10月19日のカリフォルニア州競馬委員会(CHRB)の薬物・安全・福祉委員会のテレビ会議は、管理馬の故障や予後不良事故に関して調教師にペナルティーを科すかどうかについての議論に具体的な決定をほとんど下さなかった。しかし、カリフォルニア・サラブレッド調教師会(CTT)の専務理事であるアラン・ボルチ氏が行った安全に関する提案は評判が良かった。
この委員会でボルチ氏が行って好評を博した提案の1つは、相互依存関係にある各競馬関係者が参加する事故防止タスクフォースの設立だった。同氏はCTTがこの取組みを主導するとともに、自らも参加するよう差配した。
ボルチ氏の提案と意見は、CTT理事会との2回の会合と100人以上の調教師免許保有者が出席した州全体のテレビ会議を経て出されたものである。それは、"非常に広範囲にわたる意見から抽出されたもの"を反映していた。
ボルチ氏は準備した声明の中でこう述べている。「カリフォルニア州の競馬場と統括機関が現在、専門家と関係者とともに最も深刻な事故の調査を行っていますので、あと足りないと思われるのはこれらの調査結果を体系化するための方法です。調査結果を総合的に評価し、そこで示された課題に対して明確な措置を講じなければなりません。それには、責任があると判断されるかもしれない調教師免許保有者に関して照会を行ったり、ペナルティーを科したりする可能性についてだけでなく、これはより重要なことですが、今後必要になると思われる条件・安全性・規制の改善に向けての勧告も含まれるのです」。
また、同氏はタスクフォースが次の役目を果たすことも勧告した。全国的な"事故馬データベース(Equine Injury Database)"の範囲・精度・詳細を直接的または間接的に検討すること。人工馬場・ダート馬場・芝馬場の安全性に関する正確な統計を特定して調教や競走に人工馬場を取り入れるかどうかを検討すること。競馬参加者のための最良の実践マニュアルを作成すること。規制プロセスに関わるすべての獣医師をCHRBにのみ報告義務のある州の職員にするように検討すること。
調教師へのペナルティーについての議論は、10月19日(火)のテレビ会議の前から注目の話題となっていた。そしてテレビ会議の参加者のあいだでは丁寧な議論が行われたが、CHRBの数々の会合の常連である反競馬勢力だけがいつもの不快感を示していた。
ボルチ氏も委員も、競馬場運営者・ホースマン・獣医師・CHRBが相互依存関係にあることを強調し、2019年前半に南カリフォルニアで馬の故障が急増して以降の馬の安全性の向上について主張した。
CHRBの議長であるグレッグ・フェラーロ博士は、会議の最初にこう語った。「予後不良事故率を半分に減らすことができましたが、残念なことにそれだけでは十分ではありません。競馬をめぐる健全な環境を築きあげ、私たちが永らえていこうというのであれば、それ以上のことをしなければなりません」。
同博士は、予後不良事故はどこでも誰にでも起こりうるものだと認めた。そして"圧倒的に"大多数の調教師が起こす予後不良事故は年間1回かゼロ回なのであると述べた。
「しかし一握りの、ほんの一握りの調教師が、毎年毎年、何度も予後不良事故を起こしているのです。そして、その一握りの人たちが競馬産業の福祉と健康を危険にさらしているのです。だからこそ、私たちが今朝出した質問は、それについてどう取り組むかということです。私たちは解決策を探しています」。
CHRBの専務理事であるスコット・チェイニー氏は冒頭の声明で、この夏に終了した2020-21年事業年度においてカリフォルニア州の統括下にある施設で72件の予後不良事故があったと述べた。予後不良事故を起こした調教師のうち14人を除くすべての調教師にとってそれは"1回かぎりの出来事"だった。12人の調教師がそれぞれ2件、1人の調教師が3件、もう1人の調教師が4件の予後不良事故を起こした。
チェイニー氏は、レース3万1,000回と調教7万3,000回を調査したところレースと調教のいずれにおいても筋骨格系に関連する予後不良事故は"きわめて稀"であるとしながらも、その数をさらに減らすことを目指している。
同氏は、「予防あるいは予測が可能な予後不良事故に対して調教師にペナルティーを科すようなルールを作成することは、適正手続き・執行・公平性の面で課題があり、そのすべてを克服するのは難しいかもしれません」と認めた。
このようなペナルティーを設ける可能性は低いと考え、委員やCHRBは、ボルチ氏のタスクフォースを設立するという提案を支持することに乗り気な様子で、そのほかの提案についても称賛を与えた。
CHRBの馬医学担当理事であるジェフ・ブレア博士は、タスクフォースに予後不良事故の原因を評価させ、予防措置を取る方法を検討させることを提案した。そしてそうした研究に学術的根拠の観点から敬意が払われることを支持するとし、カリフォルニア大学デイヴィス校の研究者たちが予後不良事故を減らすことを目指して開発したコンピュータ予測モデルについて言及した。
また、チェイニー氏は怪我に関する調査には教育的要素が重要であると繰り返し述べた。
「理事会がこのようなムチを用いたアプローチを行うのが適切でないと判断した場合には、おそらくアメを用いたアプローチが意味を持つでしょう」。
フェラーロ博士は締め括りとしてこう語った。「予後不良事故を起こした調教師にペナルティーを科すことについて話したことで、何人かの調教師に狭心症を発症させてしまったかもしれませんね。しかしこのような議論とCTTからの回答は、まさに私が求めていたものです。私たちが問題を抱えていることを皆様は理解しています。それに対処する必要があります。そして、関係者全員が一丸となって取り組む必要があることにも賛成です」。
「今回の会議から、ボルチ氏と数人の関係者と協力してこのタスクフォースを立ち上げ、違いをもたらすために本格的に取り組むことを期待しています」。
By Byron King