アンドレ・ファーブル(André Fabre)調教師は、いまひとつ芳しくない2016年シーズンを送った。しかし2017年シーズンが始まった今、30勝(うち重賞7勝)という際立った成績を挙げ、雷鳴がとどろくような活躍を見せている。謎めいた名伯楽の復活である!
本紙は昨年10月27日、『アンドレ・ファーブル、灰色の年』というタイトルで、シャンティイの名伯楽が不振のシーズンを過ごしていることを取り上げた。ファーブル調教師とは居間に招いてもらえるほど親しくなくても、同調教師はこの記事を数行読んで嘲笑していたのではないかと想像する。なぜならその6ヵ月後、過去30年間にリーディングタイトルを27回獲得した同調教師が再びトップに立っているからである。
4月末にこれほどの好成績を挙げていることはかつてなく、しかもこの成績は、つい最近パリで競馬シーズンが始まってから達成されたものである。同調教師はこの数週間、施行された重賞11レースのうち7レースを制している。調教師生活において、このような快進撃は初めてである。さらに強調すべき点は、シーズンのこの時期にこれほどまで管理馬を仕上げてきたことはなかった。不振だった昨年は、9月になってやっとこの勝利数に到達している。
4月20日の時点で、同調教師の管理馬は30回もゴール板を先頭で駆け抜けている。これもまた、めったに見られない驚異的な成績である。シーズン序盤でこのような素晴らしい成績を達成したのは、37勝を挙げた1997年以来である。リステッド競走もすでに11年間で最多の3勝を挙げている。これ以上ないというほどの好成績である!
優秀な管理馬
この成績をどのように説明できるのだろうか?まず、もちろん同調教師はそのことについて話さないだろうが、昨年は他の多くの厩舎と同様に、その厩舎がウィルスに感染したことを忘れてはならない。当然、管理馬の多くは期待されたような成績を残すことができず、勝利数において遅れを取った。最近ジャックラフィット賞(L)を制してガネー賞(G1 5月1日)を目指すウルトラ(Ultra)は、そのような状況にあった1頭である[訳注:ウルトラはガネー賞を回避することになったが、同じくファーブル厩舎のクロスオブスターズ(Cloth of Stars)が同レースを制した]。昨年はその他にも、とりわけ2歳・3歳の管理馬が長期間出走することができなかった。今シーズンは現在までに、管理馬89頭(過去最高)が115回走っていることから、昨年の状況がうかがえる。今シーズンの快進撃は当然、これらの管理馬頭数と出走回数によって説明できるが、管理馬を選別することができる厩舎ならではの偉業でもある。権威ある勝負服を背負う馬、クラシック競走に強い血統の馬を集め、優秀な騎手を起用できれば、レースで勝つことは"より簡単"である。"簡単"ではなく"より簡単"というところに留意していただきたい。
沈黙を守るファーブル調教師
馬を調教して仕上げ、その馬に適切なレースを見つけ出すファーブル調教師の才能は、新しいものではない。39歳から調教を始めた同調教師は、現在71歳にして馬と競馬番組に誰よりも精通している。そして、このような能力が退化することはめったにない。しかし、この快進撃にもかかわらず同調教師は沈黙を守っており、私たちは年々このような姿勢に物足りなさを感じている。若い調教師にかぎらずアラン・ド・ロワイエ-デュプレ(Alain de Royer-Dupré)氏、ジャン-クロード・ルジェ(Jean-Claude Rouget)氏、ヘッド兄妹などのベテラン調教師も、競馬ファンとコミュニケーションを図っているが、ファーブル調教師は自身のルールを曲げようとしない。しかし、同調教師がそのような態度を変える可能性はまだあるかもしれない。マルセル・プルーストが言ったように、「期待することをやめることは、絶望そのものである」。
[訳注:ファーブル厩舎の3歳馬では、アルウケア(Al Wukair)がジェベル賞(G3)、ヴィアラヴェンナ(Via Ravenna)がアンプリュダンス賞(G3)、グラフィット(Graphite)がフォルス賞(G3)を制している。また古馬では、クロスオブスターズがガネー賞(G1)、ジミートゥータイムス(Jimmy Two Times)がミュゲ賞(G2)を制している。他に、アキヒロ(Akihiro 父ディープインパクト)、プリュマティック(Plumatic)、フランツシュベール(Franz Schubert)、パンプルムース(Pamplemousse)、リューイング(Rueing)、ソレイユマラン(Soleil Marin)などの活躍馬がいる]。
By François Moreau
[Paris Turf 2017年4月22日「André Fabre, l'année folle」]