早ければ2025年3月から中国本土で年4回の競馬開催が実施される可能性がある。香港ジョッキークラブ(HKJC)は、この長期的な目標を実現するために40億香港ドル(約560億円)の投資戦略を発表した。
HKJCは5月15日、広州市政府との間で、香港の北約200kmに位置する従化競馬場に観客8,500人を収容できる新しいグランドスタンドを建設し、設備をアップグレードすることに合意した。
ギャンブルを違法とする中国本土での競馬の発展にHKJCが期待を寄せる中、2025年3月~4月頃から、まずは1シーズンに4回の競馬開催を実施する予定である。
HKJCは従化競馬場(2018年にオープン)の建設のために37億香港ドル(約518億円)を投じた。そして昨年10月、中国政府が本土での競馬振興を目的とした『全国馬産業発展計画(2020-2025)』を発表したことで、さらなる投資が行われることになった。
また国際的な検疫施設も建設予定であり、世界で最も強力な競馬管轄区の1つである香港が、独自の生産界を立ち上げるという長期的な可能性が高まっている。
HKJCのCEOウィンフリード・エンゲルブレヒト-ブレスケス氏はサウスチャイナモーニングポスト紙に対してこう語った。「これはグレーターベイエリア開発の一環です。政策の承認は得られていますし、この戦略的開発が問題に直面した場合には、政府間の対話が確実に行われる担保を有しています。それが、これほど大きな投資を行い将来の戦略を立てる自信につながっています」。
「グランドスタンドと追加的な厩舎の建設には、第一段階で40億香港ドル(約560億円)程度の費用がかかるでしょう。従化競馬場はシャティン競馬場とは異なりますので、私たちが建設を望むのは、8,000人~8,500人程度の観客が収容できるグランドスタンドです」。
「最初のシーズンに4開催から始め、その後は8開催あるいはそれ以上に増やす可能性もあります。しかし徐々に発展させていく予定であり、馬の頭数をどのように増やしていくか、またその他の開発の進捗状況にも合わせる必要があります」。
「これは長期的な戦略的位置づけであり、HKJC理事会も私も非常に楽しみにしています」。
従化競馬場は2019年3月にエキシビション開催(全5レース)を実施し、3,000人のファンが詰めかけたが、馬券発売はなく、レース映像は15分遅れで香港に配信された。しかし、香港の社会不安と新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、同競馬場での2回目の開催は延期されている。
ギャンブルは依然として議論を巻き起こす問題である。ブレスケス氏は将来的には香港のファンが従化で実施される競馬開催の馬券を買えるようになる可能性はあるものの、最初は実現しないだろうと付け足した。
「ギャンブルの問題はまったく異なる状況です。将来的には、ドバイのようにサイマルキャスト(同時放映)になるかもしれず、それは1つの選択肢ですが、我々が推測できることではありません」。
「まず世界に通用するスポーツであること、極めて誠実に運営されるということ、そして地域に価値を生み出すということを証明しなければなりません。5年後、10年後、20年後に何が起こるかは、誰にも予測できません」。
「HKJCにとって、香港で行っていることを補完するレジャー及びエンターテインメント、そして高度なスポーツを実施することが明確な焦点です。それにより、スポーツの質を向上させることができ、それが主なビジネスの正当性となるのです」。
「ギャンブルということになれば、広州や広東との間でさらにいっそう活発な議論が必要になると思います。そのことは誰にも予測できませんし、何かをする時の前提にはなりえません」。
ブレスケス氏は、中国本土への投資が香港への投資を犠牲にするものではないと付言した。「これは香港を見捨てるということではありません。香港を補完するものであり、競争ではありません。HKJCは香港への大規模な投資を続けます。それが香港競馬に長期的な持続性と繁栄をもたらすと楽観的に考えています」。
By Stuart Riley
(1香港ドル=約14円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2019 年No.12「香港ジョッキークラブ、中国本土の従化競馬場で正式なレースを開催(香港)」、海外競馬情報 2020年No.12「全国馬産業発展計画、競馬を大きく後押し(中国)」
[Racing Post 2021年5月16日「Hong Kong Jockey Club unveils major investment to stage meetings in China」]