BHA(英国競馬統括機構)のアナマリー・フェルプス会長は5月末でBHA理事会の現在の地位から退く。同会長は3月8日(火)、事実上競馬界をコントロールし議論の的となっている「三者からなる意思決定委員会」について、ガバナンス変更の一環として見直されることになると明らかにした。
昨年秋、この「三者からなる意思決定委員会」のほかの構成員である競馬場と騎手に対し、より影響力のある地位を付与する大々的な計画が明らかにされていたが、BHAは統括機関および規制当局としての役割を維持することになるようだ。その一方で、BHA理事会は競馬界の成長戦略を主導することにより権限の拡大を図っている。
現在BHAの独立した非執行理事であるジョー・ソーマレズ・スミス氏は、今年6月から来年9月の任期満了まで会長の地位に就く。同氏はいくつかある基本的な統治原則についての合意は、"競馬界にとってその後を決定づける瞬間になり得るものだ"と表現した。
ソーマレズ・スミス氏は、賦課金改革とBHAの近代化に焦点を当てることになりそうだ。同氏は2020年に発足した賦課金改革の検討に専念する運営グループの議長を務めている。
フェルプス会長はこう語った。「BHAの統括機関および規制当局としての役割を明瞭にするため新しい統治構造について議論しており、私たちは現在重要な局面にあります」。
「退任に先立ち、BHAの支援者の皆さんとともに次の基本的な原則を策定できたことを光栄に思います。まずBHA理事会が規制および統括に関する責任を保持し、さらには支援者の利益になるように競馬界の成長戦略を主導する責任を担っていることを認識することです」。
「ガバナンスの最善の実践方法(ベストプラクティス)に沿って、現在と同じレベルの独立した代表性を維持することになります。それと並行して、三者からなる意思決定委員会の構造を見直すことに合意しました」。
「後任者のためにこれらの措置が完全かつ確実に実施されるようにするため、退任に先立ち今後3ヵ月間でやるべきことはたくさんあります。将来に向けて、より適切で民主的で効果的な意思決定体制がもたらせることを期待しています」。
ボート競技のオリンピック選手だったフェルプス氏はブリティッシュ・ローイング(British Rowing)の会長を5年間務めて2018年に退任した。2017年には英国五輪委員会副会長にも選出されていた。そして2019年4月にBHA会長に任命され、スポーツ規制の分野での豊富な経験を携えて着任した。
ボート界に貢献したことから2016年にCBE(大英帝国勲位)を受勲したフェルプス氏は、BHAが前身のBHB(英国競馬公社)から移行して以来4人目の会長となった。これまでポール・ロイ氏、スティーヴ・ハーマン氏、そして暫定的にアソル・ダンカン氏がこの役職を務めていた。
フェルプス氏ははこう語った。「BHA理事会と話し合った結果、現在のBHA会長としての任期を更新しないことを決めました」。
「競馬界にとってとても重要な時期です。パンデミックから回復しつつあり、政府による賭事法見直しの報告書の発行が間近に迫っており、それは競馬界の主要議題に予定されています。またBHAの重要な見直しも進行中であり、それによりBHAが時代に左右されず有効であることを保証し、競馬界のニーズに応える十分な財源を確保することを目指すものです」。
「スポーツ部門が試練に見舞われているこの時期にBHAを率いることができ、またジュリー・ハリントン氏という素晴らしいCEOを迎えることができたのは大変光栄なことでした。この期間に競馬界が一丸となって達成したことを、たいへん誇りに思っています」。
「素晴らしいBHAのチームに感謝したいと思います。彼らはパンデミックを乗り切り、レースを継続させるために水面下で努力を続けてきました。なかなか顧みられることのない役割です。2020年の最初のロックダウン後に主要スポーツの中で英国競馬が一番早く再開して以来、感染拡大のためにレースが中止になることは一切ありませんでした。驚くべき功績です」。
「また、深刻で複雑な倫理的問題や公正確保の問題にもうまく対処し、これは将来的に重要な先例となるでしょう。競馬界全体の多様性と包容性を高めるための基礎を築き、業界の教育資源とセーフガード措置を強化し、競走馬と競馬に従事する人々の福祉により焦点を当てました。これらはすべて、競馬の持続的な健全性と繁栄にとって不可欠なものです」。
「この3年間に私を歓迎して支えてくださったすべての方々、とりわけその見識・情熱・意見を注いでいただいた競馬場・調教師・馬主・騎手・厩舎スタッフ・生産者の皆様には国内外を問わず感謝したいと思います。人々、競馬、そして何よりも馬を愛しています」。
英国競馬界の賭事戦略グループの議長を務めるソーマレズ・スミス氏は、2014年にBHA理事会に加わった。ゲーム産業への経営コンサルタント会社であるスポーツゲーミング社(Sports Gaming Limited 本社:ロンドン)のCEOであり、賭事業者や宝くじ業者への技術供給業者であるビードゲーミング社(Bede Gaming)の会長でもある。
2013年7月~2018年11月にBHA会長を務めたハーマン氏はこの人事を歓迎した。「ジョーはBHA理事会に加わり、採用された中で最高の理事の1人になりました。各界で尊敬を集めており、バランス感覚があり、行動的で、真の実行家です。彼とはとても仕事がしやすく、賦課金改革を次の段階に到達させて軌道に乗せ、重要な対外関係を構築できる理想的なリーダーです」。
「競馬界への出資者がほかの分野に行くという選択肢をもつこの困難な時期において、ジョーが会長に任命されたのはきわめて重要なことです」。
By Jack Haynes
[Racing Post 2022年3月8日「Annamarie Phelps to step down as BHA chair at the end of May」]