BHA(英国競馬統轄機構)は今や、拡大するドーピングとの戦いに対応する策として、すべての平地重賞競走と障害G1競走の1着~4着馬に薬物検査を行っている。また来年からは、採取されたすべての検体に、コバルト(cobalt)のような数々の新薬物の検査を行う。
これまで自動的に薬物検査が実施されてきたのは、優勝馬のほか指定された馬だけだった。そして、採取された検体の約10%だけが、コバルトの上昇レベルを検出する追加検査に送られていた。コバルトは自然発生の微量元素であり、高いレベルで投与された場合、競走能力を向上させる可能性がある。
BHAはマスコミに向けた説明会でこの新しい体制を発表した。そして、公正性・コンプライアンス・薬物規制の改善を図るためにBHAが投資を行い強く関与していることを強調した。すでにBHAの職員の60%がこの取組みに携わっており、年間数百万ポンドが投じられている。
BHAの最高規制責任者であるブラント・ダンシー(Brant Dunshea)氏はこう語った。
「2018年9月1日、検体採取に関する方針を変更しました。平地重賞競走と障害G1競走の1着~4着馬のすべてに薬物検査を実施するようになりました。この措置を取る契機となったのは、国際的な重賞競走の地位を一層保護し、英国の最高級の競走の公正性を強化したいという願望です。私たちは、BHAが国際基準を定めていると見られるよう熱心に取り組んでおり、この新しい体制が主要競馬国の国際基準となることを望んでいます。今や、これまで検体の基準検査に含まれていなかったコバルトなどの追加分析を基準検査に盛り込むことができるようになりました」。
ダンシー氏によれば、競馬界は次の2つの物質の検査能力も高めている。① 競走能力向上薬の合成ペプチド、②"ミルクシェイク"と一般的に呼ばれる、運動中の馬の体内で作られる乳酸を中和する酸中和剤。
ダンシー氏は、「薬物検査を強化するために、職員の動員の面での問題が生じてきました。とりわけ、英国チャンピオンズデーのような複数の重賞競走が施行される日には、人員の大幅な再配置が必要となります」と付言した。
BHAの公正性保証部長クリス・ワッツ(Chris Watts)氏も、総勢25名の強力な調査チームに人材を追加採用し、薬物検査強化に積極的に取り組むために策定された業務手順と優先順位の変更を行うと発表した。
このマスコミに向けた説明会には、BHAの公正確保・規制担当理事であるティム・ネイラー(Tim Naylor)氏も出席していたが、これまで密室で行われてきたBHAの内部プロセスを一般の人々に公開するのは珍しいことだった。
BHAは、公正確保体制をよりしっかりとして効果的なものにするだけでなく、より開かれて透明性の高いものとするために尽力していると述べた。また、独立機関である懲罰委員会よりも先に、案件をヒアリングに持ち込み、証拠開示などの一層多くの情報を関係者に提供するように模索していると付言した。
By Tom Kerr
[Racing Post 2018年11月28日「BHA ramps up anti-doping regime with increased testing in Pattern races」]