新聞各紙のトップ記事や国際テレビ放送は、逃亡犯条例改正案をめぐる香港の混乱の凄まじい光景を詳細に伝えている。しかし9月1日(日)、シャティン競馬場では新たな競馬シーズンが無事に開幕した。
入場者数は予想どおり、昨年の開幕日から8.6%減少して6万8,271人となった。しかし注目すべきことに、賭事売上げ(全10レース)は2.8%増の12億8,800万香港ドル(約180億3,200万円)に上った。午後のレースの合間に観客席で中国の大きな国旗がはためいていたのが、国家主義的あるいは政治的な感情が見られた唯一の瞬間だった。それ以外では、賭事客たちはいつもの熱心さで馬券購入にいそしんでいた。
8月31日(土)夜には違法とされている抗議デモ行進が香港の街のあちこちで行われた。しかし9月1日(日)には雰囲気はがらりと変わり、各レースの終盤で馬への応援の声が鳴り響いた。
香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club: HKJC)のCEOウィンフリード・エンゲルブレヒト-ブレスケス(Winfried Engelbrecht-Bresges)氏は、地元賭事客の競馬への支持と熱意を称賛した。そして「HKJCはシーズン初の競馬開催を成功させました。それはHKJCがファンから強い支持を受けていることを示しています」と述べた。
「シーズン初日が滞りなく開催されるために献身的に取り組んだスタッフにも感謝しています。2017年の初日と同水準の大勢の入場者数にとても驚いています。これが香港競馬の堅実性を示していること、そしてこの勢いが続くことを望んでいます」。
ブレスケス氏は共同賭事プールを通じて海外のパートナーからの売上げが5,000万香港ドル(約7億円)増加したことも報告し、「このことは海外市場において香港競馬に魅力があることを示しています」と付け加えた。
「香港が現在大変な状況にあることは理解しています。ただ本日、競馬場にもたらされた前向きなエネルギーは大変励みになります。観客の雰囲気と期待感は非常に素晴らしいものでした」。
シャティン競馬場から10マイル以内の場所では、抗議デモ参加者が香港国際空港から九龍・香港島につながる鉄道エアポートエクスプレスを運休に追い込み、連絡道路も封鎖した。
多くの人々が最後まで無事に開催されるか心配していたシーズン開幕日は、いつもと変わらぬ調子で始まった。第1レースでは、リーディングのザック・パートン騎手が騎乗した単勝3.2倍の1番人気馬グッドランナーズウェイ(Good Runners Way)が、ジョアン・モレイラ騎手のリージェンシージェム(Regency Gem)の終盤の追込みをかわして優勝した。
そして、リーディングタイトルを13回獲得した元騎手のダグラス・ホワイト調教師が新たなキャリアを首尾よくスタートさせたのを目の当たりにできた。管理馬アドニス(Adonis)が豪州人のリーガン・ベイリス(Regan Bayliss)騎手を背に第2レースを制したことで、初勝利をマークしたのだ。アドニスは同調教師にとってわずか2頭目の出走馬であり、第1レースで最初の出走馬ルパナシュ(Le Panache)は4着に敗れていた。
ホワイト調教師は、当初調教を嫌がっていたがリラックスすることを覚えたアドニスで勝利を挙げられてとても満足していると述べた。同調教師の調教のアプローチには、圧倒的に強かった騎手時代と同様の熱心さが見られた。
一方、ホワイト調教師と同様に南アフリカ出身のライル・ヒューイットソン(Lyle Hewitson)騎手は、香港で初騎乗したこの日は勝鞍に恵まれず、5回騎乗したうち1回だけ3着となった。
By J A McGrath
(1香港ドル=約14円)
[Thoroughbred Racing Commentary 2019年9月1日「Politics shrugged off as Hong Kong punters return to Sha Tin with their usual zeal」]