BHA(英国競馬統括機構)は2月6日、競走から引退した馬のトレーサビリティー(追跡可能性)をさらに改善するために、引退競走馬の登録方法の変更を発表した。
既存の競馬管理サイトに組み込まれるこの新たなシステムでは、引退した馬の新たな所在を、馬主だけでなく調教師も登録できるようになる。これは、競走から完全に引退した馬のトレーサビリティーをできるだけ高めることを目的としている。
これまでのシステムでは、馬主だけが所有馬の引退後の行方を登録できた。しかし最近実施された競走馬のアフターケアに関する調査は、馬主に助言する調教師が競走馬を引退させる最初の決定に頻繁に関わっていることを示していた。
2020年2月13日に立ち上げられる簡易化されたオンラインシステムでは、馬主も調教師も情報を提供することができる。またこのプロセスの一環として、引退競走馬を再びレースに供さないというオンライン上の合意もなされる。そして、引退馬の新たな管理者の詳細を提供することが求められる。
登録が終了すれば、引退馬の新たな管理者に対して「30日以内に所有権の移転を完了させる義務がある」という通知が送信される。新たな管理者がその義務を怠った場合、取引基準局(Trading Standards)から最高5,000ポンド(約70万円)の過料を科される。
BHAのウェブサイトにある専用ページ(britishhorseracing.com/retire)では、馬の引退後の状況をチェックすることができる。このページは3月2日から閲覧可能である。
BHAの馬健康・福祉担当理事のデヴィッド・サイクス(David Sykes)氏はこう語った。「長期にわたる競走馬の福祉への責任と義務を示すためには、競走馬の生涯のどの段階においても馬の所在を追跡できることが極めて重要です」。
「競走引退後の馬には多くの進路がありますが、まずは競走馬が引退したことを確認するのが初めの一歩となります」。
「本日の発表は、引退競走馬分野における重要で顕著な進歩を示しています。私たちはこれにより、できる限り記録管理が正確で最新のものであることを保証できます」。
馬主協会(Racehorse Owners Association)のCEOチャーリー・リヴァートン(Charlie Liverton)氏はこう語った。「馬主たちは大きな喜びをもたらしてくれた所有馬が競走引退後に適切に受け入れられるように、細心の注意を払っています。よりシンプルで使いやすいこのシステムの始動は前向きな一歩に間違いありません。またこのシステムでは、競走馬の引退後の計画に関わる調教師たちも登録を手伝うことができます」。
"競走馬の再調教(RoR)"のCEOダイ・アーバスノット(Di Arbuthnot)氏はこう語った。「RoRは引退競走馬の福祉を担当する公式慈善団体として、トレーサビリティーの向上を重視しています。RoRの重要な役目の1つは、馬主・調教師が引退競走馬の新たな拠点探しや再調教を行うのを支援し助言することです」。
「馬を競走から引退させるプロセスの変更は、RoRの登録馬数を増やすチャンスにもなります」。
「RoRに登録することにより、馬の所在や活動を知ることができるだけではありません。引退馬の新たなオーナーは、RoRが運営する広範囲にわたる啓蒙活動プログラムの恩恵を受けられます。このプログラムは新たなオーナーが元競走馬をより良くケアし、元競走馬によって多くの喜びを得られるように支援します」。
これに加えて、独立機関である馬福祉委員会(Horse Welfare Board)の新たな戦略が間もなく発表される予定である。この新たな戦略により、競走馬のトレーサビリティーが長期にわたって検討されるようになるだろう[訳注:馬福祉委員会のメンバーには、獣医師免許を持つジェームズ・ギヴン調教師や元スポーツ大臣のトレイシー・クラウチ氏などがいる]。
[BHA Press Release 2020年2月6日「Improved traceability for retired racehorses due to new simpler online process」]