott)調教師は6月24日、自分は残留に投票したが、離脱派の勝利は抗議票によるものだと考えていると語った。
プレスコット調教師はこう語った。「残留派と離脱派のどちらにつくかを決めるのに3日掛かったジョンソン前ロンドン市長は信頼できないので、残留に投票しました。英国独立党のファラージ党首も支持しません」。
「たった2%の差で全てを放り投げてしまうのは、ばかばかしいような気がします。離脱派60%、残留派40%であれば納得いきますが、単に抗議のために投じられた票もあったと考えます」。
競馬界に入る前は金融街シティに勤務していたマントンのジョージ・ベイカー(George Baker)調教師は、自身のブログでこう語った。「株式市場はパニック状態。ポンドは急落。その瞬間(朝5時45分ごろ)をテレビで見ていて、金融危機の朝を鮮明に思い出しました。取引所の立会場は討論会場のようになりました。しかし、最近は大半が顔の見えないコンピュータによる取引ですので、顧客の相談に乗ったり予想をするのが難しくなりました」。
「今回のEU離脱の決定が、長期的に見て英国にとって正しい決定となることを強く望んでいます。子どもたちと彼らの将来にとっても」。
ヒューゴ・パーマー(Hugo Palmer)調教師はツイッターで、この歴史的ニュースをサッカーに例えてこう述べた。「この投票結果の後すぐに離脱できるわけではないという認識が欠けています。EU離脱に向けて、これからとても長いプロセスを始めなければなりません」。
「ひいきのサッカーチームにうんざりして競技場の定期入場券をキャンセルするような簡単なものではありません」。
陽気なのはジェイミー・オズボーン(Jamie Osborne)調教師で、リチャード・フェイヒー(Richard Fahey)調教師に対してこうツイートした。「おい、リチャード・フェイヒー、ビザをとりに行ったらどうだい?」(訳注:フェイヒー調教師は英国のみならず、アイルランド、フランス、カナダなどで国際的に活躍している)。
By Jack Haynes
[Racing Post 2016年6月24日「BHA: Levy replacement on track despite Brexit」]