ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事は、新型コロナウイルスの封じ込め策として、3月26日(木)午前8時から必要不可欠な事業以外は休止するよう要請した。同州農務省は3月25日(水)、この要請による影響を明確にするために全馬関連施設に向けてガイドラインをまとめた。
生産牧場での種付作業が強制的に停止させられることはない。ただし州の獣医師であるボブ・スタウト(Bob Stout)博士の事務所は、牧場スタッフの感染リスクを最小限に抑えるための最良の実践方法(ベストプラクティス)の一覧を配布した。米国ジョッキークラブもこれと同じガイドラインを広く周知している。
しかし、全ての馬受託業務は"休止すべき業務"に入っており、牧場スタッフの活動は馬の世話だけに限られる。
農務省の声明にはこう記されている。「ある馬施設に自ら馬の世話を行う顧客がいる場合、その顧客は馬の世話のためだけにその施設に入ることを許可されます。今後、施設オーナーあるいはマネージャーは、顧客に対して馬の世話のために来る時間を割り当てて、スケジュールを管理しなければなりません。この措置により何時でも施設内にいる人数を最小限にできます。もしある顧客が全体的あるいは部分的な世話を必要とする馬を入厩させていて、その馬に必要な世話が厩舎スタッフによって適切に行われているのであれば、それらの顧客は施設訪問を断られます。さらに行き来する人数を最小限にするために、施設内のスタッフを減らすことが可能であれば、雇用主はそうすることを要求されます」。
ジョッキークラブは声明において、北米・中米・カリブ海地域の全てのサラブレッドの生産牧場は少なくとも、ケンタッキー州農務省が新型コロナウイルス感染リスクを抑制するために出したガイドラインに従うように促している。
ケンタッキー州中部の生産牧場の多くは、推奨される最良の実践方法の大半はすでに標準的な業務手順となっていると述べた。
ジャドモントファームのギャレット・オールーク(Garrett O'Rourke)場長はこう語った。「感染症に対処するときは、最初の陽性例が出るまではすべてが順調です。ひどい影響を受けるかどうかは、初期の対応にかかっています。私たちはこの数年間に、仔馬のロタウイルス性下痢症やクロストリジウム感染症の発生を経験しました。また、馬ヘルペスウイルスの問題にも取り組まなければなりませんでした。競馬場から戻ってきた馬に問題があれば、その馬を隔離しなければなりません。ここで働くスタッフは皆、隔離や防疫措置(バイオセキュリティ)についてとてもよく教育されています。それは私たちにとっての強味です。事務所のスタッフに説明することはできますが、実際に失敗を犯してその弊害を目にするまで、常に存在するウイルスの深刻さを実感することはないでしょう」。
オールーク場長によれば、ジャドモントファームは、新型コロナウイルスの脅威に対処するために、牧場スタッフ全員に対して接触した人を日々記録するように求める計画を実施している。そしていくつかのエリアを他のエリアから切り離しておくために、牧場全体の業務を区分している。
牧場外からの配達物はすべて一ヵ所に置かれ、牧場スタッフは配達物を扱う人々と関わらないようにする。
オールーク場長はこう語った。「現在馬の生産活動を続けていますが、状況がより深刻になれば、基本的には牧場を閉鎖します。そして放牧に出せる馬は放牧に出します。現役馬は調教し続けなければなりませんが、全体的な仕事量を減らすことはでき、スタッフ同士が以前ほど多く交流する必要がなくなります。うまくいくように願っています」。
ダーレー・アメリカの牧場事業担当部長であるマイケル・バナハン(Michael Banahan)氏は、ダーレーにおける最大の変化は繁殖牝馬の種付けに関する全ての文書を電子媒体で受け取っていることと、種付所に入れる人数を制限していることだと述べた。牧場外から繁殖牝馬を連れてきた人々は、交配中に駐車場あるいは馬運車の中にとどまらなければならない。
バナハン氏はこう語った。「実際のところ、全ての文書が電子媒体で作られることで、やりとりが迅速になっています。おかげで、交配前にどのような問題にも対処することができ、先手を打つことができます。これまで行ってきたことの大半は電子化されましたが、私たちがそれを会得すれば、多くの牧場がその方法を採用するようになるでしょう。前向きな一歩だと考えます」。
生産牧場からは、交配のために送られてくる繁殖牝馬の数が減少しているという報告はない。その数は、例年の予測と一致している。
バナハン氏は、"種付けを続ける"という今年最大の目標は、"誰もが同じ考えを持ち、ガイドラインに従って行動する"ということにかかっていると述べた。
ケンタッキー州農務省が出した生産事業に関するガイドラインには次のように記されている。
種付所での手順:牧場に来る馬運車と個人は毎日いくつかの馬施設を訪ねているので、種付所に入る人や馬をどのように管理するかについて、以下のような方法を採用することを勧告する。
- 交配を予約する繁殖牝馬の文書の提出は、電子媒体を通じて行われるのがベストである。取り扱われる書類が汚染している可能性があるとの報告は何度もなされている。
- 牧場外の人(馬運車運転手・繁殖牝馬を連れてきた者)が交配準備エリアと種付所に入らないようにする。これを徹底させるために、馬運車が到着して、繁殖牝馬が降ろされたら、種付所のスタッフに引き渡されるようにする。そのスタッフは種付所のハミを使い、繁殖牝馬を誘導する。馬運車運転手・繁殖牝馬を連れてきた者は、駐車場エリアなどにとどまり、ソーシャルディスタンスを保つ。
- 交配後、繁殖牝馬は馬運車の乗降エリアに戻り、繁殖牝馬を連れてきた者に渡されて馬運車に積み込まれる。繁殖牝馬を連れてきた者が交配に立ち会う必要がある場合、それは種付所の外から覗き込むかビデオ撮影することにより行われるべきである。
- ハミは、馬房へ返却する前、そして再び使用する前に洗う。繁殖牝馬を誘導した者は手を洗う(ジョッキークラブの補足:ウイルス性・細菌性因子の感染拡大を防ぐのに効果的だと認められている製品で殺菌するのが望ましく、可能であれば繁殖牝馬の誘導者が使い捨て手袋を使うことも推奨される)。
- 交配で使われる器具(レッグストラップ、首輪、ブーツなど)は再度使用する前に洗う(ジョッキークラブの補足:ウイルス性・細菌性因子の感染拡大を防ぐのに効果的だと認められている製品で殺菌するのが望ましく、可能であれば繁殖牝馬の誘導者が使い捨て手袋を使うことも推奨される)。
- さらに、日常活動における防疫措置を強化し続けることが、感染リスクを軽減するために重要である。
これらの実践方法を実行すること、そして共用エリアでの人の密集を避ける行動をとることは有益であり、種付けを継続するために不可欠となり得るだろう。
By Eric Mitchell and Frank Angst
[bloodhorse.com 2020年3月25日「Best Practices Helping Keep Breeding Sheds Open」]