第4回競走馬アフターケア国際フォーラム(International Forum for the Aftercare of Racehorses:IFAR)が、第38回アジア競馬会議(Asian Racing Conference:ARC 南アフリカ・ケープタウン)の一環として開催され、競馬が盛んな4ヵ国の代表が発表した。それらの発表では、アフターケアの実践方法の進歩が紹介され、効果があるアフターケア・プログラムの発展の重要性について議論が行われた。
ARCとIFARは、アジア競馬連盟(Asian Racing Federation: ARF)と南アのARC運営委員会により主催された。ARC運営委員会を構成するのは、フメレラ・ゲーミング&レジャー社、レーシング・アソシエーション(RA)、ゴールドサークル・レーシング&ゲーミング・グループ、ケニルワースレーシング、南アフリカ・ナショナル・ホースレーシング・オーソリティー(NHA)である。
IFARの議長を務める"競走馬の再調教(RoR)"のCEOダイ・アーバスノット(Di Arbuthnot)氏は、こう語った。「本日の発表は、アフターケアを優先的に実施し、競走馬をその生涯にわたって保護するプログラムを確立するために、世界中のサラブレッド産業の取組みが飛躍的に発展していることを明らかにしました。ARC運営委員会がアフターケアの重要性を再認識し、ARC参加者がIFARからのメッセージを共有できるようにしてくれたことに、私たちは感謝しています」。
NHAのアーノルド・ハイド(Arnold Hyde)競馬監督担当理事と血統書部門のヘイゼル・カイヤ(Hazel Kayiya)競馬運営担当理事は、南アのアフターケアに関する方針について発表した。南アは経済不況・教育格差・不完全なトレーサビリティー(追跡可能性)などが原因で難題に直面しているが、NHAはアフターケアに取り組むにあたり前進を遂げている。ハイド氏は、NHAが馬主に対して競走馬の生涯にわたる福祉に責任を持たせるために新ルールを策定したことについて話した。またカイヤ氏は、サラブレッドの個人取引やセリへの規制の強化によってトレーサビリティーの向上を図るためにNHAがルールの草案を作っていると発表した。
JRA馬事部の上席調査役の滝澤康正氏は、アフターケア分野における日本の進化について話した。JRAは、引退馬繋養牧場や引退馬へのセカンドキャリア斡旋に取り組む団体に財源を支給するプログラムを開始させている。このプログラムは、英国のRoRや米国のサラブレッド・アフターケア同盟(Thoroughbred Aftercare Alliance)をモデルとしている。滝澤氏は、JRAは引退競走馬が様々なキャリアで活躍できるよう支援することに関わっていると述べた。
韓国馬事会(KRA)の獣医部門において獣医規制&福祉チームの副部長を務めるジンカップ・キム(Jinkap Kim)博士は、動物愛護運動家たちが発表したドキュメンタリービデオによる影響を詳しく話した。このビデオでは、元競走馬が屠場で残酷に扱われる場面が撮影されている。馬の福祉を向上させる努力の一環として、KRAはその馬福祉委員会の充実化を図り、馬の福祉に関するガイドラインを修正し、資格試験や検定試験で福祉に関する知識を問うようにし、引退競走馬のための特別委員会を設立した。
レーシングヴィクトリア(Racing Victoria)の馬福祉担当部長であるジェニファー・ヒューズ(Jennifer Hughes)氏は、アフターケアに関する豪州の方針を詳しく語った。その中には、セカンドキャリアに進むための適合性による元競走馬の分類、サラブレッドをその生涯のどの段階においても追跡できるトレーサビリティー・プログラムの簡易化などが含まれていた。
世界馬福祉協会(World Horse Welfare)のCEOロリー・オワーズ(Roly Owers)氏は、福祉への意識の高まりと馬の生涯にわたる適切な福祉の実践方法についての見識を示した。それには、いくつかの状況において安楽死措置を取る重要性も含まれていた。同氏は、競馬の社会的認証や、競馬産業が競走馬の倫理的扱いについて一般の人々と信頼関係を築く必要性も論じた。
「数十年間にわたって尽力してきたからと言って、それらの取組みを正当化することはできません。競馬産業が社会的に認証されなければ、私たちは競馬ビジネスを続けていくことができません」。
ウェザビーズ社の理事であるサイモン・クーパー(Simon Cooper)氏は、競走馬の生涯の全段階におけるトレーサビリティーの重要性、ウェザビーズ社のeパスポートが受胎から死までのトレーサビリティーの改善にどのように役立つかについて詳細を述べた。
IFARの独立アドバイザーであるアニマーク社(AniMark Ltd.)のCEOエリオット・フォーブス(Eliot Forbes)博士は、6つの戦略についての発表を行った。その中には、IFARのアフターケア・ツールキット(Aftercare Toolkit)、動物愛護運動が活発に行われている現状におけるアフターケア計画の重要性が含まれていた。
フォーブス氏は、「動物愛護運動家の希望に沿うほど努力する必要はありませんが、一般の人々の妥当な期待に応えるべきです」と語った。
アーバスノット氏はフォーラムを始めるにあたり、IFARの任務、そしてIFARが設立以来遂げてきた発展について紹介した。
これまで第1回~3回IFARは以下の国際会議と同時に開催された。
・ 2017年5月 パンアメリカン会議(Pan American Conference 米国・ワシントンDC)
・ 2018年5月ARC(韓国・ソウル)
・ 2019年5月欧州・地中海地域競馬連盟(EMHF ノルウェー・オスロ)
独立したフォーラムであるIFARは、競馬国間での地理的・産業的相違を認識し、世界中においてサラブレッドのアフターケアを強化するために設立された。IFARはIFHA(国際競馬統括機関連盟)と協力し、サラブレッドの福祉の重要性への意識を高め、競走馬の全生涯にわたるケアに関する教育の改善、他の馬スポーツにおける元競走馬の需要拡大に寄与している。以下のウェブサイトで、IFARについてより多くの情報を得ることができる。(internationalracehorseaftercare.com)
By IFAR Press Release
[bloodhorse.com 2020年2月20日「IFAR Highlights Global Progress in Thoroughbred Care」]